2011年11月、胃がんが胸に転移して再発した埼玉県の男性(68)は、県内の病院で、製薬会社が新薬の承認を目指して行う「治験」に参加することになった。胃がんの再発では、有効性が科学的に裏付けられた「標準治療」は、抗がん剤を3段階に分けて順に使う。男性は1段階目の抗がん剤の効果がみられなくなり、2段階目に入るところでいったん標準治療から離れ、治験に参加した。新薬を使えたかどうかは分からない。1年近く経って効果がみられなくなり、再び標準治療へと戻った。2012年10月、3段階目のイリノテカンという点滴の抗がん剤を使い始めた。しかし、2013年夏には、がんが抑えられなくなった。標準治療で使える薬は、なくなった。(3月19日 朝日新聞 患者を生きる 胃がん より)