ある日の会合。「Aさんは『きのうまで自分でトイレに行けたのに、両足が動かなくなった』と冷静に話していました。付き添っている奥さんのほうが、不安が強くて、心配です」 「奥さんの話を聞いてみましょう」。精神腫瘍科の大西教授が提案した。報告後、全員で病棟を回診し、患者に会った。チーム員は、なるべく毎日、病棟を回り、患者や家族と顔を合わせる。報告内容と、実際の状態が違う場合もあるからだ。センターは2007年に開かれ、「地域がん診療連携拠点病院」に指定されている。悩みを抱える患者がいた場合、主治医がチームに支援を依頼する仕組になっている。依頼を受けると、チームの看護師が、患者の担当看護師や主治医から情報を集め、可能なら患者を訪ねて話しを聞く。内容に応じて緩和医療科の医師が必要な薬をカルテに書き、主治医がそれに基づいて処方する。うつや不眠には精神腫瘍科の医師が対応する。がんの病棟は約300床あるが、依頼は年間40~70件。緩和医療科の奈良林教授は「主治医が緩和ケアの必要性を理解し、チームに依頼してくれなければ、患者の苦しみがそのままになってしまいかねない」と指摘する。(朝日新聞)