薬物療法の課題
がんの薬物療法を専門に行う医師は「腫瘍内科医」と呼ばれます。2007年に施行された「がん対策基本法」に基づき、全国各地に設けられた「がん診療連携拠点病院」では、手術・放射線・薬物療法の専門医が協力する「集学的治療」の実施が指定条件となっているほか、腫瘍内科医の配置も義務付けられています。日本臨床腫瘍学会が認定する「がん薬物療法専門医」は全国でわずか200人あまり。「これまで日本のがん治療は、外科医を中心に臓器ごとの縦割りでおこなわれてきたため、薬物療法の専門医がとても少ないのです」と渡辺さん。がん患者・家族には「海外でかなり前に承認されている新薬が日本では使えない」との不満もあるようです。承認までのこうした時間差を「ドラッグ(薬)・ラグ(遅れ)」といいます。新薬が承認されるまでには、臨床試験で安全性と有効性を確かめる「治験」や専門機関の「審査」を経なければなりません。医療産業政策研究所が2007年、製薬会社を対象に実施したアンケートによると、様々な種類の薬剤について、日本では治験着手までの遅れを含め、承認まで欧米より約4年程度の遅れが認められています。
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