子宮筋腫と子宮頸がんが相次いで見つかった森昌子さん(56)は、2010年5月、子宮を摘出する手術を受けた。医師に勧められてから、1年近く迷った末の決断だった。本来は1時間余りの手術だが、4時間かかった。森さんの場合、子宮が腸などの臓器と癒着していた。そこをはがす必要があった。手術後、病室に戻ったが、麻酔が切れた後に下腹部が強く痛み始めた。下腹部の左側が大きく膨らんでいた。看護師に告げると、再び手術室に運ばれた。腸から出血が見つかった。子宮に癒着していた部分だった。一度縫った所から管を入れ、血を外へ出し、止血の処置をした。手術から数日後、森さんはさっそくリハビリテーションを始めた。点滴バッグをつり下げながら、背筋を伸ばし、寝間着姿で病院の廊下を歩き回る。同じようにリハビリに取り組む女性患者たちから、すれ違うたびに、「森さん?」と驚かれた。「頑張りましょうね」。互いに声を掛け合った。森さんは手術から10日後、東京都内で記者会見を開き、子宮摘出を公表した。「心身ともに健康になれた。これからはファンの前で笑顔でいられる」。当初は手術の公表に不安もあったが、会見では治療の経緯を詳しく話した。反響は大きかった。たくさんの手紙が森さん宛てに届いた。多くが女性からだった。子宮の摘出を迷い続けている人がいる一方、会見を聞いて子宮の摘出に決心がついたと、つづってきた人もいた。「怖がらないで大丈夫、と発表したことで、同じ病気で悩む女性たちが決断をするきっかけになれたのは、うれしいです」。手術後、更年期障害の症状が消え、うつ状態からも開放された。末っ子の三男が昨年成人して独立、子育てにも区切りがついた。今月15日、NHKラジオの歌謡番組。森さんはロック調の新曲「惚れさせ上手」をエネルギッシュに歌い上げた。歌手デビューから通算60曲目のシングル曲だ。この曲とともに森さんはいま、コンサートなどで全国を飛び回っている。「病気を経て毎日がいとおしくなった。大事に生きなきゃ、バチが当たっちゃいますね」と笑う。(4月23日 朝日新聞 患者を生きる 森昌子の復帰より)