乳がんは女性が最もかかりやすいがんで、12人に1人が診断される。ただ、早期に発見すれば、生存率は比較的高い。連載で紹介した東京都の女性(61)のように、手術後のホルモン療法などを長期間続ける人も多い。こうした人の生活を支える取り組みとして、運動が注目されている。日本乳癌学界によると、一定の運動をした人は、ほとんど運動しない人に比べて、乳がんの再発リスクが約25%、乳がんによる死亡リスクが約35%低かったという報告がある。学会は、不安や抑うつなどの軽減にも効果的として、「少し汗ばむ程度の歩行や軽いジョギングなどを週1回以上、無理のない範囲で行うとよい」と勧める。さらに、診断時の肥満が乳がんの再発リスクを高めることも報告されている。乳がんが多い40代以降は年齢的にも代謝が落ちるため、ホルモン療法中に体重が増えることに悩む人も多いという。聖路加国際病院(東京都中央区)は昨年度、乳がんの手術後にホルモン療法を続ける人向けの減量プログラム「シェイプアップリング」を開催した。国立がん研究センターの研究事業の一環で、30~60代の32人が参加した。8人ずつ週1回、管理栄養士による栄養指導や、ダンス・筋力トレーニングなどの運動指導を受けた。自他でもDVDを見ながら運動をし、体重をグラフ化してもらった。参加者同士が交流しながら、個人やグループの減量目標を設定することで、モチベーションの維持も図れる。1カ月のプログラム終了後、平均で約1キロ減量できた。参加者からは「運動習慣がついた」「考え方が前向きになった」などの声が聞かれたという。プログラムで運動を指導した「キャンサーフィットネス(東京都港区、http://cancerfitness.jp/)の広瀬真奈美さん(52)は米国のがん患者向けリハビリエクササイズのインストラクター。がん体験者対象の運動教室を開いている。広瀬さんは「体を動かすことで気持も前向きになり、笑顔を取り戻す人が多い。ウオーキングや階段の上り下りなど、できることから始めてみてください」と話す。(7月25日 朝日新聞 患者を生きる 乳房の切除 情報編より)