2012年6月、メラノーマ(悪性黒色腫)の摘出手術を受けたグラフィックデザイナーの徳永寛子さん(33)は、取ったリンパ節を詳しく調べた結果、転移が見つかった。7月、2度目の手術を受け、左わきのリンパ節とリンパ管を摘出した。手術後、再発予防のため、毎月1回、インターフェロンを注射することになった。転移がわかった時、徳永さんは、メラノーマの患者が集まるソーシャルメディアのグループで、「リンパに転移が見つかりました」と書き込んだ。「ショックだよね」「私も転移があったよ。がんばろう!」仲間から次々と反応があった。何げない一言でも、同じ病気を持つ仲間の言葉は力になった。入院した国立がん研究センター中央病院では、同室になった肺がんの女性のもとに、同じがん患者の仲間が見舞いに来ていた。「お互いを『がん友』と呼んで仲良く話す姿に、メラノーマも患者同士が、同じ悩みを話せる会を作りたいという気持がふくらんだ」。2013年、徳永さんはネットに「患者会を設立しようと思いますが、どう思いますか」と書き込んだ。すると、東京都内に住む堀江泰さん(35)から「僕も作りたいと思っていました」と返事がきた。堀江さんはメラノーマで親友を亡くした経験があった。主治医の山崎直也さん(55)も「応援するよ」と後押しした。メラノーマの正しい情報を広め、新薬の承認の請願をする上で、患者会の役割は大きいと考えたからだ。その年の8月、メラノーマの患者会「Over The Rainbow」(http://melanoma-net.org)が誕生。徳永さんは代表となった。海外では皮膚がんは黒いリボン、メラノーマは白黒模様のリボンがトレードマークだ。「白黒なんて縁起が悪い。明るい色をたくさん入れよう」。徳永さんは虹色のロゴを自らデザインした。会員数は約50人を数え、お茶会などを開いて集まるようになった。「がんは人生の中で土砂降りの雨のようなできごと。でも雨上がりの空にかかる虹のように、『私は元気です』と明るく、前へ進んでいきたい」。(7月17日 朝日新聞 患者を生きる メラノーマより)