新たな治験に参加するため、埼玉県の男性(68)は2013年秋、県内の病院から国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)に転院した。男性の胃がんは、腹部のリンパ節と胸の縦隔のリンパ節に再発していた。主治医の消化管内科医、設楽紘平さん(37)は、複数ある胃がんの治験から、男性の条件に合うものを選んだ。最初の治験には9月から参加した。12月、腫瘍の大きさは半分に縮小した。ただ、途中で両手の平にこぶのようなものが複数できた。副作用と考えられた。副作用が出ても、程度なんどによっては治験を続ける場合がある。しかし、男性は全身状態が良く、ほかの薬を使う治験に移る選択肢もあった。設楽さんと相談の上、2014年3月にこの治験による治療を中止した。4月から別の治験に参加した。10月に腫瘍が大きくなるまで半年間、続けた。治験期間中、男性は一時退院すると、妻(66)や友人を伴って、大好きな山登りや旅に出かけた。北海道の流氷。「日本百名城」を巡る関西や四国、中国への旅。北アルプスの山にも登った。(3月20日 朝日新聞 患者を生きる 胃がん より)