子宮頸がんが見つかり、子宮をはじめ広範囲に切除する広汎子宮全摘手術を受けたのは38歳のときだ。テレビ局に勤める夫と結婚して七年。病気を経験し、より一層、2人で差さえあっていこうと思った。だから手術後も、「いつまでも女でいたい」「可愛くいたい」と、努力を重ねてきた。そんな気持ちを夫は理解し、向き合ってくれていると信じていた。でも、そう甘くはなかった。いつの間にか自分は、性の対象として見られなくなっていることに気付いた。「夫婦の形がよじれてしまったのは、病気のせいなのか、もともとの夫婦関係が原因なのか。考えてしまいます」3年前に出版した「子宮会議」(小学館)では、排尿障害の後遺症や夫婦関係など、普通の女優ならためらう内容も、包み隠さずにつづった。がんと分かったとき、知りたいと思っても本やネットでは得られなかった情報だ。「体の回復とともに気持ちも回復する。そこで初めてセクシュアリティーの問題にぶつかるんです」。手術後、夫婦関係は一度もない。でも自分は持ちたい。その溝をどうしたら埋められるのか。悩む日が続く。「子宮頸がんは、パートナーも一緒に背負わなければならない病気。私たちは、まだまだ向き合ってなかったのかも知れませんね。『がん』という長っちりの不意の来客と」。(朝日新聞)