「水戸黄門」「部長刑事」「銭型平次」などに出演し、名脇役として知られる俳優の入川保則さん(71)が、直腸がんのため余命半年を宣告されていることを明らかにした。抗がん剤による治療は拒否、残された時間で映画を1本作りたいという。「寿命ですから、喜んではいませんが、悲しんでもいません。冷静に受け止めています」。8日に都内であった記者会見。冗談も交えながら、しかし淡々と心境を語った。がんが見つかったのは沖縄での舞台公演中の昨年7月。ヘルニアで倒れ、病院で検査をしたところ、直腸がんがわかり、8月に摘出した。転移の可能性はあったが、4カ月続く舞台公演を優先。公演を終えて今年1月の再検査で、転移がわかった。「ふつうの方で、6カ月くらいで逝かれると言われました」。抗がん剤治療なども勧められたが、立ったり歩いたりできなくなり、芝居は無理かも知れない。「どっちにするか聞かれ、そのまま芝居をやらせてほしいから、一切の治療をお断りした。短くて元気な方をお願いしますと」。いまのところ、痛みはない。朝起きたらおなかがすいているし、夜になれば一杯飲みたい。「だいたい8月いっぱい」とされる余命の中で、まだ体の動く間に、以前から企画があった映画を1本作りたいという。「いままで関わりのあった俳優さんたちに一シーンでも出ていただいたらうれしい。思い出の作品になれば」。すでに沖縄に緩和ケア病棟のある病院を見つけていて、葬儀屋の手配も済ませた。人生にはいつかは死が訪れる。何年も前からそう考えてきたという。「死をはっきり納得し、自然体でいれば、そんなにあたふたして、怖がることはない。これがおれだったんだなと思えるはず。老醜をさらさないで去っていけるのを嬉しく思っています」。