矢形:本当は僕らも聞いた方が患者さんとコミュニケーションが取れるし、信頼感が生まれるのだけど、一方で、1人に30分~1時間と、時間をとってしまうと外来が翌日まで続きかねない。だから僕らとのやりとりは味気ないものになりがちですよね。 アグネス:がんって終わらないじゃないですか。胸の大きさも肩の大きさも変わってくる。手術前の状態には戻れない。小さなことなんだけど、元の自分に未練を持っていると落ち込んでしまいます。それを割り切って、どう新しい自分をベストな状態に持っていけるかが大事になってくる。私も元気に見えるように化粧方法や運動方法を変えた。声も低くなった。でも命があるのだから、それ以外は小さな問題だと感じています。助けてもらって生きていることがすべてで、一番大事なこと。私も仕事を続けて家族がいて、食べたいものを食べることができる。 矢形:そう言ってくれると、多くの人が勇気を持ってくれると思います。患者さんをみていて思うのは、がんで変わってしまった自分の体は変えられないということ。治療を受けて新しい自分を見つけて、そこからまた再スタートを切ればいいんだと考えてもらうのが大事なんだと思います。