JR行橋駅近くの「ひと息の村」は、1階には訪問看護ステーションやヘルパーステーションなどが入り、11部屋あるアパートは2階。住民は300mほど離れた診療所から矢津医師(51)に診てもらうことができる。体と心の痛みを取り除くホスピス医療。法律は、男性の2人に1人、女性の3人に1人が患うとされるがんと、エイズ(後天性免疫不全症候群)の患者のみを対象にしている。だが矢津医師は、残りの人にも目を向ける。「その人その人なりの意思を尊重し、ケアをする。それがホスピスです」。死を看取るだけでなく、できる限りの延命治療を望む人には、その希望をかなえる助けをする。尊厳ある死やホスピス医療は、実は家族を支援することでもある。「自宅のように過ごさせたい、と言っても病院では限界がある。一方、看護師がいつも近くにいる病院から、いきなり連れて帰るのは不安。自宅に近い環境で、医療のサポートも受けられる。その両方のニーズを満たせる場所に」。在宅医療に力を入れてきた矢津医師は、ひと息の村を作った理由をこう話す。(西日本新聞)