肺がんになり、クリゾチニブを使った治療を経て、新薬「LDK378」の治験に参加している保育士の女性(39)の悪性腫瘍は、大きくならず抑えられている。体のほかの部分への転移もない。体調はいい。でも、1カ月に1度、病院に定期検査に行く日はやはり緊張する。「検査結果を聞きに診察室に入る直前には、いつもバッグに入れてあるお守りをぎゅっと握って、大丈夫、大丈夫、と唱えてから入るんです」。病気になり、性格は変った。以前はささいなことに悩み、なかなか物事を決められなかった。しかし、いまはどんどん決断する。「いま、体調がよくても、いつ何時、入院生活になるかわからず、不安に思うこともあります。でも、できるだけ悩まず、よいイメージを持ちながら、元気なうちは育児も仕事もがんばりたい。食べたい物や、買いたいもの、やりたいことはたくさんあります」。そんな言葉を聞きながら、夫(39)は「コートも毎年買い換えるんですよ。でも、彼女に元気なうちに、と言われると、私は何も言えません」と笑う。(3月7日 朝日新聞 患者を生きる 肺がんより)