がん治療は性生活や生殖機能に大きく影響する。これまで治療が優先され、治療後の性の問題まで語られることは少なかった。しかし子宮頸がんや乳がんなどで若いがん患者が増えるにつれ、患者同士で体験を分かち合うようになってきた。医療者側からも、情報を提供する動きが出てきた。静岡県熱海市に住む河村裕美さん(43)は32歳のとき、子宮頸がんが見つかった。結婚から1週間後。披露宴を2カ月後に控えていた。がんは早期だったが、「広汎子宮全摘出術」を受けなければならなかった。子宮だけでなく、女性ホルモンをつかさどる卵巣、それに膣も数センチ切除し、短くなった。主治医が膣の絵を描きながら、術後の性生活の変化について説明したが、実感できなかった。しばらくは排尿障害のほか、卵巣切除の影響で、更年期障害のようなほてりやイライラ感に悩まされた。性生活について考えられるようになったのは、半年ほど経ってから。でも、しようとしても怖くてできなかった。「膣の先端は糸で結ぶ」と医師から説明を受けていた。でも挿入されると縫合した部分が破れるのではないかと、恐怖感が先に立ってしまった。医師にも相談できず、一人で悩む日が続いていた。2002年、東京の患者会に出席したのをきっかけに、自らも患者会「オレンジティ」(http:o-tea.org)を立ち上げた。そこで初めて経験者の話を聞き、「破れないんだ」と安心できた。夫の一史さん(39)は「できるだけ彼女の希望に添うように、と受け止めてきた。でも患者会で彼女の態度も変わった気がする」と話す。続く・・・・。(朝日新聞)