2種類の遺伝子が途中でちぎれ、入れ替わってつながる「融合遺伝子」。中には、がんの原因となるものがある。細胞や組織を見てがんを診断する病理医としての腕を生かし、次々に新たな融合遺伝子を発見。国内外の研究をリードする。きっかけは、自治医大の間野博行教授が2007年に肺がんで発見した「EML4-ALK」という融合遺伝子だった。症例提供をきっかけに、本格的な探索が始まる。ALK遺伝子の働きを阻害する薬は従来の抗がん剤に比べ効果が高く、発見から5年で日本でも使えるようになった。この分野は、研究者間の激しい競争が続く。昨年2月、英科学誌ネイチャーの姉妹誌に別の肺がん融合遺伝子を発表した際は、国立がん研究センターや米国の研究チームと同着だった。これまでに発見した遺伝子は乳がんや腎臓がんなど16種類に上る。ユニークなのは、その見つけ方だ。普通は次世代シーケンサーと呼ばれる装置で、遺伝子を網羅的に解析する。いわば機械任せだが、竹内さんは病理医としての「目」を生かす。遺伝子の両端に蛍光色で目印をつけた検体を片っ端から顕微鏡でのぞき、ちぎれている遺伝子に注目。特徴を明らかにしていく。198個の検体が載ったプレパラートも、20分もあれば、選別できるという。がん研究所 分子標的病理プロジェクトリーダー 竹内賢吾さん(43) (5月13日 朝日新聞)