シャワーを浴びているとき、保育士の女性(39)が直径1センチもないしこりに気づいたのは、2010年2月のことだった。右の鎖骨のあたりで、手に触れた小さなかたまり。それが始まりだった。当時、2008年に生まれた長男(6)は1歳6カ月。5月から仕事に復帰する予定だった。数日後に近所の皮膚科で診てもらうと、「心配するほどのことではないでしょう」と言われた。しこりのことを忘れかけていた7月、風邪で近所の内科に行ったついでに話を持ち出してみた。医師は、念にために大きな病院に行くことを勧めた。8月6日、紹介状を持って横浜南共済病院(横浜市)を訪ねた。血液内科や呼吸器内科などで診察を受け、検査をした。鎖骨や気管支のリンパ節がはれていることがわかった。朝一番から病院じゅうをぐるぐる回り、精算を済ませたのは患者のなかで最後。外は薄暗い夕方になっていた。(3月3日 朝日新聞 患者を生きる 肺がん より)