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乳がんをみてみよう・・・ミクロの世界

私たち病理医は、顕微鏡でみるミクロの世界の中でがんの診断をしています。がん細胞は1個が約20ミクロンです。1ミリが1000ミクロンですから、1センチの塊の中の1個のがん細胞は人間1人が東京ドームの中にポツンと立っているようなものです。その小ささがお分かりいただけると思います。乳がんの病理診断の中で重要なことは、「浸潤がん」と「非浸潤がん」の見分けです。乳がんは主に乳汁を運ぶ乳管の中に発生し、そのがん細胞が長い時間をかけて乳管を破り、乳管の周りにある血管やリンパ管に入りこむことで命を脅かすようながんになっていきます。この乳管が破られた状態を「浸潤がん」、またまだ早期で乳管内にとどまっているものを「非浸潤がん」と呼んでいます。理論的には非浸潤がんであれば遠隔転移の可能性がないので、この二つを見極めることが治療方針に大きく影響してくるのです。病理診断のもう一つの重要なポイントは、針生検、細胞診などと呼ばれる検査です。これはがんの疑われる部位から細胞をとってきて行われますが、私たち病理医はこの乳房の中にある病変が良性か悪性かについても診断しています。ここで診断を間違えると患者さんの生活は天と地ほどにひっくり返ってしまいます。わずか数ミリの検体から良悪性を見極める病理医の役割は重い、といつも肝に銘じています。(朝日新聞)

 

Aug 07, 2009 10:53
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