◆肝がん、移植の垣根低く
「移植を受けたことで、それまで沈みがちだった気持ちも前向きになった」 2年前に生体肝移植を受けた滋賀県の女性(60)はこう話し、11月に迫った娘(31)の出産を楽しみにしている。女性は2007年8月、京都大学病院で娘から肝臓の提供を受けた。2003年にC型肝炎と分かり肝硬変が悪化、肝がんにもなり、医師から「移植のほかに助かる道はない」と言われた。何も考えられない自分に代わって、娘が提供を申し出た。「お母さんにはまだやることが残っているでしょ」 いま肝がんの再発はない。C型肝炎ウイルスも消えた。ただ、最初は、迷いもあった。「自分の条件が、基準から外れていたので、大丈夫なのか不安はあった」という。肝がんに対して生体移植をするかどうかは「ミラノ基準」と呼ばれる世界基準をもとにする。基準では「がんは5センチ以下が1つ、あるいは3センチ以下が3個以内」という状態でなければ移植できない。ところが女性のがんは、大きさが4.9センチと1.2センチの2つで、基準外だった。幸い移植経験の豊富な京都大が、ミラノ基準から外れた患者も移植の対象にしようと、独自基準(京都基準)をつくった年だった。主治医の説明に納得して手術を受けたという。(朝日新聞)
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