乳がんの手術を受け、先週退院しました。24年前に同居していた伯母を膀胱がんで、14年前にたった一人の家族だった母を卵巣がんで見送っていたので、頭の血がスーっと引いていくようでした。母は最期の1カ月をホスピスで過ごしました。担当の先生が「あなたの命はあと少しかも知れません。その残りの時間を娘さんと一緒に有意義に過ごせるよう、私たちがお手伝いします」と言ってくださり、どうしても告知できなかった重い心が一気に弾けて、母の前で初めて大泣きしました。あるとき先生は、母がいなくなった後の私の生活について聞かれ「今は、あなたの今後が一番心配です」と・・・。母の病状を心配してくれる方はたくさんいましたが、私には「若いのに偉いわね。親孝行してね」と褒めてくださるばかり。私の心のケアなど考えてくださる方は、それまで一人もいませんでした。母は笑顔で眠りにつきました。ホスピスでなかったら、私は母の死をどう受け止めて、同生活を立て直していけたか想像もできません。ホスピスは患者と家族のためにあると思います。(西日本新聞)