●忘れぬ医師の手の温かさ 8年前、子宮体がんで子宮と卵巣を摘出しました。いつも生理2日目には出血が多く、仕事になりませんでした。地元の産婦人科では「子宮筋腫」と言われ、信じていました。しかし、あまりに状態がおかしいと感じ、別の病院で検査をしてもらうと、子宮体がんとわかりました。医師からは「こんなに早期に見つかるのは珍しい」と言われましたが、「今後のためには子宮と卵巣は摘出したほうがよい」と勧められました。約5時間の手術は成功しました。ただ、わずかに筋肉までがん細胞が達していたため、いつ再発するのか不安でした。医師は「順調ですよ。これからは自分自身でがんばってください」と、私の手を握ってくれました。あの手の温かさは一生忘れません。これからも定期的なCT検査は続くと思いますが、何事もなく順調です。いろんな人のおかげで今日があり、生かされている。そう感謝する毎日です。(福井県 松下笑佳 47歳) ●想像越す抗がん剤のつらさ 今春、突然の腹痛で救急搬送され、卵巣がんとわかりました。両卵巣、卵管、子宮などを摘出しました。手術後、卵巣を調べると、明細胞がんの1A期でした。医師から抗がん剤治療が6回必要と言われました。しかし、1回打った抗がん剤のつらさは想像を絶し、中止しました。全身の痛さやしびれで、生活の質が低下しました。食欲はなく、家に閉じこもりがちになり、前向きに生きる気力もなくなりました。医師は「ガイドラインでそうなっているから、抗がん剤は必要」と説明するだけでした。がんの再発を防ぐ方法は抗がん剤しかないのでしょうか。再発防止のためなら、副作用による生活の質の低下は仕方ないのでしょうか。多くのがん患者からお話を聞きましたが、みな抗がん剤で生活の質が低下することを語っておられ、疑問を感じています。抗がん剤以外のホルモン療法や漢方薬などの研究をもっと進めてもらいたいと思います。大阪府 女性 54歳。(8月12日 朝日新聞 患者を生きる 読者編より)