がんと闘う患者、その家族と支援者を讃え、地域社会全体でがんと闘うための絆を育むための啓発サポートキャンペーン。それが我が国では2006年秋からスタートした「リレー・フォー・ライフ」だ。参加者がリレー方式で24時間歩きながら寄付を募るこのイベントは、国内20カ所近くで実施されており、福岡県でも今年9月18日から2日間、国営海の中道海浜公園で開催予定。(朝日新聞)
化学物質過敏症についても投稿があった。ある女性は勤め先のスーパーで、特定の商品の売り場に立つと、目がチカチカしたり、口の中が痛くなったりする症状が出た。化学物質を多用する製造方法に疑問を感じるという。自分も患者だという別の女性は、食べ物や化粧品の制約が多く、職場や家庭でなかなか理解されない苦しさをつづった。妊娠中に職場の受動喫煙や空調に苦しめられたという都内の元看護師(34)からはこんな意見が寄せられた。「職場で働くということは、みんなの支えあいで成り立っている。自分だけ良ければというのではなく、みんなにとってより良い職場環境を考えていくべきだ」。厚生労働省の調査によると、職場を禁煙か分煙にして受動喫煙を防いでいる事業所は全体の半数に満たない。(朝日新聞)
化学物質過敏症についても投稿があった。ある女性は勤め先のスーパーで、特定の商品の売り場に立つと、目がチカチカしたり、口の中が痛くなったりする症状が出た。化学物質を多用する製造方法に疑問を感じるという。自分も患者だという別の女性は、食べ物や化粧品の制約が多く、職場や家庭でなかなか理解されない苦しさをつづった。妊娠中に職場の受動喫煙や空調に苦しめられたという都内の元看護師(34)からはこんな意見が寄せられた。「職場で働くということは、みんなの支えあいで成り立っている。自分だけ良ければというのではなく、みんなにとってより良い職場環境を考えていくべきだ」。厚生労働省の調査によると、職場を禁煙か分煙にして受動喫煙を防いでいる事業所は全体の半数に満たない。(朝日新聞)
神奈川県の女性(43)の職場では、暑がりの社員が空調の設定温度を22度に下げてしまう。指先のしびれやだるさ、吐き気に悩まされ、5月末には自律神経失調症と診断されて1週間ほど休まざるを得なかった。女性が座る席の背後と両脇をアクリル板で囲うなど、会社も配慮はしてくれている。だが冷風を完全に避けることはできず、体調も戻らない。女性は「空調の設定温度を高くしてくれないと、根本的な解決にはならない。『クールビズ』を掛け声だけに終わらせないでほしい」と訴える。「学校の教室に空調が設置され、一部の生徒が冷えて体調を崩している」 「電車の冷風がつらい」など、職場以外の問題を訴える声もあった。(朝日新聞)
神奈川県の女性(43)の職場では、暑がりの社員が空調の設定温度を22度に下げてしまう。指先のしびれやだるさ、吐き気に悩まされ、5月末には自律神経失調症と診断されて1週間ほど休まざるを得なかった。女性が座る席の背後と両脇をアクリル板で囲うなど、会社も配慮はしてくれている。だが冷風を完全に避けることはできず、体調も戻らない。女性は「空調の設定温度を高くしてくれないと、根本的な解決にはならない。『クールビズ』を掛け声だけに終わらせないでほしい」と訴える。「学校の教室に空調が設置され、一部の生徒が冷えて体調を崩している」 「電車の冷風がつらい」など、職場以外の問題を訴える声もあった。(朝日新聞)
エアコンの温度設定についても、同じように悩む人がいた。滋賀県内の紡績工場で働いていた女性(47)は、業務用の大きなエアコンの前に席があり、強い冷風を浴び続けて体調を崩した。段ボールで囲いを作ってもらい、登山用の下着を重ね着し、帰宅後は熱いお風呂で体を温めたが震え止まらない。ひと夏は我慢して勤めたが、退職後も冷房を受け付けない体質になってしまったという。いまは外で植栽の仕事をしている。「冷房が障害になっては仕事を選べないし、買い物や外食、旅行にも支障がある。本当に苦しい」と言う。(朝日新聞)
職場のたばこの煙で体調を崩し、上司に相談したら退職や休職に追い込まれたーーー。そんな経験をした2人を紹介したところ、「私も同じ目に遭った」というメールが多数寄せられた。生活雑貨を扱う関東地方の会社に勤めていた女性(42)は今春、入社からわずか半年で職を失った。社員は女性だけ。十数人の小さな職場だった。喫煙者が多く、自席でもたばこを吸っていた。マスクで自衛したものの、顔やのどの痛みに耐え切れなくなった。恐る恐る上司に相談したら、社長や同僚からなじられた。「煙が苦手なのを隠して入社したのが悪い」「煙で頭痛なんて聞いたことがない」「今すぐ辞めろ」その日のうちに解雇を言い渡された。後日、人事担当から「事故都合退職にした方が自分のためだ」と電話がきた。拒否したら、正社員で入社したはずなのに、契約社員の期間満了として処理された。(朝日新聞)
「ゴオオオ・・・・・」。東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピュータ室は大音響に包まれていた。ジェット機のエンジンの近くにいるようだ。パソコン6144台分にあたる機器が24時間動いている。ここでは、肝臓がん患者のゲノム(全遺伝情報)を解析して、がんの原因を探っている。1人のゲノムの解析量は約4テラバイト。市販の外付けハードディスク2台分、標準的なDVD(4.7ギガバイト)に保存するなら870枚が必要だ。共同研究をする理化学研究所ゲノム医科学研究センターの中川英刀さんは「今や遺伝子研究にスパコンは欠かせない」。(朝日新聞)
今春、独立行政法人化した神奈川県立がんセンターは最近、三つの市から「本人同意」を求められた。自治体直営でなくなり、公用請求にあたらないとされたという。同センター企画調査室の小池真紀子さんは「基礎データが収集できるよう国として対策を講じてほしい」と言う。国立がん研究センターの西本寛院内がん登録室長は「施設ごとの生存率を出して比較することは、がん治療の質を向上させるきっかけとなり最終的に国民の利益になる。個人情報保護に配慮しながら公的機関が一括して生死確認できるシステムの導入を検討すべきではないか」と話す。(朝日新聞)
民間病院は調査がさらに難しい。住民票の写しの場合、法改正によって、本人や家族のほかは国や地方公共団体の機関による公用請求と、正当な理由がある第三者による請求に限られたからだ。財団法人癌研究会の癌研有明病院(東京都)は1978年から生死を確認している。本籍地の提示を求める入院患者は本籍地の自治体に照会。外来患者は住所地の自治体に住民票の写しを送ってもらう。今年の照会先は全都道府県の計677市区町村。戸籍抄本や住民票の交付手数料と郵便代で年に150万円かかる。住民票の写しの交付は昨年13の区市に断られた。理由は「本人同意が必要」などだ。同病院の田中正典調査課長は「外来患者が増えているので受診時に調査の同意書を取ることも検討課題だが、はたして患者さんの了解が得られるかどうか」という。(朝日新聞)
調査で確認例が少なければ、生存率が正確な実態を反映しているとは言えない。厚生労働省研究班による生存率の公表指針(2004年度)では、生死を確認できる患者が90%未満の施設のデータは「公表しない」とされた。個人情報保護を目的に住民基本台帳法が2006、2007年に改正され、患者の情報提供を断る自治体が出てきた。1979年から調査している岩手県立中央病院(盛岡市)は過去10年間の受診患者の生死を毎年度確かめる。全患者の住所地の自治体に尋ねる。今年の対象は2008年までの10年間での10457人。3130人と対象が多い盛岡市は診療情報管理士が3日間かけて住民票を閲覧。そのたの148市区町村には患者のリストを郵送し確認を求めた。公立病院なのでほとんどの自治体は協力的で手数料もかからない。ただ今年始めて一つの市に情報提供を断られた。(朝日新聞)
患者の生存率はがん診療の実力を表すデータになる。ただ施設ごとの事情の違いを踏まえなければならない。進行がんの患者を多く治療していれば生存率は低くなりがちだ。逆に早期がんの患者が多ければ高くなる。そうした違いに配慮した上で生存率が公表されれば患者が医療機関を選ぶ参考になる。厚生労働省が6月に発表したがん対策推進基本計画中間報告にも「院内がん登録の施設別データを公開し活用すべき」との意見が入れられた。拠点病院のがん登録データは昨年から国立がん研究センターに提出されている。昨年は2007年にがんと診断された32万7890人分。厚生労働省とセンターはこれらの患者の3年後の生存率を出すため、来年に患者の生死確認の調査をできるか検討している。(朝日新聞)
琉球大学病院のがん登録は、特定の診療科が扱うがんについてはあったが、厚生労働大臣が指定するがん診療連携拠点病院(現在377)になるため、指定の要件である全患者のがん登録を始めた。2008年に拠点病院になってからは研修会などで、ほかの医療機関にがん登録を広めてきた。いま沖縄県内で院内がん登録をしている病院や診療所は14カ所ある。今年度内には17カ所に増えそうだ。統一の方式で集めたデータなら施設間で生存率などを調べることができる。同病院の増田昌人がんセンター長は「医療機関は自分たちの水準を認識し、診療内容の改善を図ることができる」と話す。(朝日新聞)
がんの治療をする医療機関が患者一人ひとりの治療内容などを記録する「院内がん登録」。データを集めて分析すれば、よりよい治療や病院選びに活用できる。来年は患者の3年後に生存率を調べるため、初の全国調査が検討されているが、個人情報の保護が患者の追跡を難しくしている。沖縄県にある琉球大学病院のがんセンター。2人の診療情報管理士がパソコンにがん登録データを入力していた。登録する情報は、いったん医師が用紙に書き込み、それを診療情報管理士が点検している。標準的な項目は、がんが生じた場所、進み具合、治療の内容など49項目。毎月約100人分が登録される。診療情報管理士の仲本奈々さんは「病名は国際疾病分類で定められたルールに基づいてコード化する必要があるため、カルテ情報と照らし合わせながら正確に入力する」と説明した。登録を始めたのは2007年。この年にがん対策基本法が施行、政府のがん対策推進基本計画で院内がん登録に取り組む医療機関を増やすことが目標となった。
がん対策基本法によれば、各都道府県は「がん対策推進計画」を策定しなければなりません。それを推進するための福岡県の協議会には当事者委員が2名参加しています。乳がん患者会「あけぼの福岡」代表の深野百合子さんと、小児がんの親や支援者でつくる「がんの子供を守る会」九州北支部代表の高橋和子さんです。この2人の委員さんが、ある日「がん・バッテン・元気隊」を訪ねてみえました。「元気隊」というのは、福岡のがん患者団体の有志でつくるネットワークで、代表は不肖わたくし。どんたくパレードに参加したり、がん患者大集会や患者団体の交流会を開いたり、九州・沖縄のがん患者団体ガイドブックを制作したり、議会を傍聴したり。力を合わせて頑張ってきました。2人の委員さんが言われるには「自分たちは、患者代表といっても乳がんと小児がんのことしか分かりません。ほかの部位のがん患者さんたちはどうお考えなのでしょうか」。そこで委員さんたちにも元気隊に参加してもらい、他のがん患者団体の活動状況などを見てもらうことになりました。(西日本新聞・波多江伸子の「新・楽しい患者ライフ」より)
「がん難民といっても、一人ひとりの状況は違う。丁寧に話を聞くことが重要です。よろず相談をしていくわけです」。がん難民を生んだのは、がんセンターが進めてきた「標準的治療」に主因があるとみる。「10年くらい前、地域や病院によってがんの治療に差があった。標準的治療を日本の病院に普及させることは大事な仕事でしたが、それだけに取り組んでしまい、がんセンターにしかできない世界トップレベルの仕事があろそかになった」。その結果、標準的治療で治らない患者は「うちでは治療法がありません」と宣告されがちだった。医師の一人も「がんセンターの医師は概して冷たいという評判がある」と認める。「1962年にできたがんセンターは世界的な活動を行ってきた。現在も職員一人ひとりの能力は高い。本当はもっと伸ばすことができる。易きに流れていたのかも知れません」。(朝日新聞)
4月に、独立行政法人として生まれ変わった国立がん研究センターの理事長として、山形大医学部長から就任した嘉山孝正さん(60)。就任前から「がんセンターはこの10年以上、停滞してきた。がん難民はセンターが作ってきた」と公言している。着任して驚いたのが、組織体制だった。ほぼ全職員と話して6月に組織を刷新した。並行してスローガンを募集した。83人から応募があり、「職員のすべての活動はがん患者のために」に決めた。スローガンのもとになった4人には、ポケットマネーから計10万円の賞金を出した。7月には「がん難民救済窓口」を始める。予約制で、8人程度の医師と看護師が、他の病院で「もう治療法がない」と言われた患者の相談を受ける。(朝日新聞)
がんの治療は性生活だけでなく、将来、子どもが持てるかどうかといった生殖機能にも影響する。東京慈恵会医大看護学科の渡邊知映講師らは「化学療法を受ける大切なあなたへ そしてあなたの大切な人へ」という20ページの小冊子を作り無料で配っている。治療薬のリスク一覧や、不妊対策、化学療法後の妊娠・出産の安全性などについて説明している。「化学療法が不妊に影響を及ぼすことは70年代から分かっていたが、90年代までは医療現場でも話題にならなかった。若い患者の生存率が伸びるにつれ、ようやく注目されてきた」と説明する。女性の場合、乳がんや白血病などの治療で使う抗がん剤や放射線照射で、卵細胞の破壊やホルモン分泌の低下が起こり、排卵や月経が止まることがある。抗がん剤の種類のほか、年齢や治療期間などにより影響は異なり、個人差も大きい。妊娠を希望する場合は、既婚の場合は治療前に受精卵を凍結保存、未婚の場合は、卵子の凍結保存という選択肢がある。しかし排卵の周期に合わせなければならず、その分治療が遅れる、採卵のために使う薬の副作用といったデメリットもある。続く・・・。(朝日新聞)
ゴルフジャーナリストの舩越園子さん(46)は、3年前に子宮頸がんの手術を受けた。その経験を「がんと命とセックスと医者」(幻冬舎ルネッサンス)という本にまとめた。告知された瞬間、一番聞きたかった「女としての自分はどうなるのか」ということを、なかなか主治医に聞けなかった経験からだ。「命がかかわる病気なのに、セックスのことを考えているのは不謹慎ではないかと遠慮してしまった。専門的な相談ができる人が周囲にいて欲しかった」 がんと性について研究している独協医大の高橋都准教授(公衆衛生学)によると、がんの経験は性生活に大きな影響を与えるという。性欲かかわるホルモンを分泌する卵巣の切除や、抗がん剤によるホルモンバランスの変化などのほか、乳房切除や人工肛門による外見の変化など、心理的な影響も大きいという。膣が潤わないなら、潤滑ゼリーを買うといった対処法もある。「だがその前に、どんな性生活を送りたいのか、パートナーと話し合って欲しい」と高橋さん。治療後、性欲が戻らないのにパートナーの求めに無理に応じる女性は少なくない。逆に、そっとしておきたいというパートナーの配慮を「自分の魅力が落ちたため」と、誤解するケースもあるという。「医学的に心配なら、主治医や看護師に『いつから性生活を再開できますか』と聞いてください。医療者側も、聞かなければ話さないので」。 続く・・・・。(朝日新聞)
東京や静岡県内で定期的に開く会合では20~30代を中心に、様々な話題が出る。だが、一番関心が集まるのは、性生活についてだという。40代のメンバーも、結婚後まもなく子宮頸がんが見つかり、広汎子宮全摘術を受けた。卵巣を切除したため膣が潤わず、挿入されると痛みを感じる。感覚も変わり、快感を得られなくなった。夫も完全に挿入できないため、満足感を得られていないように思える。排尿障害の後遺症で、行為中に尿が漏れてしまうこともあるという。「夫を性的に満足させられない上、子どもを生めないと負い目を感じてしまう」と悩む。河村さんは、「会合では体位の話から、膣を潤わせるゼリーの銘柄まで、何でも話す。術後をどう生きていくかについて情報交換することが、患者にとって一番必要なことだと思う」と話す。続く・・・。(朝日新聞)
セカンドオピニオンをすると主治医に嫌われることは本当にないのですか?セカンドオピニオンは大歓迎。説明に納得していないということなので、積極的にご紹介しています。別の医師が同じ意見だとすごく安心されるが、先生によって微妙に治療方針が違うことは多い。納得してもらうことが大事です。がんの免疫療法はどうでしょうか?細胞を使う療法やワクチンなどがありますが、標準医療として認められているものはありません。高額なお金を取って、科学的に検証していない医療を提供しているものもある。臨床試験をやりながら将来の新しい医療を開拓していこうという一群と、ビジネスとしてやっている一群とがあります。多くの書店に並んでいる本は、ほとんどビジネスです。(朝日新聞)
医療費の自己負担額が多い場合、医療費が払い戻される「高額療養費制度」が利用できる。1カ月の医療費が30万円だった場合、この制度を利用すれば、一般所得の人(おおむね年収600万円以下)では、約22万円が払い戻される。だが、制度は複雑で、使いこなすには、仕組をよく知る必要がある。払い戻しは通常、窓口で支払った約3カ月後。そこで、事前に保険組合に「健康保険限度額適用認定証」をもらい、医療機関に提出すれば、自己負担の限度額分だけ払えばよい。だが、これは、通院治療には適用されない。(朝日新聞)
NPO法人日本医療政策機構が昨年末、がん患者約1600人を対象に行ったアンケートでは、治療費について「とても負担が大きい」「やや大きい」との回答は71%に上った。経済的な負担を理由に、治療を断念したり変更したりした人も13%に上った。東京大医科学研究所のチームが昨年、566人のCML(慢性骨髄性白血病)患者に行ったアンケートでも、医療費を負担に感じる人は73%いた。経済的な負担から、治療を中断したこともある人も3%いた。チームによると、グリベック(病気の進行を止める分子標的薬)発売前の2000年に発症した患者約100人に限ると、当時、負担を感じていたという回答は42%だった。当時の患者の平均所得は533万円。今回の調査では389万円に減った。複数の患者団体がCMLを、人工透析を受ける慢性腎不全や血友病、エイズの3疾病と同じ長期高額疾病に指定するよう求めている。指定されれば、負担は原則月1万円になる。(朝日新聞)
埼玉県に住む大学院生の女性(23)は、昨年5月に慢性骨髄性白血病(CML)を発症した。入院後、病気の進行を止める分子標的薬「グリベック」を1日4錠飲みながら、研究を続けている。グリベックが2001年に発売され、患者の生存率字は大幅に上がった。だが、1錠約2750円の薬を1日平均4錠、飲み続ける必要がある。治療費は両親が出している。昨年は薬代だけで約96万円。今年は約120万円になる見込みだ。昨年の自己負担額は約60万円だったが、母親は「とても、老後の蓄えどころではない」と話す。今のところ体調はいいが、将来への不安が頭を離れる日はない。就職すると親の扶養家族から外れるため、自分で高額な医療費を払っていくことになる。結婚もしたい。「でも、経済的に相手の負担になるかも知れない。子どもも、持てるかどうか」。そう話しながら、涙ぐんだ。(朝日新聞)
九州大学病院・別府先進医療センター(大分県別府市)は27日、食道がんの治療で入院していた70代男性に抗がん剤を過剰に投与し、意識不明の重態になる医療事故があったと発表した。久保千春院長や牧野直樹センター長らの説明によると、男性は県外在住で4月12日から入院していた。40代の男性医師が治療を担当し、4月15日~5月1日に放射線治療をし、4月19~23日と26日カら30日に2種類の抗がん剤を点滴で投与する治療をした。5月6日の血液検査で白血球や血小板の数が異常だったため、この医師が調べたところ、いずれも低い濃度で与えるべき抗がん剤を、誤って1.5倍と2.8倍の濃度で与えていたことが分かった。医師が思い違いで薬剤室への指示を誤ったという。男性は14日に腎障害やけいれん発作を伴う意識障害と多臓器不全を併発し、意識不明の重態となっている。同センターは医療事故が起きたことを男性の家族に謝罪した。(朝日新聞)
がん患者は病だけでなく、「お金」の問題とも闘わなければならない。新しい薬や治療法の登場で生存率は上がったが、金銭的な負担は重くなった。転移・再発がんでは、高額な治療費を生涯、払い続けなければばならない場合もある。医療費が戻される国の制度もあるが、使いづらく、患者団体は見直しを求めている。(朝日新聞)
ヒトの幹細胞を使った臨床研究に関する指針の改正案を、厚生労働省の専門委員会がまとめた。人工多脳性幹細胞(iPS細胞)を使った臨床研究を認める一方で、移植後にがん化する懸念もあることから、安全性への配慮を求めた。現在の指針は、骨髄中の造血幹細胞など、もともと体にあった幹細胞を利用する場合を想定している。しかし2006年にに山中伸弥京都大教授が世界で始めて体細胞からiPS細胞を作った。研究は急速に進んでいるが、指針はiPS細胞を使った臨床研究に対応しておらず、見直しが求められたいた。指針案では、目的の細胞に分化していないiPS細胞を移植すると、がん化の恐れがあるため、目的外の細胞の混入を防いだり、長期的に経過観察をしたりと安全性への配慮を求めた。(朝日新聞)
4月15日、理研、国立がん研究センターは、70代の肝臓がん患者2人のゲノムを解読し、遺伝子の異常計100カ所を見つけたと発表した。11カ国以上が参加して、50種のがんで遺伝子の異常を調べる共同研究「国際がんゲノムコンソーシアム」(ICGC)の成果の一つだ。がんは、ゲノムに異常が起こり、細胞が無秩序に増えてできる。正常な細胞とがん細胞のゲノム配列をすべて比較すれば、がんになる原因が突き止められるかも知れない。ICGCは、がん患者計2万5千人のゲノムを解析し、データベースを作る計画だ。個人のゲノムを大量に解読できるようになった背景には、読み取り装置「シークエンサー」の進歩がある。解析スピードは去年の10倍、2000年の1万倍以上だ。コストも大幅に下がった。ゲノムの解読が進めば、様々な病気の原因が分かるかも知れない。これまでゲノムの「点」を調べる研究が主流だったが、今後は「線」を読めるようになるからだ。(朝日新聞)
遺伝情報を解析した結果、患者は9番目の染色体上の遺伝子に、特定のDNA配列のわずかな個人差(遺伝子多型)のある割合が多いことがわかった。この遺伝子多型は、被曝と関係ないアイスランドの患者集団についての研究でも甲状腺がんの発症のしやすさにかかわると報告されており、被曝の有無にかかわらず患者の多くに共通していることが裏付けられた。また、被曝したがん患者だけに関連する別の遺伝子多型を9番目と12番目の染色体上に見つけたという。これらの発見で、放射線の引き起こすがん発症のメカニズム解明につながることが期待される。(朝日新聞)
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で放射線を浴びた住民らの遺伝子情報を調べた長崎大や京都大などのチームが、甲状腺がんの発症に結びつきやすい遺伝子を見つけた。1986年4月26日の事故発生から24年がたつ今月、英国の科学雑誌の電子版に発表した。長崎大大学院医歯薬学総合研究科長の山下俊一教授らは京大の松田文彦教授(ゲノム医学)らと共同で、チェルノブイリ事故当時0~18歳で放射線を被曝した人のうち、甲状腺乳頭がんを発症した667人と発症していない620人の遺伝情報を解析した。続く・・・。(朝日新聞)
がん患者同士が励まし合う活動は全国的に盛んになりつつあり、2007年には大手出版社から全国の患者団体のガイド本が出版されたが、小さな団体まで網羅したきめ細かな本はまだ少ない。波多江さんは「治療や闘病体験などを共有できれば、患者や家族の支えになる。患者の相談に乗る医療関係者にも利用してほしい」と話している。全国規模で活動するNPO「がん患者団体支援機構」(東京)の三浦秀昭副理事長は「地域ごとのガイド本があると、一から団体の情報を探す必要がなくなり、患者の気持ちや負担がものすごく楽になる」と評価する。「そばにいるね」は500円。問い合わせは「元気隊」事務局の十河紀子さん(090-8356-1751)へ。(朝日新聞)
九州・沖縄8県のがん患者団体の情報を網羅したガイド本「そばにいるね」が話題になっている。命にかかわることもあるがん患者は、闘病でも孤立しがち。励ましあって病を盛りきろうと、福岡市の患者団体が1年がかりで調べ、約90団体を収めた。昨年10月に刷った初版1千部は売り切れ、さらに充実させた改訂版2千部を増刷した。本をまとめたのは福岡市の「がん・バッテン・元気隊」代表の波多江伸子さん(61)。自身も約30年前に甲状腺がんになり、手術やリハビリで乗り越えてきたがん患者。その経験を生かし、患者の相談に乗ったり、「死生学」を大学で教えたりする活動に取り組んできた。がん患者は再発や転移の不安、死の恐怖など深刻な問題に直面する。患者団体は医療機関ごとの小さな患者会や全国組織の支部など様々な形があるが、横のつながりが弱かった。波多江さんは2008年春、福岡市で開かれる「博多どんたく港まつり」のパレードに、がん患者の参加を呼びかけたのを機に「元気隊」を設立。毎年どんたくパレードに参加しながら、団体のネットワーク作りを進めてきた。(朝日新聞)
厚生労働省研究班の2008年調査では、がんと診断された時点で働いていた約2600人のうち、31%が依願退職し、4%が解雇されたというデータがある。東大医療政策人材養成講座の研究班が2008年に行った調査でも、仕事の継続を希望していた人の31%が、診断後に仕事が変わっていた。だが、国が2007年から進める「がん対策推進基本計画」では、がん患者の就労支援については触れられていない。国の対策が進まない中、一部の民間企業が動き出した。医療事務大手の日本事務センターは5月、がん経験者らが設立した「キャンサー・ソリューションズ」(CANSOL 東京都)の取り組みに賛同し、ウエブを使った就業マッチングを始める。医学的知識を身につけたがん経験者を雇用したい企業と、社会とつながりたい経験者がお互い、条件を登録する。すでに企業側からは、薬の臨床試験を受ける患者への電話対応や、医師秘書などの依頼がある。乳がん経験者の桜井なおみ・CANSOL社長(43)は「薬や医療行為で多くのがん患者の命は助かる。でも仕事を奪われれば社会的な死に等しく、全国に広げたい」と話す。(朝日新聞)
勤務先では、勤続10年以上の社員は、最長3年の休職が認められていた。休職から2年がたち、このまま休み続けるかどうか悩んでいた頃。患者仲間の友人から聞かれた。「今、一番したいことってなあに?」「仕事」と答えた。スーツ姿で歩いている人たちがかっこよく見え、自分が社会から取り残されたように感じていた。会社から1時間以上かかる親元の家を出て、会社にも病院にも近い都心のマンションで一人暮らしを始めた。復職時、産業医に時短勤務ができるか相談した。だが「あなたのようなケースで前例はない」と言われた。抗がん剤の治療の日は朝、病院に行き、採血や問診を受け、出勤。仕事を終えて夕方、病院に駆け込んできた。「会社は、一番、自分らしくいられる場所。やりたかった海外とかかわりを持つ仕事ができ幸せだなって思ってきた。でも病気になり、以前のようには働けない。同じように働き続けられなければ辞めるしかないのかな」 脳や骨にも転移している。治療のために入院が必要で今少し、会社を休んでいる。入院の前日は午前9時から午後11時半まで働いた。また、近く復職するつもりという。(朝日新聞)
大手メーカーに勤める乳がん患者の女性(38)=東京都=は、2年の休職をはさみ働き続けている。がんと分かったのは2002年、30歳の頃。がんは小さく転移はなかった。当時、念願だった海外の客に商品を売り込む部署で実績を上げ始めていた。上司2人に病名は告げたが、「普通に働くから他の人には言わないでください」と懇願した。手術後、半年の抗がん剤治療は金曜夜に受け、副作用で土日は寝込んだが月曜からフルに働いた。年に4、5回は海外出張。残業もこなした。主任への昇格試験も通り「治ったと思い込んでいた」。だが2006年、首にしこりができ、はれてきた。リンパ節への転移だった。心膜にも転移し、心不全となり通勤途上に倒れた。休職し、抗がん剤治療の日々。病院に通う以外は、家で泣いてばかりいた。 続く・・・ (朝日新聞)
がん患者の4人に1人は、20~50代の働き盛りだ。一方で、がんをきっかけに仕事を辞めた人が3割を超えるというデータもある。治療法の進歩で生存率が上がり、がんと共に生きる人は年々増えている。だが患者の就労をめぐる国の支援態勢は手付かずのまま。一部の民間企業が、少しづつ動き出した。東京都内に住む40代男性は30年近く、飲食業界で働いてきた。専業主婦の妻と娘2人にも恵まれ、ローンでマンションも購入。残業や休日出勤もいとわず働いた。2008年の夏、仕事中に突然、肛門から大量出血した。少し前の健康診断で、便に血が混じっていることを指摘されたが、忙しさにかまけて精密検査を受けていなかった。近くの病院に行くと「早期の大腸がんです」。即、入院し、手術を受けた。がんができた場所が悪く、早期がんだったが開腹手術の対象となり、1カ月ほど入院。8月に退院した。続く・・・。(朝日新聞)
がん患者とその家族で作る福岡市の市民グループ「青葉の会」(松尾倶子会長)が11日、NPO法人化のための設立総会を開いた。夏ごろに県の承認を得る計画だ。青葉の会は、胃がんを克服した松尾さん(64)らの呼びかけで、2004年4月に発足した。現在約170人の会員がおり、1人年3千円の会費で運営しているが、事務所の家賃に充てる資金が不足し、交流行事や季刊誌の発行もギリギリの状況が続いていた。安定した活動を続けていくため、NPO法人化を目指すことにしたという。会は「1人で悩まず、楽しみながらがんを克服しよう」と、がん医療の勉強会、食生活を見直す研究会など4つのグループに分かれて活動してきた。会員は50~60代が中心だが、近年、乳がんや子宮頸がんを患った若い会員が増えてきたため、この春に40代以下の会員のグループを新設した。(朝日新聞」)
厚生労働省の外郭団体「労働者健康福祉機構」は、今年度から5年の予定でがん患者の就労支援の研究に取り組む。その背景には自殺者が年間3万人を超える社会情勢がある。健康や経済の問題で悩む人も多い。雇用の形態が崩れ「がんのことを言ったら正社員でいられなくなる」「お金がなくて治療が受けられない」という声もあがる。2人に1人はがんになると言われる時代。病気を抱えて働く高齢者も珍しくない。がん患者が安心して働ける社会を目指し、医療関係者や研究機関、患者らが3月18日、初会合を開き意見を交換する。(朝日新聞)
関東地方にある公立高校の教師A男さん(61)は、肺がんの治療をしながら働いてきた。定年後も非常勤として活躍する。2008年秋の人間ドックをきっかけに、肺がんが見つかった。年末に手術を受け、その後約1年間、抗がん剤で治療した。校長や一部の同僚には、がんだと正直に話した。医師に説明された下痢や口内炎などの副作用がいつ起きるか、常に不安はあった。でも時間がかかる点滴の抗がん剤ではなく飲むタイプだったため仕事を休まずにすんだ。授業のカバーなど同僚にも支えられた。「がんに限らず、病気で休んだら助け合うのが当たり前の職場なので、プレッシャーがなかった。普通の会社だったらそうはいかないのかもしれません」 昨春から非常勤になり、職場も変わった。通勤時間は増えたが、受持ちの授業や残業は減り、ほどよいペースで働く。(朝日新聞)
近年、がん治療の前後に歯科衛生士が口腔ケアをする病院が増えている。千葉県市川市の東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科で、歯科衛生士として働く奥井沙織さん(27)は、昨年から食道がんチーム医療のメンバーになった。2年半余り、口腔がん(舌がん、歯肉がん、頬粘膜がんなど)を担当した経験を買われた。患者は治療方針が決まると、まず、歯科医師から虫歯や歯周病の治療を受ける。次に奥井さんが歯石除去や歯面研磨などの口腔清掃をする。手術や抗がん剤、放射線の治療を受けると、口の中の細菌による術後感染症や誤嚥性肺炎などが発症しやすくなるためだ。そのリスクを減らす。(朝日新聞)
C型肝炎ウイルスは血液を通して感染する。過去の輸血や血液製剤、注射器の使いまわしなど不適切な医療行為によって広がり、患者・感染者は全国に150万~200万人いるとみられる。長い年月のうちに慢性肝炎から肝硬変、肝がんに進行する。インターフェロン治療で進行を防ぐとこはできるが、医療費が高額になるのが壁になっていた。2008年から公費助成が始まり、自己負担の限度額が所得に応じて月1万~5万円になった。当初目標は年10万人がこの治療を受け、将来の肝がんを大幅に減らすはずだった。ところが厚労省によると、2008年にこの助成制度を使った人は約45000人と目標の半分だった。
がん免疫療法は、現在自由診療のため治療費が高額で、1クールの治療費は150万円~200万円になります。私たちは現在、保険診療の適用が可能となるよう、臨床データを蓄積しているところです。また実際の治療で併用する抗がん剤の相性についてもさらにデータを集め、トータルで治療成績が上がるよう、研究を進めていきます。多くの医療機関と連携しながら、一人でも多くの患者さんに先進的な医療をお届けしたいと思っています。(西日本新聞)
がんとは、体が自然に有している細胞が、何らかの理由で突然変異してしまったものです。がん細胞は自分自身の細胞なので、体がそれを異物として認識して排除することは難しく、免疫療法の成績はあまり上がりませんでした。しかし、近年の研究技術の進歩によって、リンパ球に個人のがんを認識させ、がん細胞を特異的に攻撃するリンパ球を誘導するワクチンが開発され、また安定して作れるようになりました。これによって腫瘍の振興が抑制、あるいは縮小するなどの有効性が得られるようになりました。(西日本新聞)
そもそも人間の体は、病気やケガに対して自分で治そうとする自然治癒力(免疫力)を持っていて、細菌やウイルスなどの外敵に対して自分の体を防御するために、自らそれを排除しようとする能力があります。がんの免疫療法は、人間が持つそういった免疫力を高め、がん細胞だけを排除する治療です。分かりやすく例えると、インフルエンザウイルスに対してワクチンを投与するように、がんの特長を覚えさせたワクチンを投与し、がん細胞だけをリンパ球が攻撃していく、と想像していただければ理解しやすいと思います。(西日本新聞)
胃ろうがない患者が抗がん剤や放射線治療などで食事が難しくなった場合、どうすればいいか尋ねてみた。比企さんは「少量で高カロリーの飲み物やゼリー、シャーベットなどを少しづつ口にするなど、腸を使うのをやめない工夫をしてください」と提案する。(朝日新聞)
胃がんで胃をすべて摘出したあと、食道と空腸を縫ってくっつけるが、とじ目が敗れる「縫合不全」が生じ、炎症がおきるなどして入院が長引くことがある。比企さんは縫合不全になった患者のうち、静脈への点滴で栄養を補給した約10人と、鼻から細い管を空腸まで通し、そこに栄養剤を入れて栄養補給をした約10人の入院期間を調べた。静脈栄養の患者は約35日間入院、経腸栄養の患者は約25日間だった。(朝日新聞)
がんセンター東病院の化学放射線療法を受けた頭頸部がん患者の治療成績は、以前は治療3年後の生存率が4割程度だった。ほぼ全患者に胃ろうを作るようになった2003年以降、中間段階の分析で6割以上になったという。日本の多くの病院では、静脈に点滴して栄養を補給する静脈栄養を行っている。しかし、癌研有明病院(東京都)の比企直樹消化器外科医長は、点滴よりも胃ろうなどで腸から栄養を消化・吸収させたほうが、がん治療の完遂率が良くなる、と指摘する。腸の粘膜には免疫細胞が数多くある。比企さんは「静脈栄養に頼り腸を使わないと、1週間から10日で腸の粘膜が疲弊し、免疫機能が落ちます。経腸栄養なら、腸の免疫細胞の動きが保たれ、傷が早く治るなどすると考えられます」と指摘する。(朝日新聞)
東病院で大半の患者が治療を完遂できるようになった最大の理由は、原則として化学放射線治療を受ける全患者に事前に「胃ろう」をつくり、栄養の不足分を栄養剤で補うようにしたことだという。欧米では、化学放射線療法は手術と並んで頭頸部がんの標準治療のひとつだ。日本では治療の完遂率が低く、治療成績は手術に比べると悪いとされてきた。東病院消化管内科の田原信医長らが欧米と日本の違いを調べると、治療前に胃ろうをつくる点と、痛みの緩和にモルヒネなどの医療用麻薬を使っている点だった。(朝日新聞)
千葉県在住の医療事務職員の女性Aさん(49)は2008年3月、「上咽頭がん」と診断された。鼻腔の奥の部分で、脳に近く、耳などの神経もあるため手術は難しく、放射線主体の治療が標準的だ。国立がんセンター東病院(同県)で放射線と抗がん剤を同時に受けることになった。放射線の照射は33回。7週間にわたり、週末以外は毎日照射を受ける。治療を始めて2週間後に、食べ物の味が分からなくなっていた。放射線の影響で唾液腺が萎縮し、唾液が出にくくなったからだ。抗がん剤の副作用で吐き気もひどくなった。食事を口に運ぶ努力をしたが難しかった。栄養が足りない分、毎食、治療開始前に作った「胃ろう」から胃に直接、栄養剤を入れた。放射線照射で進んだ唾液腺の萎縮によって、鼻や口の中の乾燥が強まり、息苦しさもひどくなった。日増しに照射がつらくなった。32回目のとき、治療室の前に来ただけで涙があふれた。「もう限界。これ以上耐えられない」 Aさんの話を1時間半、別室で聞いてくれた看護師が、こう言った。「ここで治療をやめたら後悔するよ」。その一言で、残り2回の照射を受ける決意をした。Aさんは治療終了の2カ月後に職場復帰。最近は少しづつ、体重も戻ってきている。(朝日新聞)
腹部に局所麻酔をかけて穴を開け、栄養剤や流動食を胃に直接送り込むためのチューブを通す方法。所要時間は20分程度。使わないときは長さ約1.5センチのボタンでふたをして入浴もできる。服を着れば、胃ろうがあるのははからない。日本では、飲み込む機能が落ちた高齢者にはよく見かけるが、がん治療の現場ではまだ普及していない。(朝日新聞)
抗がん剤や放射線などによるがんの治療中に、いろいろな副作用が起き、食欲がなくなって、食事ができなくなる人は少なくない。栄養不足に陥った患者に対して、従来のような点滴ではなく、胃にチューブを通すなど腸経由で栄養補給(経腸栄養)することにより乗り切る手法が広がっている。治療成績が上がったり入院期間が短縮したりすることも報告され、注目を集めている。(朝日新聞)
がん検査の一つ「細胞診」では、子宮の入り口を器具でこすり採ったり、たんや尿などを採取したり、しこりに注射器の針を刺して吸い取ったりして細胞を集める。細胞検査士は、それらをスライドガラスに貼り付けて染色し、顕微鏡で見ながら「がん細胞」や「あやしい細胞(異型細胞)を探し出す。がん検診のほか、執刀医らの判断に生かせるよう、手術中に胸やおなかの細胞を短時間で見分けることもある。異常細胞が見つかったときは、細胞診専門医が最終的な判断を下す。さらに正常であっても、見落としを防ぐために全体の2割は細胞検査士同士でダブルチェックする。がん細胞かどうかは、正常な細胞の形態からどのくらい異なるかで判断だれる。例えば、がん細胞には一般的に、核が大きい、核の形がいびつで不規則に並んでいる、普通より細胞が濃く染まっている、などの特長が見られる。(朝日新聞)
家計の見直し相談センター代表でFPの藤川太さんは「貯蓄が思うように伸びず定期保険の更新を続けると、かえって終身型のほうが得。病気はがんだけではないので、貯蓄など余分なものが付いてない衣料保険を薦めることが多い」と話す。厚生労働省研究班の調査では、がん患者が1年間に負担した費用は医療費に交通費や民間療法の費用、保険代などを入れて平均100.7万円。入院費と外来費だけだと、入院しなかった人も含めた全患者で平均すると約57万円。高額療養費の給付や税の控除では全患者で平均約17万円かえってきたので、純粋の医療関連の負担は念平均約40万円だ。(朝日新聞)
厚生労働省研究班の調査では、患者がもらった民間保険金の平均は支払った経費を超えており、民間保険が患者に経済的な安心をもたらしていることがうかがえる。同班が2004年から続けている調査では、がん患者6600人(粒子線治療を受けた人を除く)がもらった民間保険や税の還付などの払戻金の平均は1人年間62.5万円。だが、民間保険を受取った44.8%の患者に限ると、この保険金だけでも平均101万8千円もらっている。公的保険と税の払い戻しを差し引いた実質経費の平均83.8万円を上回る。(朝日新聞)
2カ月前、末期の肺がんとわかった父が選んだのが在宅での緩和ケア。時折、悲しみがあふれ、海に泣きに行った。「死臭がでてきているようなので、あと2、3日かもしれません」という告知の翌日、父の部屋に入ると、変化に気付いた。たばこ、本、コーヒーといった、今までしていたにおいとは違う。悪臭ではないが、気持ちを重くする。日ごと強まり、「そろそろなんだな」と覚悟した。3日後、息を引き取った。「お疲れ様」と拍手で送った。通夜、葬儀。部屋に満ちていたにおいは薄まり、父が生きた最後の痕跡は、いつのまにか消えた。(朝日新聞)
手術が成功し無事に退院したが、3カ月ごとの定期検診で肺の末梢に小さな再発が発見された。手術はできるか。影がたくさんあれば、前のがんが転移・再発したと考えるので、全身の薬物療法がいいと思います。ただ、影が1個の場合は新たながんができた可能性もあるので、その場合は体力があれば手術してもよいのではと思います。再発と考えれば抗がん剤ですが、新しいがんと考えたら積極的に治療する意義があります。手術が可能なら手術、それが難しいなら定位放射線療法も選択肢になるでしょう。(朝日新聞)
すりガラス陰影はがんか炎症かを判断するのが難しいので、きちんと診断されているかどうか心配です。影の中に濃い部分が出てきたら肺がんの可能性が高くなります。基本的には経過観察ですが、放射線で治療するには肺がんという確定診断が必要です。ただ経過を見ているうちにだんだん大きくなる、あるいはがんの可能性が高いような場合は、患者さんにデメリットなどをよく説明した上で、放射線治療をすることはあります。(朝日新聞)
今のところ、プラチナ製剤のシスプラチンとペメトレキセドを組み合わせて最初の治療に用いることが推奨されています。治療時間が短くて済むカルボプラチンとの組み合わせも世界中で臨床試験が行われています。分子標的薬が効くタイプの特徴が証明されました。(朝日新聞)
自分のがん細胞にEGFRの遺伝子変異があるかどうかはどうしたらわかりますか。肺がんと診断するときに採取した検体で調べることができます。遺伝子変異がある割合は腺がん患者の約4割なので、かなり多くの患者さんでゲフィチニブを最初から使うことが推奨されるようになったわけです。変異のない患者さんでは、従来通りの治療ですか。こちらにもペメトレキセドという新薬が、昨年5月から使えるようになりました。この薬の特長は副作用がマイルドなこと、点滴時間が10分間で終わること、扁平上皮がんには効かないことです。(朝日新聞)
肺がんにおける抗がん剤の進化を教えてください。がんのタイプに合わせて治療法を選択する「個別化治療」が進んできたことです。例えば、EGFRという蛋白を標的にした分子標的薬のゲフィチニブは、よく効くタイプの遺伝子の特長が証明されました。ゲフィチニブの使い方も変わってきたのでしょうか。一般に、非小細胞肺がん(腺がん)は、最初の治療でプラチナ製剤と別の種類の抗がん剤を2つ組み合わせて使います。それが効かない、あるいは使った後で再発してきたときは、二次治療としてゲフィチニブが使われました。ところが最近、ゲフィチニブはEGFRの遺伝子変異を持つ人によく効くことがわかり、最初からゲフィチニブを使うことが選択肢となってきました。(朝日新聞)
進行したがんに対する手術は、例えば縦隔リンパ節に転移があるような場合は手術だけで治すのは難しかったのですが、最近は手術前に抗がん剤と放射線で治療するとよい成績が得られることがわかってきました。高齢の患者さんでも手術はできますか。今、肺がんの手術を受ける年齢で、一番多いのが70歳代で、80歳代もまれではありません。元気であれば、高齢でも安全に手術ができます。(朝日新聞)
外科の進化は何でしょう。早期肺がんに対する縮小手術と、少し進行したがんに対して抗がん剤と放射線治療をしてから手術をする方法の2つがトピックスです。右肺は3つの肺葉、左肺は2つの肺葉でできています。標準的手術では肺葉を丸ごと取り、胸の真ん中にある縦隔リンパ節も取りますが、縮小手術ではもっと小さく取ります。胸の端にある小さながんで、リンパ節転移がないものが対象です。肺葉の一部分とリンパ節を取る「区域切除」と、リンパ節転移がないときにさらに小さく取る「部分切除」があります。(朝日新聞)
痛みなどの苦痛を取りながら治療する「緩和ケア」についてはどうでしょう。最近は抗がん剤の副作用をできるだけ抑え、体に優しい方法で治療成績を向上させようという方向になっています。緩和ケアも以前は非常に進行した患者さんが対象と考えられていましたが、いまは治療初期から導入することが基本になりつつあります。(朝日新聞)
最近は外科、内科、放射線科などが協力する「集学的治療」という言葉もよく耳にします。手術と放射線や抗がん剤を併用することで、治療成績が向上してきました。最近は外科医の片手間ではなく、抗がん剤の専門医が適切な量を投与することになったことも、抗がん剤の効果を高めています。(朝日新聞)
比較的初期の肺がんは手術が基本で、遠隔転移のある進行がんは抗がん剤治療の対象です。その中間の局所に限局して進行したⅢA期やⅢB期では、放射線治療と抗がん剤投与を同時にすると最も有効なことが分かっています。化学放射線療法は、肺気腫などで手術ができない患者さんにはよい治療法だと思いますが、副作用が強いのが問題です。(朝日新聞)
いろいろな臨床試験を行い、肺がんの種類や進行に応じてもっとも優れた治療と証明されたものが標準的治療です。新しい治療法が開発されると、従来の治療法に比べて優れているかを検証し、また新しい標準的治療が生まれます。非小細胞がんの標準的治療を見ると、すべてのステージで、抗がん剤が使われています。そこが非常に重要な点です。今までは抗がん剤は進行して手術できない患者さんにのみ使われてきましたが、最近は手術後や放射線治療後に抗がん剤を加えると、生存期間が延びるだけでなく、治る人が増えてきました。分子標的薬の登場で、抗がん剤の適応も広がってきました。(朝日新聞)
抗がん剤治療にも大きな変化がありますか。抗がん剤は1945年頃から作られ始め、1990年代からよく効く薬が出てきました。特に分子標的薬と呼ばれる薬の進歩が著しく、治療成績が向上しています。肺がんは大きく、非小細胞がんと小細胞がんとに分かれます。約9割と大多数を占める非小細胞がんは、個々の患者さんにどの治療法が最も効くかが分かってきて、「個別化治療」が現実的になっています。(朝日新聞)
各企業は自社の従業員にがん検診受診をすすめるほか、店舗や窓口での受診呼びかけ、パンフレットの配布、国のがん対策を先導する医師や地元のがん患者団体の代表者などを招いたセミナーの実施、さらには県と共同でキャッチフレーズを考えるなど、さまざまな工夫を凝らした仕掛けを計画中だ。「県民一人ひとりとじかに接する機会の多い企業の方々にご協力いただき、一緒に受診率を上げる方法を考えていきたい。今回の9企業の顧客には他の企業の福利厚生の担当者も多くいるはず、そこから効果がさらに広がる可能性を秘めている」と期待を寄せる。
また先月11日には、保険会社・銀行・信用金庫など9つの民間企業との間でがん啓発・受診率向上に向けた包括協定を結んだ。受診率を向上させるために、がんの啓発運動に長年取り組んでいる企業の力を活用しようという発想だ。(朝日新聞)
埼玉県の取り組みの一つに、各市町村に具体的な数字をフィードバックする試みがある。部位別のがん検診受診率のほか、どれ位初期のがんを発見できたか、精密検査を受けた人の割合はどれ位かなど、日本対がん協会支部の協力を得て分析した細かいデータを市町村ごとに提供している。「担当者に自分のところは他の市町村と比べてどうなのかを認識してもらい、意欲的に検診をすすめてもらうことを狙っている」と石田部長は話す。さらには、地元医師会などと連携し、自治体や検診機関の担当者を集めた検診方法等に関するセミナーも実施している。(朝日新聞)
埼玉県は2008年3月に「がん対策推進計画」を策定し、5年後のがん検診受診率50%以上を目指している。「平均年齢が若い県ということもあり、受診率は全国平均よりも低い状況にある」と石田義明・県保険医療部長は話す。大腸がん以外の胃・肺・乳・子宮がんの受診率は、いずれも全国で30位前後の数字だ。「受診しない理由を調査したところ、若い方は『健康には自信がある』『時間がない』などの理由が多く、がん検診をあまり積極的にとられていないようだ」と分析する。しかし「面倒だから」「受ける必要性が感じられない」「たまたま受けなかった」という回答も多かったという。「このような人たちには、自治体ががん検診の必要性をうまくPRし、受診しやすい環境を整えることで受診率向上につながるなはずだ。そのためにはまずがん検診を実施する自治体担当者の意識を変えることが必要になるのではないか」と石田部長。(朝日新聞)
「自治体、企業、そして住民、この三者の意識が変わることが受診率向上の大きなカギとなる」と日本対がん協会。まずは自治体ががん検診を最も重要な施策ととらえること、企業が検診に対して積極的に取り組むことを提言する。「検診による早期発見が広まることで、自治体にとっては医療費の削減につながり、会社にとっては有用な人材を将来がんで失うことが避けられる。どちらも大きな効果が期待される。実現のためには首長や経営者などトップの理解が不可欠だ」と話す。企業の役割は国も重視し、厚生労働省は「がん検診企業アクション」というプロジェクトを立ち上げ、推進パートナー企業を募集している。さらに住民・従業員についても積極的なかかわりを期待する。「任せきりにするだけではいけない。がん検診をしっかり受診しようとする態度を示すことが自治体や企業を動かし、ひいては自分の命を守ることにつながるからだ」。(朝日新聞)
日本対がん協会は昨年9月から10月にかけて、全国1797の市区町村を対象にがん検診に関するアンケートを実施した。受診率50%に向けた全国的な動きを、現場の実務担当者がどうとらえ、何を期待しているのか。その実態を把握する狙いだ。「受診率向上のためには住民への働きかけが大事だ」そう考える自治体が約8割を占めた。しかし実際にがん検診を個別に呼びかけている自治体は半分以下だった。なぜやっていないのか?医療施設・機器の未整備、医師など医療従事者のマンパワー不足、予算が足りない、などさまざまな理由が挙げられた。「住民への啓発が大事だとわかってはいるけど、なかなか実行できていない」理想と現実の間で苦悶する自治体の現状が読み取れた。(朝日新聞)
34万3000人・・・・。これは昨年1年間にがんで死亡した人の数だ。いま、日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人はがんで死亡する。がんを早期発見し、がんに負けない社会を作るためにはどうすればいいのか。 がんは発見が早ければ早いほど、適切な治療で治すことができる病気だ。特に乳がん、子宮がんなどは早期であれば、ほぼ完治することが可能となっている。そのような早期のがんを発見するためには、がん検診が極めて重要になる。しかしながら、日本のがん検診受診率は先進各国から比べると極めて低い。欧米諸国が80%程度なのに対し、約25%と低迷している。その状況を踏まえ、厚生労働省は2007年6月に「がん対策推進基本計画」を定めた。5年後の2012年までに、がん検診受診率50%を目指している。(朝日新聞)
大阪市に住む吉田清子さん(73)は2000年に子宮体がんの手術を受けた。3年後、右足にむくみが出たが、昨年までの6年間、どの病院でも診断がつかなかった。むくみが悪化し歩けなくなり、集中治療を受けたところ、2カ月後、太ももは8センチ細くなった。毎月、外来に通う。「治療後はひざの曲げのばしができるようになり動きやすい。足も軽くなる」と吉田さん。ケアと指導には90~120分かかる。「リンパ浮腫は、がんになったことよりつらいという人もいます。でも治療後には笑顔が戻る。一人で悩まず相談してほしい」とリンパドレナージセラピストの奥谷由里さん(40)は話す。(朝日新聞)
大阪市立総合医療センターには、手術後などの起こるむくみを扱うリンパ浮腫外来がある。毎日、治療が受けられる。リンパ浮腫は、乳がんや子宮がん、前立腺がん、咽頭がんなど、さまざまながんの手術や放射線の治療による後遺症だ。体内のリンパ管の流れが障害を受けて、細菌や老廃物が処理されにくくなって発症する。こうした状態になることによってむくにが出て、慢性的な鈍痛、だるさ、不快感にも悩まされる。日常生活にも支障が出る。治療後すぐに発症する人もいれば、数年後、十数年後に症状が出る人もいる。リンパ浮腫によるむくみを起こしたまま、何円も経過すると、患部が鉄板のように厚く変形してしまう。治療では、リンパ管をやさしく刺激しながらリンパの流れを誘導する「リンパドレナージ」と呼ばれるマッサージをする。むくみを改善し、患部のやわらかさを取り戻す。治療後は「餅のようにポニョポニョになる」という。さらにその状態を維持するため、弾性包帯や弾性スリーブ・ストッキングを着用し圧迫する。運動療法でもリンパの流れを促す。(朝日新聞)
高知県の場合は、県独自の相談室が開設され、この事業の運営は年間約560万円で県から患者会に委託されたという。一方、神奈川県に住む「がん患者支援プロジェクト」代表の三浦秀昭さんは「神奈川の条例はがん対策を充実させる中身に立ち入っておらず、今後も条例だけに頼らず具体的な成果を求めていく必要がある」と指摘する。国の協議会の有識者委員、埴岡健一・がん政策情報センター長は「条例の制定は、がん政策に患者の視点を反映させることにつなげることができる。がん事業費をはじめ、都道府県にか格差があるが、その地域で必要ながん対策の施策を実現させるため、都道府県単位で、予算やアクションプランを充実させる必要がある」と話す。(朝日新聞)
がん条例では、県の責務として、がん予防の普及啓発や緩和ケアの充実、医療情報の提供などを規定。「がん専門医の育成」(長崎県)を掲げているところもある。その上で、がん医療の体制整備や患者や家族の支援団体の援助などを掲げている。2006年に全国初の条例ができた島根県。県医療対策課の小豆澤さんは「行政が積極的にがん対策にかかわる起爆剤になった」と評価する。がん患者や家族が療養体験や治療方法などを話し合う「がんサロン」の普及については、条例で患者会などへの活動を支援することを明記したことが大きい、という。(朝日新聞)
患者が国会議員に働きかけてできた「がん対策基本法」が成立してから約3年半。法律には、国のがん対策を話し合う協議会の委員に患者や家族代表を加えることが明記された。都道府県単位でがん対策の取り組みを検討する協議会委員にも、患者やその家族が名を連ねている。「がん条例ができると、どんな意味があるのか」 NPO法人日本医療政策機構がん政策情報センター(事務局・東京)が今年10月に開いた「がん政策サミット」。全国の患者団体や家族ら約100人が集まった。先進事例をもとに、がん政策実現への課題を話し合う場だが、テーマの一つが、県や県民へがんへの取り組みを強めるよう促す「がん対策条例」だった。条例が制定されているのは、島根、高知、新潟、神奈川、長崎、奈良の計6県。愛媛や徳島両県などでも制定に向けた準備が進んでいる。(朝日新聞)
25日に閣議決定された来年度の政府予算案について、福岡県は26日、県関係の事業予算の状況を発表した。事業仕分けで廃止と判定された「地域科学技術振興・産学官連携事業」の3事業は一転して予算が付いた。逆転で認められた3事業のうちの一つ、「がんペプチドワクチン開発の技術研究を核にした久留米高度先端医療開発クラスター事業」がある。廃止判定後、科学技術振興の観点から、麻生知事は国に復活を働きかけてきた。今回は事業枠の総額のみで個別事業の予算額は示されなかったが、知事は「(前年度比)10%ぐらいの予算削減になるが、実質維持されるこになったと考えてよい」と歓迎した。(朝日新聞)
がん患者や家族が、がん対策を行政に働きかける動きが本格化してきた。都道府県の会議に委員として加わるだけでなく、予防や早期発見を推進させる条例づくりにつなげる例も出ている。「患者の力」をさらに生かす施策が今後の課題だ。 「仲間になりませんか。一緒にやりましょう」愛媛県今治市の病院の会議室。約30人のがん患者や家族に、患者団体「おれんじの会」副理事長の宮内美奈子さん(62)が呼びかけた。宮内さんも夫をがんで亡くした。がん患者や家族に助言や援助をする「ピアサポーター」養成講座。県が会に委託して11月に開いた1回目。理事長の松本洋陽子さん(44)は「私たち患者が動き出し、県も動き始めてくれた」という。(朝日新聞)
「がん」について学校ではほとんど教えていません。いまや半数近くの人がかかるリクスがあるのに教科書の記述はわずか。がんを知ることなく大人になってしまいます。学校や家庭でがん教育が施されている欧米と比べて、検診の受診率が極端に低い理由の一つ。対がん協会では子どもたちにがんを教えるため「がん教育基金」を設けることにしました。東大病院の中川恵一准教授が中心となって教材を作り、まずは全国の中学3年生全員に無償配布しようと考えています。(日本対がん協会・朝日新聞)
患者も「内緒だけど、もうちょっと入院したいって言った理由はね・・・」などと胸のうちを語ってkyれるようになった。そういうときに、ふと、気付いてのだった。外出はだめですよ、先生のいうことをちゃんと聞いてくださいー。がんになる前の古賀さんは、病む人への接し方が「一方的で、強くて、突っ走っていた」のではないかと・・・。でも今は「患者さんと同じ歩幅で、同じ方向に歩ける」と感じている。抗がん剤の投与は3週間に一度。出勤はその4日目からで、前夜には30分のウオーキングで体を温めておく。自分の不調のために他の看護師の士気をを下げてはいけない、という思いからだ。勤務中に吐き気に襲われると、我慢するか物陰に隠れる。飲んだ水が鼻へと逆流するので、水分は極力控える。8月に定年を迎えたとき、夫の義博さん(62)は「もう十分やったじゃないか」と退職をすすめたが、古賀さんは嘱託として病院に残った。それでも秋になり急激に体力が低下したことから、12月中旬での引退を決意した。あと十数日。「やれることはまだある」と古賀さんは言う。37年間の経験や知識とともに、自身の姿を後輩に伝えたいのだという。(西日本新聞)
自らもがんと闘いながら病院に勤めてきた古賀まち子さん(60)=福岡県春日市=が今月、37年の看護師生活を終える。がんになっての3年間は、患者のいわば同志として医療の現場に立ってきた。福岡市南区の那珂川病院で働く古賀さんが患者に「頑張ろう」と言わなくなったのは、胃がんが見つかった2006年からだ。「頑張って生きようとしている人に、わざわざ言うことないなって・・・」 胃の摘出、腹膜転移、吐き気やだるさを伴う抗がん剤、腹水がたまって腫れるおなか・・・。頑張るのは言うほど簡単ではなかった。抗がん剤を投与して3週間で髪が抜け始め、患者を不安にさせないように、かつらを買った。今もニット帽で出勤し、ロッカー室でかつらをナーシキャップのように手際よくかぶる。脱毛は目立たなくできても、妊婦ほどに大きくなったおなかは気付かれることがある。尋ねられれば「がんなのよ。腹水がたまって」と素直に答えることにしている。それが患者と看護師という隔てを壊して、共に闘う仲間にする。「病気なって、病院に勤めて、よかったなと思います」 (西日本新聞)
私の父は主治医からいきなり「がんです」と告げられ、大変なショックを受け、何日も眠れない夜があったといいます。まず家族に相談して、本人に告知すべきかどうかを確認してから言うべきではないでしょうか。末期で治る見込みのない場合など、医師は特に慎重であるべきだと思います。父は永眠しましたが、超高齢社会を生きる私たちにとって人ごとではありません。皮肉にも私は「細胞検査士」という、がん細胞を発見する仕事をしています。多くの患者の細胞診断をしてきましたが、あらためて臨床検査の結果が患者に与える影響の大きさを肌で感じずにはいられませんでした。告知のあり方を考えていただきたいと思います。(北九州市八幡東区、53歳男性) 西日本新聞より
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンが、年内にも国内で販売が始まるが、販売元によると、海外の大規模な治験では、接種から4年後のがん抑制効果はほぼ100%。千人を対象にした国内でも、2年後の段階でほぼ100%という。ただ接種は自由診療で、数万円かかる。日本産科婦人科科学会などは公費負担を国に求めているが、めどは立っていない。嘉村教授は「必ず検診を受け、ワクチンも利用する。二重の予防を行ってほしい」と話す。私も先週、久留米大医療センターで検診を受けた。恥ずかしさは観念するしかないが、痛みはなし。1分ほどで終わった上、「見たところすべて良し」と太鼓判を押されて気分良く帰った次第・・・・。支払いは無料クーポン券を利用した。厚労省の予算で本年度初めて配られ、4月までの1年間に20,25,30,35,40歳になった女性は頸がん、40,45,50,55,60歳は乳がん検診が年度内は無料で受けられる。来年度も続けるという。自治体が指定する医療機関での検診も、多くは2千円以内だ。(西日本新聞)
その人らしく生きることが大切なんですね。家族の方からも質問が寄せられています・「肺がんで不安がっている人たちにどのように接したらいいでしょうか」 とても大きな問題ですね。いろいろな接し方があると感じていますが、基本は平常通り接するのが一番だと思います。苦痛を自分のことのように思いやり、共感するのは家族にしかできないこと。家族の方も苦しいと思いますので、緩和ケア科などで相談してほしいですね。私(小西)の家族は病室を出たあとに泣いていたそうです。患者さんと接するときは本当に自然体でいいと思います。無理するのがお互い一番しんどい。泣きたいときは一緒に泣いたらいい。家族だからといって背負い過ぎないで、困ったら先生に相談することだと思います。(朝日新聞
痛みの緩和と、患者さんとその家族の精神的な治療を指して「緩和ケア」といいます。最近では緩和ケア病棟や緩和ケアチームがある病院も多く、内科医、看護師、薬剤師たちがチームを組んであらゆる方面から患者さんをケアしながら、必要な治療を行っています。がんの末期ではなく初期からということですか?以前は積極的な治療ができなくなった場合に始まるのが緩和ケアでしたが、最近は初期でも通常の治療に合わせて行います。精神的なケアについては小西さん、いかがですか。病気を治すのがゴールではないですからね。病気を治した後に何をするか、ゴールはまだ先。そこを考えることだと思います。小西さんがおっしゃるように、仕事ができるなら仕事をする、家事をするなどは非常に大事です。病気だけに意識を集中させず、日常の生活を取り戻すことが大切ですね。(朝日新聞)
実はこれは、私の師匠である欽ちゃん、萩本欽一さんが教えてくれたことの一つなんです。人生で大切なのは「思い込み」、これで何とでもなるっていうね。末期の腎臓がんだと、手術から5年後の生存率は10%を切ります。でも、48時間にも及ぶ大手術から4年半が経ち、転移も再発もありません。脳は体をだますことができる。治ると思い込むことが、大切なんです。私は今、「がんになってよかった」と心から思っています。なぜなら、だからこそ、みなさんにお話ができるから。思えば、がんが見つかったのは12月25日。クリスマスプレゼントだったんですよ。「がんで苦しむ人たちの役に立ちなさい」という、役目が与えられたんです。今治療中の皆さんも、がんが治ったら、同じ病気で苦しむ人たちに話をしてあげてください。次にがんの患者さんの心のケアをするのは、みなさんです。勝手にあきらめたらアカンで!(笑) (俳優・小西博之) 朝日新聞
肺がんと診断されたら、「病期診断のための検査」に入ります。CT検査やMRI検査、PET検査などで全身検査を行い、原発巣の大きさや広がり、リンパ節転移はないか、遠隔転移はないかを調べます。この三つの因子によりがんの進行をⅠ~Ⅳ期に分類し、この結果から治療方針の決定を行っていきます。さらに最近では、「EGFR遺伝子変異の検索」が注目されています。これはがんの増殖や転移などにかかわる上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子に変異があるかどうかを調べる検査で、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(分子標的薬)の効果を予測することが可能です。特定の部位に変異がある場合にEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が効きやすく、日本人の約30%にこの変異があるので、治療方針を決める上で非常に有利な検査と言えるでしょう。(朝日新聞)
放射線療法は、X線や他の高エネルギーの放射線を照射するもので、肺がんの治療だけでなく骨転移や脳転移の症状緩和にも有効です。コンピュター制御による「定位放射線療法」は、Ⅰ期の肺がんに有効で手術に近い成績も報告されています。がんの部分のみを正確に照射することで副作用を軽減する、照射精度向上のための技術研究が進められています。化学療法は、転移などでがんが広がっている場合に有効で、従来の抗がん剤と分子標的治療薬の二つがあります。最近研究が進んでいる分子標的治療薬に、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤があります。この薬剤は、EGFR遺伝子のある人では高い効果を、変異のない人には効果が低いというデータが報告されており、今後は可能な限り、EGFR遺伝子変異の結果に基づいて使用を検討することになるでしょう。これからは、患者さん個々のがんの性質などに基づいて薬を選択する個別化治療の時代がやってくると思います。(朝日新聞)
アメリカで社会的に禁煙対策がなされて約20年。増え続けていた肺がん患者数が急激に減っています。肺がん対策は何より予防が一番ですが、禁煙が効果的な肺がんの予防法であることは間違いないでしょう。日本においては、2,007年4月に「がん対策基本法」が施行されました。この法律は制定にがん患者さんが加わった今までにない事例です。内容としては、「がんの予防や検診」「放射線療法や薬物療法の専門医を増やす」「初期段階からの緩和ケアの推進」「がん医療に関する相談支援や情報提供」があります。そして、最終的には「がんの死亡者を減らすこと」「すべてのがん患者さんやその家族のQOL(生活の質)を向上させること」を目標としています。WJOG(西日本がん研究機構)も、セミナーや講演会など、がんを知ってもらうための活動を続けてきました。このような場が「がんと正しく向き合う」きっかけになればと思っています。(朝日新聞)
日本人の肺がんの患者数は近年急激に増加しており、肺がんは私たちにとって「21世紀における健康上の大きな課題」といっても過言ではありません。その大きな原因の一つがたばこです。イギリスでの長期にわたる追跡調査では、1日20本以上たばこを吸うヘビースモーカーは、吸わない人の約20倍がんにかかりやすいことが報告されました。日本における喫煙率は、男性は1965年以降下がってきていますが、それでも2005年現在での日本人の喫煙率は男性46.3%、女性13.3%。アメリカの25.7%、21.5%、イギリスの270%26.0%と比べると、禁煙対策が進む先進各国にあっては、禁煙にたいする意識が低いことがうかがえます。日本人女性の喫煙率は高くはないものの、20代で増えており、若い女性の喫煙は、子どもを生む際の影響が懸念されます。(朝日新聞)
愛知県江南市のJA愛知厚生連江南厚生病院には、皮膚・排泄ケア認定看護士が3人いる。ケアやサポートの対象は次のような人たちだ。大腸(肛門を含む)、膀胱、子宮などにがんができてストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造った人 △がんによって皮膚症状がある人 △入院中や退院後に床ずれや皮膚のかぶれ、むくみなどができた人 △糖尿病の合併症で足の皮膚に症状がある人。祖父江正代さん(39)は皮膚・排泄ケア認定看護師の一人。ストーマの場合で言えば、手術前後の説明から、造設位置の相談と決定、定期的なサポートと皮膚のトラブルなどのケア、日常生活の悩みや不安の支援、社会福祉に関する情報提供などを担当する。ストーマ保有者でも生活上の制限はない。祖父江さんは、これまでの生活をできるだけ続けられるように、「漏れない。におわない」「皮膚がかぶれない」「ケアしやすい」ための知識や技術を患者に教える。排泄だけでなく、食事や入浴に始まり、服装や趣味、性生活にいたるまで一緒に考える。外来でストーマ保有者の方から、「海外旅行に行ってきた」「ゴルフしたけど大丈夫だった」と言われる。「そんなときに一緒に喜べるのが一番嬉しいです」と言う。(朝日新聞)
最近は抗がん剤の効果確認にも、PETは注目されるようになってきた。特に期待されるのが、分子標的薬という新しいタイプの薬だ。分子標的薬は正常細胞に影響がないよう、がん細胞の増殖だけを阻害し、副作用を抑えることを狙った薬。ただし、がん細胞そのものを殺す効果は少ないため、従来のタイプよりがんが縮小しにくい。このため、形状を見るだけの画像検査では効果が分かりにくいが、がん細胞の活発さを見るPETなら評価しやすい。「より早い効果の確認で患者に適した治療に早く移ることができる」と独協医大の村上康二教授は語る。(朝日新聞)
エックス線など、他の画像検査で分からないがんがPETで見つかるのは、体内の組織の形を見るのではなく、細胞の糖分消費の活発さを調べるためだ。がん細胞は盛んに成長するため、通常の細胞よりもエネルギー源になる糖分の消費が多い。検査では、放射線を出すブドウ糖の試薬を受診者に注射し、PET機器で放射線を測定して、その多さによって体内のどこでブドウ糖が多く消費されているのかを見る。PETは治療方針を決めるのに大きな役割を果たしてきた。米国のグループの昨年の報告では、同国の高齢者医療保険制度のもとでPET検査を受けた約35000人のがん患者のうち、38%で検査後の治療方針が変わっていた。このうち30%の患者は、検査前に「治療不可能まはは不要」と判断されていたのが、PET検査後は治療する方針に。逆に8%は検査後、治療不可能または不要と判断された。PETの有効性を研究する寺内隆司・国立がんセンター特殊検診室長によると、PETけんさで治療が改善し、寿命が延びたという統計データはない。だが「助かる可能性のある人が新たに見つかるのは確か」と指摘する。逆に「助からない」と分かることも。寺内さんは可能性のない治療で苦しむより、人生を最後まで充実させる選択肢が生まれる」と話す。(朝日新聞)
「夢の検診法」として数年前に関心を集めた陽電子放射断層撮影(PET)。健康な人のがんを見つける検診目的でPETは急激な増加を燃せたが、最近は、治療方針の検討や化学療法の効果を確かめる手段として、重要性が高まっている。患者や家族が正しい知識を持ち、医師にPET検査の受診を相談することも大切だ。今年1月、独協医大病院(栃木県)でPET検査を受けた宇都宮市の主婦、高知春子さん=仮名=(57)はあぜんとした。医師に示された画像の所々に、がんを示すオレンジ色の部分が見えた。乳がん再発に加え、全身の骨や肺、リンパ節に転移していた。通っていた県内のほかの病院では、がんは「ない」とされていた。高知さんは2005年、乳がんで左乳房を切除。その後も定期的に検査を受け続けていたが、当時の病院ではPET検査はなく、再発や転移は見つかっていなかった。再発が分かってからは薬剤治療が効いて、今夏には、がんが骨の一部に残るだけまで縮小。「前の病院はPET検査をすすめてくれなかったが、思い切って独協医大を尋ねて訪ねてよかった」と話す。
がんと仲良く暮らしていくためには、早期からのがん治療と栄養管理が重要であり、それによってQOLの向上が期待できます。ぜひ患者さんにも医療従事者とコミュニケーションをとりながら、積極的に治療に参加していただきたいですね。また、癌研有明病院では日本一の胃がん症例数をてがけていますが、栄養を損なう前になるべく早く手術を行うことをモットーとしています。また紹介状のない患者さんに対しても、手術までの期間を3週間以内にすることを目標として、早期からのがん治療に取り組みたいと思います。日本においてもEPA・たんぱく質栄養強化食品(飲料)で筋肉の萎縮や「がん悪液質」を抑制するといったデータの構築が必要になります。またがん治療において、今後は一人一人の患者さんに合わせた適切な治療(テーラーメイド治療)を行えるよう、取り組んでいきたいですね。(朝日新聞)
がん治療は、「手術や抗がん剤などでがんを攻撃する治療」と「がんによる痛みなどの心身の苦痛を和らげる治療(がん緩和医療)」の大きく二つに分けられます。「がん緩和医療」というと、終末期医療と思われがちですが、精神的苦痛を含む様々な問題を、がんと分かったその日から取り除いていくということが、現在の「がん緩和医療」の考え方になっています。その一つの戦略として、栄養管理が重要になってきます。また、慢性炎症が進行することによって起こる「がん悪液質」では、心身の消耗によって日常生活の大部分を他に依存しなければならないなどの状態になります。そのような状態に陥ると、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛にのみならず、スピリチュアルペイン(生きることへの意味や目的の喪失などの人間の根源的な苦痛や苦悩)を伴います。そのため、慢性炎症を早くから抑え、「がん悪液質」の進行を制御することは、苦痛の緩和やQOLの向上において非常に重要な課題です。(朝日新聞)
体重の減少、主に全身の筋肉の萎縮がおこると、患者さんの体力が奪われ続けるとともに、生活の質(QOL)を維持することが難しくなります。同時に、抗がん剤などを分解する酵素の働きが弱くなって、抗がん剤の副作用が強く出たり、治療を続けられなくなったりします。また体重減少はがん患者さんの平均生存期間を短くしてしまうとの報告もあります。体重の減少を抑えて、筋肉をいじすることが重要ですが、慢性炎症が起こっている場合、運動だけで筋肉を維持することは困難です。運動以外で筋肉を維持するには、まず体の中で起こっているボヤが大火事になる前に、炎症をマイルドに抑えることが必要です。次に筋肉が壊されるのを防ぐこと、さらに筋肉を作る栄養素を補給することが必要になり、これらを行うことによって筋肉を維持することができます。(朝日新聞)
慢性炎症とは、火事でいう「ボヤ」のようなものが、体の中で絶え間なく起きている状態のことです。これは、がん細胞そのものから分泌される物質、また、がんに対する治療(抗がん剤など)そのものが火種となって起こっています。慢性炎症が起こると、ちょっとしたことで疲れやすくなる、気力がなくなるなどの症状が見られます。しかも同時にがん細胞から筋肉を壊してしまう物質が分泌されることによって、脂肪ではなく主にたんぱく質と糖が消費され、がん細胞は筋肉を壊してエネルギーを補うようになります。そのため、がん患者さんでは脂肪ではなく筋肉が減ることによって、体重が減少してしまいます。がん患者さんがやせ細り、元気がないように見えるのは、こういったことが原因になっているのです。(朝日新聞)
最近、ますますがん患者さんが増えてきていますね。現在、日本では男性の2人に1人、女性の3人に1人が、がんになっていることから、がんは最も身近な成人病といえます。がんになっても長生きをしている方はたくさんいるので、がんと仲良く暮らしていくために、がんによって引き起こされる障害を最小限に抑えることを考えていきたいですね。 がんによって起こる障害とはどんなものでしょうか。がんによって起こる障害には、器質的障害と機能的障害の二つがあります。器質的障害とは、がんが大きくなり、塊を作ったりして起こる障害(たとえば、がんが腸を塞いでしまうなど)のことをいいます。また機能的障害とは、がん細胞・組織から分泌される物質などにより、体内で慢性炎症、脳神経・内分泌・代謝・免疫異常を起こし、体が衰弱するだけでなく、精神的にも消耗してしまうことをいいます。これらの障害が進行すると、「がん悪液質」と呼ばれる状態に陥ります。私は腫瘍内科医・がん緩和医療内科医として「がん悪液質」の病態の解析と治療薬の研究を行っていますが、「がん悪液質」になることを予防する、あるいは抑えるためには、慢性炎症を日頃から抑えることが重要になると考えています。(朝日新聞)
がんを早期に見つける方法ですが、内視鏡でも胃がんの検査ができます。胃の中を直接見る方法ですが、小さな早期がんは熟練者でもほとんど分からない場合があり、万全とはいえません。一般的に約5%の見落としがあると言われています。毎年検査を受けていれば、命にかかわらない状況で見つけられると思います。人間ドックでも見つけられるし、行政の検診でも悪くない割合で発見しきるのに、胃がんは進行した状態で見つかる方が半数近い。早期発見に努めることが重要です。治療法も進んできました。(開腹や腹腔鏡)手術と内視鏡手術に分かれますが、手術はリンパ節もとる術式だという特徴があります。早期の粘膜のがんの場合、リンパ節転移は約3%。なので、早期ならば、慎重にリスクを検討できれば、切らずに内視鏡で治せる可能性があります。内視鏡では最近、胃の内側の壁を相当な広さで切り取れる術式、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)が広がりました。従来式の切除は2センチ程度までで、大きな初期のがんはぶつ切りでとらねばならず、一定の再発リスクが報告されています。5~6センチでもひとかたまりで切除できるESDは、再発の危険が減ります。(朝日新聞)
なぜ、がんになるのでしょう。遺伝子が傷ついて正常な細胞ができなくなり、がんが生まれるのです。遺伝子に傷がつくのは年齢が要因です。50~60歳の人口10万人あたりのがん患者は250人くらいですが、80歳を超えると千人以上。昔ならがんになる前に亡くなっていたのが、寿命が延びたため、といえます。ところで、死ぬのは誰でも怖いけど、避けられません。ただ、がんで死ぬのは、そう悪くない、と最近、思います。今春、父を骨髄のがんで亡くしました。その最期の生き様を見ていて、がんによる痛みさえ除ければ、頭がしっかりとしていることで、尊厳を保ったまま死を迎えられると信じています。ただ、がんになった半数の方は、根治して社会復帰しています。早期発見が、がんで死なないためには大事です。胃がんの場合、がんが粘膜にとどまっているものや、粘膜下層にとどまっているものが、早期がんです。(朝日新聞)
例えば、一番死亡の多い肺がん。CT(コンピュータ断層撮影)と胸部のX線撮影を見たら、CTの方が3~4倍の検出率であることが最近わかってきました。おなかの場合、都道府県の検診で、超音波はほとんど使われていません。しかしやはり、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓といったものは超音波で見ないとほかに見ようがないのです。絶対的にどれがいいという検診の手法はありません。PET(陽電子放射断層撮影)は「小さいがんまで全部わかる夢の検査法だ」と言われたのですが、必ずしもそうではなく、小さいものも「分かることがある」と理解していただいた方がいいでしょう。PETで全身を診ることで、検診の対象とならない腸や鼻の奥のがんなどが見つかることがあります。他方、CTで見つかる非常に早期の肺がんなどは写りません。ではどんな検診を受けたらいいかということですが、様々な検診がありますから、とりあえずまず受けてみるという姿勢が大切だと思います。(朝日新聞)
がんで年に34万人の人が亡くなっていますが、これは交通事故の約60年分にあたります。国民の3人に1人はがんで死亡しています。がんになっても助かる人もいますが、男性では大体、一生のうち2人に1人ががんになり、女性は3人に1人がなります。乳がんのように80%以上の方が5年以上生存されているがんもあれば、膵がんのように非常に予後の悪いものもある。様々ですが、どのがんも早期の方が治しやすい。検診で難しいのは、どの検診が「有効か」という点。自治体が検診を実施するとき、「有効である」ことが証明されていなければなりません。でも、有効であるためには、がんがただ見つかるだけではだめで、検診を受けた人が受けなかった人に比べ、がんによる死亡が少なくなることを証明する必要があります。例えば、大腸がんの検診で、便の鮮血反応は有効とされています。でもこれだけでは、進行がんの患者でも大体10%~15%は発見されず、見落とされるんです。それでも、鮮血反応は受診者全体の死亡率を下げるという論文があるので「有効」になっています。一方、内視鏡の方が精度は高いのに、そういう論文としての証拠がない。(朝日新聞)
まず、県民の皆さんとタウンミーティングをやり、関係施設の皆さんと直接の対話を繰り返しました。パチンコ業界の反対はすごかったですね。「たばこを吸いながら打たないと玉が出ない」という感情的な反発もありました。すし店などでは「たばこの煙で料理の味が損なわれたらかなわない。禁煙は賛成だ」という店も多かったのですが、居酒屋業界は猛反対でした。最後は議会。議員さんにも様々な立場がありますから、大激論に。最終的に、二つの修正条件を出されました。一つはパチンコ店やマージャン店など、風俗営業法の関連施設と、100平方m以下の飲食店は禁煙・分煙を「努力義務」にすること。パチンコ店を分煙のために改装するには警察の許可が必要で、何カ月も店を休まねばならない。カウンターしかない小さなバーを分煙にするには無理だという反発もあり、これは受け入れました。もう一つは罰則を盛り込まないという条件。でも健康増進法25条は受動喫煙の防止をうたっているのに、罰則がないから誰も真剣に守っていない。これは絶対譲れないということになりました。(神奈川県知事・松沢成文さん・朝日新聞)
神奈川県は3月、全国初となる受動喫煙防止条例を成立させました。がんや脳血管疾患、肺疾患などにも大きな影響を与える受動喫煙を防止するための新たなルールです。がん予防で、最も注目すべきたばこ対策。はばこを吸わない人にとって、隣の人に勝手にたばこを吸われるのは、迷惑を超えて危害です。欧米だけでなく、アジア各国も受動喫煙防止のルールを、大議論をしながら作っています。WHO(世界保健機関)のたばこ規制枠組み条約に従っているわけで、日本だけは大きく遅れています。国が進めなくてはいけない受動喫煙対策だが、進まない。私は2期目の選挙公約に公共施設の喫煙規制条例を作ると宣言し、当選。条例作りを始めましたが大変でした。規制を受ける施設、パチンコ店やレストラン、居酒屋業界にとって経営に影響する。「民間施設は完全禁煙か完全分煙に」という方針に対し、「不景気で客が減っているのに、たばこを吸う人が来なくなる。冗談じゃない」と大反対運動が始まったのです。(朝日新聞)
多くのがん患者さんに悩みを聞くと、半数近い方が不安などの心の問題を抱えているという報告があります。具体的には再発や転移の不安が代表的。悩みにどう対処するか、これまで私が話をうかがった患者さんが、いろいろな知恵をくださっています。患者会に参加、闘病記などを読んだりする、つらいときは思い切り泣いてみる。呼吸法など簡単なリラックス方を身に付ける、1日のなかに病気を忘れる時間を作る、といったことです。視点を変えて「同じような状況の人に、自分ならどう助言するか」を考えてみる、という方法もあります。人によって、それぞれに合ったやり方があります。また患者さんは、ご家族がこれまでと同様、そばにいると感じられるだけで心強く感じられるものです。ご家族の適度な気遣いは大切ですが、気遣うあまり腫れ物にさわるような接し方をすると、ご本人が孤独を感じてしまうこともあります。ある意味では「ふつう」に接することも大切です。病気をオープンに話されることで、より絆が深まることもあると思います。(朝日新聞)
がんと診断されると、患者さんは頭が真っ白になってしまったり、病気を認めたくなかったりするなど、強い気持ちの動きを経験します。1~2週間すると、これからどうなるのかといった不安や落ち込み、また食欲が落ちたり眠れなくなったりなどの症状が出やすくなります。でもこれらは、だでもが経験する心の動きです。多くは数週間くらい経つと「がんになっても元気に過ごしている人もたくさんいる」などと考えられるようになります。心のケアを必要とするがんの患者さんはどれくらいいるのでしょうか。代表的な米国の研究によれば、全体の47%ほどは何らかのケアが望まれる状態だったそうです。昨年ストレスに関する心理社会的要因とがんについてのこれまでの国内外の研究をまとめた結果が発表されました。がんのなりやすさ、死亡率の高さは、心理的な要因とかかわっている可能性はあるようですが、ストレスの影響はあったとしても、わずかだということが科学的に言えそうです。(朝日新聞)
これからの薬は、乳がんの中でも、標的である「HER2」という物質が出ているがん細胞にしか効きません。それが出ているかどうか、事前に調べる必要があります。次に、イレッサ(ゲフィチニブ)。肺がん細胞の上皮成長因子受容体(EGFR)という物質に作用します。この物質の遺伝子の特定の場所に、変化が起こることがわかりました。こうした変化は、実は日本人を含む東洋人に多いんです。また、肺がんの中でも腺がんというタイプや、たばこを吸わない肺がん患者の方に多いと言われます。そういった方に集まっていただいて、従来の化学療法とゲフィチニブのどちらがいいかを比較したら、遺伝子変化がある方でのみ、ゲフィチニブは大きな効果を示すことがわかりました。遺伝子変化がない方では、従来の化学療法の方がよかったのです。従来の抗がん剤はがん細胞を殺して、がんが縮小することを目標にしてきました。一方、分子標的薬は基本的に、「たとえ縮まなくても大きくならなければいい」という考え方で開発されています。(朝日新聞)
抗がん剤は髪の毛が抜ける、気持ちが悪くなるなどと、あまり良くないイメージをお持ちだと思います。でも最近「分子標的薬」という新しい薬物が登場し、がんの化学療法は変化してきました。従来の抗がん剤は天然界の植物やカビといったものから、がん細胞を殺す働きをする物質を探して薬にします。抗がん剤は分裂の早い細胞を攻撃します。そのため白血球や髪の毛といった、分裂が早い正常な細胞にも障害を与えて副作用が出ます。分子標的薬はがん細胞が生きていくのに必要な分子、いわば増殖の「信号」をブロックしようという考えです。白血球減少や脱毛などの症状は軽いですが、ニキビのような発疹、あかぎれのような皮疹といった、抗がん薬とは違う副作用が見られます。乳がんの治療に使われるハーセプチン(トラスツズマブ)という分子標的薬。従来の抗がん剤に上乗せすることで、術後4年の時点で従来なら33%の人が再発していたのを15%に抑え、乳がんの治療を大きく変えました。またトラスツズマブが効かなくなってしまっても、ラパチニブ(タイケルブ)という新しい分子標的薬や効くこともあります。このように次々と分子標的薬が登場しています。(朝日新聞)
新技術もご紹介します。一つは「4次元放射線治療」。たとえば呼吸をすると肺などの腫瘍は動いてしまって狙い撃ちがしにくいという問題がありましたが、新しい装置を開発して腫瘍を追いながら照射できるようにします。もう一つは、「個別化放射線治療」です。同じ腫瘍でも、場所によって増殖能力が特に高かったり、酸素の消費が低かったりします。低酸素の場所は、放射線が効きにくいことが知られていて、治療のハードルの一つと言われています。がんの診断に使われるPETを使うと、この領域をそれ以外の場所と区別することができます。そうしておいて、低酸素領域にIMRTの技術を使い、より高い線量の放射線を当てようというわけです。(朝日新聞)
進行した乳がんであるのを物ともせず闘っている人がいる。横浜に住んでいたころの友人で、同じ年頃の子を持つ母親でもある。彼女は手術や化学療法は一切せず、人間をまるごと診る「ホリスティック医学」を志し、頑張っている。自分のがんにも名前を付けている彼女は、心と体は繋がっているんだから、すべてものはプラスに!と言う。私の不安な気持ちはメールの文字でもちゃんと伝わるようで「たあ、検査の前は顔をぐっと上げて、空見る気持ちでね!毎回、私はそうしてました。祈ってる!私、祈ってるからね}。いつもエールを送ってくれる。おしゃれな彼女はクリスマスに向け、大好きなアンティーク雑貨屋で企画の手伝いをすることにしたと言う。「頭の中、がんのことばかりだったから、そうとう楽しくなってきた!私たちはみんな魔法を持っていると思う。それを信じるか、信じないか。引き出すか、引き出さないかは自分の中にあるような気がする」真夜中の3時間、異様な盛り上がりで電話を続け、最期は「宇宙の中の私たちの存在は・・・」みたいな話にまでなった。彼女は言う。「今感じているすべてが命。がんはありがたい自分へのプレゼントと私は思っている。新しい自分を発見することができたから・・・」「手遅れです。手術できません。一生、がんとともに生きることになります」そういわれた悪夢のような中から、明るい光のほうへ進んできた。余命なんて信じない。自分の体なんだから。どれだけ生きるかは自分で決める。私たちは奇跡を起こすんだからね!こんな話をしているときの"場のエネルギー"は、確実に上昇していると思う。自分でも感じることができる。自分のこと、この状況を、笑って話せるようになれたら楽になる。(西日本新聞・生きてる・・・西富貴子 より)
臨床研究コーディネーター(CRC)は患者の代弁者としての役割も担うので、山際さんは「治験についてどう思っているか、症状は出ていないか」など、患者から話してもらえるよう、いつも気をつかうという。治験に対して、「病院のモルモット(実験材料)」とイメージする人もいる。松山市内に住む乳がんの女性(44)もそうだった。だが、説明を聞いて誤解と思い、治験に参加した。2年半になる。CRCのことは「病院内の信頼できるパートナー」と表現し、こう言う。「治験で体に痛みやだるさが出たときや不安なとき、山際さんに話すとよく聞いてくれ、私の気持ちも分かってくださる。それが治験への安心につながり、心も癒されます」 山際さんは仕事のやりがいについて、「多くの人に役立つ薬が市場に出る過程に携わっていることと、そして、その中で患者さんに向き合えることです」と話している。(朝日新聞)
「臨床研究」とは、病気の予防法、診断法、治療法について、人を対象に研究をすることだ。その一つが臨床試験で、薬の安全性や有効性、副作用などを評価するためにデータを集める。特に、新薬や既存薬の新たな効用について厚生労働省から承認を得るための試験は「治験」と呼ばれる。臨床研究コーディネーター(CRC)は、それら臨床試験の開始から終了までスムーズに進むように、病院内の関連部署との調整や患者のサポートを担当する。日本では1998年に新設された。四国がんセンター治験・臨床試験管理室副主任の山際有美子さん(40)はCRCになって6年目。以前は薬剤師の業務をしていた。消化器内科と乳腺外科で、術後補助療法や進行・再発時に行う7種類の抗がん剤の治験を受け持つ。治験の参加には、新しい治療の選択肢が加わるというメリットだけでなく、未知の副作用出現というデメリットも考えられる。このため倫理的な配慮として、患者自身がその必要性を認めなければ断ることも、途中で参加をとりやめることもできる。(朝日新聞)
がん患者の利用が増えている鶴巻訪問看護ステーション(神奈川県秦野市)の和田洋子さんも「がんの痛みが強い人でも訪問介護などを利用すると自宅で暮らせる。自宅に帰ると力がわいて気分もよくなる人も多い」と指摘する。がん患者が在宅ケアを相談したい場合、主治医、あるいは病院の患者相談窓口や地域医療連携室などが応じてくれればいい。実際には、がん患者に対応する診療所や訪問看護ステーションを病院側が把握していない場合もある。角田さんも「相談窓口の充実が課題」という。地域によって差があるが、市区町村の地域包括支援センターや、がん診療連携拠点病院に置かれている相談支援センターが役立つ場合もあるという。(朝日新聞)
「介護保険は活用できるのに使いこなされていません。介護を手厚くすれば、家にいられるがん患者が多いのに」。日本訪問看護振興財団の事業部長でがん看護専門看護師の角田直枝さんはこう話す。普通の介護保険の利用者というと65歳以上の人だが、2006年4月からは「がん末期」と医師が診断した場合には40歳以上65歳未満の人でも利用できるようになった。介護保険と訪問看護を利用すれば、さまざまなケアが受けられ、自宅で安心して療養できる。しかしがん患者の具合は数日で急に悪くなることもある。先のBさんの例のように介護保険を申請しても市区町村の調査が間に合わず亡くなると、利用できない。急いで対応してくれる市区町村もあるが、必ずしもうまくいっていない。がん末期ちいっても、申請のじてんでは歩ける人もいる。介護の必要度が分かりにくい面もある。訪問介護の申請では、ぎりぎりの段階でがん患者のケアに入ることもしばしばだ。(朝日新聞)
さわやかな秋晴れの朝、東京都北区に住む60代の主婦Aさん宅を看護師の滝井望さん(37)が訪れた。Aさんは4年前、大腸がんの手術を受けた。その後、肝臓に転移が見つかり、病院に通って抗がん剤治療を受けている。副作用が苦しい。吐き気や下痢。食欲がわかない。自宅に帰ってからしばらくは体を動かせないほどだ。「調子はどうですか」「先週は悪かったけど、今週は普通に食べられます」滝井さんは体温や血圧、血糖値などをチェックし、おなかに聴診器を当て腸の状態を調べる。マッサージを受けながら、「手のぬくもりが気持ちいいです」とAさん。訪問看護は週1回。このほか、週2回ヘルパーさんが入浴や家事を助けてくれる。医師から「がん末期」と診断され、介護保険で要介護1と認定されている。Aさんはがん患者が介護保険を使えることも、訪問看護があることも知らなかった。通っている病院から勧められたこともない。ただ夫が病気で以前から介護保険を使っていた。夫を担当するケアマネージャーが介護保険を利用できると教えてくれ、訪問介護も紹介してくれた。(朝日新聞)
自分ががんだと知ったとき、それまでに築いてきたもの、これから描いていた未来がガラガラと音を立てて崩れていった。しかし、生きていくためには早く気持ちを立て直さなければならない。治療が始まると「よし、頑張るぞ」という気持ちにはなる。しかしながらマイナーな思いは幾度となく訪れた。昔から物事をあまりくよくよと考える性格ではないのだが、がんに関しては、それがあてはまらないようだった。ひとたび陥ってしまうとサーっと顔から血の気がひいていき、手足がガタガタと震えるのだった。ほんとうに闘うべきは、がんではなく自分自身の心なのかもしれない。そして音楽療法の篠崎智恵子先生にとうとう言ってしまった。「先生、自分の葬儀のプランを立てておこうと思うんですが・・・」。すると先生は「分かります!その気持ち。いいですね、私もやりたいくらい」 このような答えが返ってくるとは想像していなかったので、少し驚いたのと同時に、変かも知れないが何だかうれしくなった。「好きでもないBGMを流されたりしたら、たっまたものじゃないですしね」 そんな話になり、気がついたら笑っている自分がいた。先生は、暗い深みにはまったときの私の気持ちをも否定せず、理解してくださる。否定されないということ自体に救いがあった。ほのかな明かりの部屋で目を閉じて鳥のさえずりや波の音を聴いていると、いつも硬く緊張している体からスッと力が抜けてくるのが感じられる。瞑想することが、いかにがん患者の張り詰めた心を解き放つことか・・・。(西日本新聞・「生きてる・・・」西富貴子 より)
大浴場ではリラックスしていた参加者だが、入浴前の講演会では、少しでも情報を得ようと、国立病院機構長崎医療センターの前田茂人外科医長の話を真剣に聞いていた。承認されたばかりの治療薬の服用方法や効果、乳がんの手術をした人になりやすいリンパ浮腫を防ぐにはどうしたらいいか、。なかでも印象深かったのが「乳がんは5年で終わりじゃない」という言葉だった。術後の薬物療法の一つであるホルモン療法の目安は最低5年とされているが、近年では10年継続した方が効果があるとの報告も海外ではあるという。前田医師は「10年たっても、10%未満ですが再発する人はいるんです」とも語った。「乳がんに卒業はないんだねえ」。お風呂ではそんな会話も交わされ、しんみりとした雰囲気にみなった。しかし、すぐ別の話題になり、また笑い声ー。高齢の女性が私に耳打ちした。「明るいやろ?けどもんな抱える不安は相当なもの。くよくよしたってしょうがなか、って踏ん張とるんよ」。(西日本新聞)
湯船に体を滑り込ませた女性たちは「普段もこんな風に堂々と入れればいいのにね」と幸せそうにつぶやいた。参加者の半数以上は腫瘍と一緒に乳房を切除している。乳房の形をできるだけ残す温存療法を選択した人も、やはり傷跡がある。「私は大浴場ではいつも娘の影に隠れてますよ。お母さん、気にしすぎよ、って言われるけど、できなくてねえ」その言葉に周囲の女性たちはうなずいた。乳房がない、手術のあとがある、というコンプレックスが、温泉や銭湯ではどうしても人の視線を意識させる。普段は大浴場にいかない人も多いという。「気付かれないように深く湯につかった、のぼせたりね」。どっと笑いが起きた。同じ立場だからこそ、屈託なく笑いあえるのだろう。「ほっとマンマ・イン・嬉野」は、嬉野市と嬉野温泉旅館組合おかみの会(北川節子会長)が企画した。「マンマ」はラテン語で乳房を意味する。7年目の今回は福岡、佐賀、長崎各県から25人が参加、その7割はリピーターという。二つの大浴場が1時間貸切。今日だけは胸を隠すタオルは必要ない。風呂上り。脱衣所で、乳がん患者のための下着を見せてもらった。切除した乳房の代わりに、それに似た柔らかさや重みのある三角形のパッドを下着の中に装着せきるようになっていた。その女性は「年が経つと、本物の方が小さくなっちゃってね」と笑った。(西日本新聞)
国内初の生体肝移植は、1989年に島根医科大で胆道閉鎖症の1歳の男児に対して行われた。当初は、胆道閉鎖症などの子どものために、親が肝臓を提供するのがほとんどだった。その後、技術の向上や免疫抑制の開発などが進み、成人間の移植も広がった。1998年から保険適応にもなった。対象となる病気は、大人ではB型、C型肝炎ウイルスなどによる肝硬変、硬化性胆管炎などのうっ滞性肝硬変、劇症肝炎などが多い。がんも3割くらい占めると見られている。小児では、胆道閉鎖症などがある。提供者と血液型が合わなくても、免疫抑制剤や手術方法の開発により、いまでは血液型が合っている場合と同じ程度の生存率が得られるまでになった。生体肝移植全体では、患者の1年後の生存率は85%、5年後の生存率は75%と良好で、有効な治療法として確率されたといえる。今後は5年目以降の長期的な経過をよくすることが課題、と言われている。(朝日新聞)
京都基準は「PIVKAーⅡ」と呼ばれる、肝細胞がんで特異的に上昇する血液擬固因子の数値をみる腫瘍マーカーの検査値を盛り込んだ。がんの大きさは5センチ未満という点ではミラノ基準と同じだが、個数を10個以内と増やし、さらに「PIVKA-Ⅱ」が一定の値以下であることを条件にしている。京都基準を満たした場合の5年生存率は86%、再発率は5%だった。基準を作った2007年以降の36例でも再発は1例のみで成績は良好だ。画像診断技術の進歩で、ミラニ基準ができた当時は見えなかった小さながんまで見えるようになった。京都大の上本伸ニ教授は「がんの数は以前より多く診断されがち」と、大きさや数での規定は限界が出てきたとも指摘する。現在、京大以外の施設でも、独自の基準が開発されている。上本さんは「腫瘍マーカーで、悪性度の高いがんを除去することにつながる」と新基準の意義を話す。(朝日新聞)
ミラノ基準は1996年にがん患者への生体移植の適応基準として、イタリア・ミラノ大学の研究者が発表した。2004年からは日本の保険適用の基準として用いられている。脳死移植が主流の欧州で、限られた移植の機会を生かすため、再発の可能性が少ない症例に絞って適用すべきだ、という考えが基準の下地にある。もとになった海外の移植データは、4年後の生存率は75%。京都大学肝胆膵・移植外科は、1999年2月から2006年12月に実施した肝がんの生体移植136例を調べた。ミラノ基準を満たした74例の5年後の再発率が9%だったが、基準外の62例は33%と高かった。日本人でもミラノ基準は妥当だと裏付ける結果だが、海道さんらはさらに、基準外で再発した例と、再発しなかった例を分析。腫瘍の大きさや数だけでなく、悪性度が再発に関係していることを突き止めた。このことが京都基準づくりにつながった。(朝日新聞)
健康な家族から肝臓の一部を提供してもらう生体肝移植が日本で始まって20年になる。症例はすでに5千件を超え、移植を受ける対象も広がっているが、再発の恐れがある肝がん患者では、適応基準の見直しが進む。現状と課題を探った。1997年に日本で脳死による移植を認める法律が施行されてから脳死肝移植は63例にとどまる。日本は親子や夫婦などの間の生体肝移植が主流だ。いつ現れるか分からない脳死の例を待つのに比べ、計画的に手術を進めることができる。一方で、肝臓の摘出などによる合併症など提供者に危険が伴う。健康な人の体にメスを入れる倫理問題もある。順天堂大学静岡病院の市田隆文教授は「移植がうまくいかなかったときの提供者の精神的なショックへの対応も課題」という。(朝日新聞)
現在、国内の総医師・歯科医師数に占める女性医師の割合は5分の1ほどですが、年齢が下がるほど女性の割合は高まっており、24歳以下ではほぼ同数になっています。現在では、新しく医師になる方の4割が女性で、産婦人科のように新人医師の約7割が女性である診療科もあるほど。女性の医療人が男性と同等に力を発揮しなければ、将来の医療は成り立たないわけです。現在、九州大学では、文部科学省の医療人養成プログラムの一つとして、女性医療人が生涯現役で勤務継続可能な環境づくりを目指して「女性医療人きらめきプリジェクト」が展開されていますが、こうした活動を通じて、女性医療人が働きやすい環境を整備していくことが今後重要になると思われます。「センチネルリンパ節生検」の検査方法が確立されたことで、乳がんの治療はより低侵襲な方向に進化しています。また一人一人の症状に合わせて、手術だけでなく、放射線療法、薬物療法などを併用する治療法を進んでいます。多くの女性に乳がんの早期発見の重要性について理解していただければと思います。(朝日新聞)
女性医師が増えれば、乳がん検診の受診率が高まるわけですね。乳がんばかりでなく、その他の女性特有の疾患に関しても、受診率と早期発見率が高まるでしょうね。乳がん検診で、がん以外の乳腺疾患が発見されるケースも少なくないのですから。女性医師が診療現場に定着することで、マンパワーに起因する医療事故等の防止も期待できると思われます。(財)日本医療機能評価機関では、病院の第三者評価、衣料事故やヒヤリ・ハット(事例)の収集を行っていますが、医療事故の原因としてマンパワーの問題は無視できませんので、出産・育児等でいったん離職した女性医師が安心感を持って復帰できる環境を整えることが重要といえます。必要な支援の中には育児や介護の支援もありますが,紛争リスクが高いといわれる診療科にも医師が定着するように、例えば今年1月に開始した「産科医療補償制度」のように、補償と原因分析、再発防止を組み合わせた制度の整備も必要と考えています。(朝日新聞)
乳がん検診の受診率が高まらない要因は? 乳がんに対する正しい認識が、まだまだ一般の方々に浸透していないことが最大の原因だといえます。乳房のしこりなどの異常を感じたら、マンモグラフィや乳腺超音波で詳しい検査を行い、その結果、がんが疑われるようであれば組織生検など精密検査を行うのですが、最初の「何らかの以上を感じる」というきっかけが早ければ早いほど、早期発見・早期治療に結びつくのです。定期的な自己触診を、より多くの女性に心がけていただきたいものです。男性の医師に乳房を診られたり触られることに抵抗がある方も少なくないようですが、最近は女性医師が検査を行う医療施設も増えていて、特に福岡県の乳腺外科では、専門医のおおよそ3分の1が女性です。同姓ですから、どんな風に違和感を感じるのかといった感覚的な部分まで理解しやすく、心理的な抵抗感も少ないはず。乳がん検診は女性医師に頼みたいという方は、最寄の入選外科に問い合わせてみてください。(朝日新聞)
マンモグラフィ検査はどこで受けられるのですか?都道府県が医療法に基づく医療機能情報公表制度としてWeb上で医療機関を紹介しているサイトから、「乳腺」の診療をしている最寄の医療機関を探すか、「ピンクリボン(NPO法人乳房健康研究会)」のホームページから乳がん検診が受けられる施設を探せます。また、(財)日本医療機能評価機構では「Minds(マインズ)」という事業の中で、色々な病気の診療ガイドラインを公表しており、乳がんの予防や検診、治療に関する情報も掲載されています。(朝日新聞)
乳がんが増加しているそうですが、近年の傾向は?数年前に大腸がんを追い抜き、女性に最も多いがんになっています。これに伴って乳がんによる死亡者数も増加しており、現在は年間1万人以上が死に至っています。毎年約4万人の女性が乳がんと診断されていますから、日本女性のおおよそ20人に1人が乳がんになる可能性があるということです。年齢別に見ると、30歳代から増え始め40歳代後半~50歳代がピークですが、若い女性や60歳以上の女性が罹ることも少なくありません。「女性なら誰もがなり得るがん」と言えるでしょう。食生活の変化や女性の社会進出などライフスタイルの変化が、乳がんの増加原因と見られています。他にも閉経後の肥満、喫煙などでリスクが高まることが分かっていますが、効果的な予防法は見つかっていません。ただ、他の部位のがんと違い、自分自身でチェックすることが可能な「見えるがん」ですから、自己触診や「マンモグラフィ」というX線撮影検査の定期受診で早期発見することが大切です。(朝日新聞)
しかし私たちの意識の中から死は遠ざけられており、あってはならないもの、今の自分には関係ないもの、とされている。こうやって自分の身にさし迫ってくると、動揺し、身動きが取れなくなってしまう。一歩先の人生など、何が起こるか誰にも分からないというのに。緩和ケアにも力を入れる宮崎市の外科医で、20年来の友人でもある藤木啓医師は、再発して自分ではどうしようもないほど取り乱していた私にこう言われた。「今日、再発を聞かされて、昨日までのあなたと何か違ってる?再発は昨日も、そして1カ月前からもあった。でもあなたは毎日変わりなく過ごしていたでしょ?明日もいつもと変わらない1日がくるよ」。何だか肩からスーっと力が抜ける気がした。ずっと見失っていた自分を取り戻すことができそうな気がしてきたのだった。(西富貴子・西日本新聞・「生きてる・・・」より)
2005年7月。38歳にして私は乳がんの告知を受けた。2人に1人ががんになるといわれる現在、がんは珍しい病気ではない。でも診断されるまで、まさか私ががんになるなどとは考えたこともなかった。もしなるとしても、もっとずっと年をとってからだろう、という漠然とした、それでいて本当にそう思っている自分がいた。しかし現実は、今から思えばなんてあいまいなともいえるそんな考えをいとも簡単に裏切った。そしてあらためて、誰もが年齢を問わずがんになる可能性があることを認識させられた。そもそも、この自分の体に対して妙な自信のようなものを持っていたのはなぜだろうか、と考えてみた。そしてやはり「死」というものがずっと遠くにあると思っていたからだ。もちろん命は有限であり、生まれてその時から、死に向かって歩いているようなものだ。けれども、がんになる以前、私は死を意識した生き方をしていただろうか。淡々と過ぎる毎日を、ただ忙しく過ごしていたのではないか。限りある人生の1日1日を生きているのだと実感し、今日を・・・"今"を生きているということに喜びと感謝の気持ちを持っていただろうか。・・・続く・・・ 「生きてる・・・」西富貴子 より (西日本新聞)
早期発見は、乳がんから身を守るうえでとても大切なこと。早期発見のための検診には、検診機関で受ける「マンモグラフィー」「超音波検査」「視触診」のほか、みずから乳房をチェックする「自己検診」がある。自己検診は、生理が始まって1週間後、閉経後の人は毎月、日を決めて行うのが理想的。しこりなど気になることがあったら乳腺外科、乳腺科などに相談を。 両腕を下げたときの、左右の乳房や乳首の形を覚えておく。両腕を上げて、正面、側面、斜めを鏡に映しながら①乳房にくぼみやひきつれたところがないか ②乳首のへこみや湿疹のようならだれがないか、チェックする。 あおむけに寝て右の乳房のしこりを調べる。右肩の下に薄い枕を敷いて乳房が胸の上に広がるようにしたら、右腕を上げて頭の下に入れる。次に、左手の指の腹で内側から外側に向かって乳房を圧迫しながらまんべんなく触れる。右腕を下ろし、左手の指の腹で外側から内側に向かって乳房を圧迫しながらまんべんなく触れる。 右の胸が終わったら、左の乳房も同じ要領でチェックする。左右の乳首を軽くつまみ、血のような異常な液がでないか調べる。(朝日新聞)
ピンクリボン運動がスタートしたのは1980年代。当時、8人に1人が乳がんをわずらうと言われたアメリカで、乳がんの早期発見、早期治療の大切さを伝える運動として広まった。乳がんは早い段階で発見できれば90%を超える高い確率で治癒すると言われている。そこで行政、市民団体、企業などが一丸となって乳がん検診を呼びかけた結果、アメリカでは乳がんへの意識が高まり、死亡率の低下につながった。アメリカでの活動を受けて、いまでは世界各国でピンクリボン運動が盛り上がりをみせている。日本では2000年ごろからピンクリボン運動が始まったが、残念ながらいまだに検診率が高いとは言えない。毎年新たに乳がんと診断される女性は約4万人、そして、毎年1万人以上が乳がんで亡くなっている。現在、日本人女性の20人に1人が乳がんにかかると言われている。女性ホルモンの乱れ、少子化、高齢出産の増加など、乳がんを引き起こしやすい環境にさらされている現代の女性たち。「わたしはきっと大丈夫」、そう思って検診をおろそかにするのではなく、自分の問題として考えていきたい。(朝日新聞)
昨年11月に看護師、友人の患者と3人で始めた実行委員会は、職場や家庭などで共感を広げ、現在63人にまでなった。患者だけでなく家族、同僚、遺族らも加わった。博喜さんはいつ体調が暗転するかわからない妻を案じ、副委員長を買って出た。両日は、医師、看護師に常駐してもらうほか、救急態勢を持つ病院とも連携、食事の心配もしないですむようにさまざまな出店も手配した。その売上金の一部は、患者支援にあてる。趣旨に賛同した人たちによる踊りや詩の朗読などでステージはにぎあう。これまでに各地で行われたリレー・フォー・ライフでは、主催者さえ把握していなかった人たちが当日大勢参加しているという。「1人で参加されても大丈夫。孤独な思いはさせません。自分のペースで歩いて」と宮部さん。問い合わせは宮部さん(080-3998-6500)へ。 (朝日新聞)
がん患者や支援者たちが24時間たすきをつないで歩き、境遇を語り、励まし合うイベント「リレー・フォー・ライフ」が3、4日に、福岡市東区海の中道海浜公園・光と風の広場(1周400m)である。すでに320人以上が参加を申し込んでいるが、患者で実行委員長の宮部治恵さん(41)=同市東区三苫1丁目=は「誘える仲間がいなくても、個人で参加する人同士でたすきを渡せます」と、当日の個人参加も大歓迎するという。リレー・フォー・ライフは1985年、米国の医師が、がん患者の支援金を集める目的で始めた。日本では2006年の茨城県つくば市の開催が初で、九州では昨年の大分に次いで2カ所目となる。9月27日には最後の実行委員会を開き、50人ほどの出席者が「参加者全員と話をしたいな」「笑ろうていくばい」などと当日に向けての決意表明をした。宮部さんのがんは子宮頚部に始まり、甲状腺、大腸と転移したが、2006年9月につくば市でのリレー・フォー・ライフに参加し、生きることに前向きになれた。その前月に知り合った福岡市出身の博喜さん(41)にもがんを告白、結婚して神奈川から福岡市に移り住んだ。・・・続く・・・ (朝日新聞)
「地域における疾病の調査や当院の治療の妥当性などについて、院内の第三者が科学的根拠をもとにチェックでき、結果として精度の高い記録として集積することもできます。これは病院の財産になります」と小島靖彦病院長は言う。情報登録は患者の退院後から始まる。稲垣さんが「診療記録の監視役」として、医療従事者に丁寧な記入を求めても、1日の入院患者数が560人にものぼることから、多忙な現場で理解を得るのは難しかった。そこで、稲垣さんは患者の治療方針などを決めるカンファレンス(会議)に積極的に出席して勉強するとともに、院内のコミュニケーションもはかった。「3年後のいまでは、『患者さんの生涯の病気記録』と、院内で認識されるようになり、記載が充実してきました」。稲垣さんは女性でも長く働ける仕事に就きたいと医療事務の資格をとり病院に就職した。働きながら13年目に通信教育で診療情報管理士の資格を取得。現在の病院ではその働きぶりが認められ、4年目に非常勤から常勤の正職員に採用された。「カルテを見るときは、自分が患者だったら大切な記録として納得できるかどうか、いつも念頭においています」。(朝日新聞)
かつて、診療時のカルテは医師の備忘録として用いられ、治療が終われば束ねて保管されるだけだった。、近年、カルテ開示が始まったことから診療録が見直され、さらに、電子カルテの導入に伴い、病院の診療情報(カルテ、薬の処方箋、検査数値など)はデータベース化されている。この日々の診療記録を点検して、記入漏れや誤記を各担当者に訂正してもらいながら完成させ、必要に応じていつでも使えるように管理しているのが診療情報管理士だ。国立病院機構金沢医療センター医療情報管理室に勤める稲垣時子さん(45)は、おもに、がんと循環器病(脳卒中・心筋梗塞)の登録を担当する。例えば、がんの場合、患者ごとに診断・初回治療・予後など49項目の情報を打ち込む。集積されると、年間の部位別・年齢別・男女別の罹患率・来院経路別(他の病院の紹介・がん検診・健康診断など)・治療前の進行度・手術症例の5年生存率などが出来上がる。このとき、情報は患者個人が特定できないよう、原簿から切り離される。・・・続く・・・ (朝日新聞)
「子宮頸がん検診は、確実に実施すれば死亡率を大幅に減らせる」と、東京の国立がんセンター診療支援情報室の濱島ちさと室長は強調する。名古屋大などの研究グループの報告(2006年)によると、国内45市町村で1988年~2003年の間、受診者と未受診者、計約6万人の子宮頸がんによる死亡率を比較した結果、受診者の死亡率は、未受診者より7割も少なかった。受診の継続も大切だ。濱島室長によると、検診の効果は3~5年に一度、受診する人で認められる。国は2年に一度の受診を推奨している。適切な検体の作成が、検診の成功には欠かせない。だが、細胞の採取法が、検査の精度にかかわることが問題視されている。・・・続く・・・ (朝日新聞)
子宮頸がんは、膣の奥にある子宮の入り口で起こる。子宮の入り口付近を、医師が専用のブラシなどでこすって細胞を採取。細胞を薬品で処理した液体を検査士が顕微鏡で観察し、がんになりかかっている異形成の細胞の有無を点検する方法だ。正常な細胞ががん細胞になる際、細胞の形が変わったり細胞核の数が変わるなど、段階を経て変化する。この途中の段階を異形成といい、軽度、中等度、高度に分類される。軽度と中等度は8割以上が正常に戻るとされ、経過観察となる。高度なら、がんに進行する恐れが高いので子宮の入り口の一部を切除する円錐切除術をするのが一般的だ。日本婦人科腫瘍学会の子宮頸がん治療ガイドライン作成に副委員長として加わった八重樫信生・東北大教授は「円錐切除の場合、術後半年も経てば性生活を再開できるし、妊娠・出産にも支障はない。ただ病状が進むと、そうとも限らない」という。円錐切除ができるのは現在、子宮の上皮で生まれたがん細胞が、内部に浸潤し始めるごく最初の時期までだ。それでも、がんを見落として切り残す恐れがある。基本的に浸潤がんに進行した場合、子宮を全摘出することになる。(朝日新聞)
子宮頸がんの検診は、きちんと受け続ければ高い効果が期待できるが、全国の受診率は2割程度と低い現状だ。受診する人を増やそうと、検診を無料化する国のクーポンの配布が市区町村を通して本格化している。宮城県冨谷町の主婦、高橋真由美さん(42)は、11歳を頭に3人の子育てに追われる毎日だ。「検診を受けなかったら、三男には恵まれなかったかも」と振り返る。3年前、子宮頸がん検診を組み込んだ人間ドックを受診。40代を前に「そろそろ健康を気遣おう」と思ったから。健康診断のたぐいを受けるのは10年以上ぶりで、体調はどこも悪くなかった。ところが後日、子宮に高度異形成という前がん状態があることがわかった。3カ月後、高橋さんは東北大病院で手術を受け、子宮の入り口の一部を切り取った。手術の時間は30分ほどで術後の痛みもほぼなく、退院後の生活も今まで通り。昨年末には第三子も生まれた。・・・続く・・・ (朝日新聞)
9月は「がん征圧月間」。全国大会は乳がん手術の先駆者である華岡青洲ゆかりの地、和歌山市で開催し、千人を超える参加者と和歌山県知事、和歌山市長、厚生労働省、医療関係者、協会のほほえみ大使アグネス・チャンさんらが、がん征圧を誓いあいました。10月は「乳がん月間」です。朝日新聞社などと共催でピンクリボンフェスティバルを東京都、神戸市、仙台市で開催。乳がんを正しく理解するシンポジウムと広く検診をアピールするスマイルウオークを実施します。11月は今年から「子宮頸がん月間」と位置づけました。首都圏でリボン運動を展開する学生たちの集まり「結」(YUI)が、若い女性に子宮頸がんが急増していることに気付き、小冊子やウエブを通じて啓発します。政権交代。民主党のマニュフェストには「がん検診受診率を引き上げる」「子宮頸がんワクチンの任意接種を促進する」「化学療法、放射線治療専門医を養成する」など、具体的施策がうたわれました。がん対策の一層の前進を期待します。(日本対がん協会から。朝日新聞)
子宮頸がんと乳がんの検診が無料になるクーポン券の配布が本格化している。国費でまかなうクーポン券を各市町村が作成し、対象者に送る方式だ。クーポン券事業は国の5月の補正予算で初めて盛り込まれ、216億円を計上した。子宮頸がん征圧を目指す専門家会議(議長・野田起一朗・近畿大前学長)が8月に行った市町村担当者のアンケートでは、9月末までに約7割の市町村が終える。クーポン券の配布対象は、子宮頸がんで2008年度に20,25,30,35,40歳になった人。乳がんは40,45,50,55,60歳。対象年齢なら、今年度に市区町村の行う検診の対象者でない人も含めて全員、国費で受診できる。今年度限りの事業だが、厚生労働省は継続する方針。(朝日新聞)
2年の研修期間も残りわずかの2008年2月、首に違和感があり、軽い気持ちで診察を受けた。「悪性リンパ腫だよ」。知人の担当医に告げられた。何でおれが?うそだろう?放置すれば余命は半年。説明されなくても、医師の卵だからわかった。「死」が現実味を帯びた。同時に母の顔が浮かんだ。「もっと生きたかっただろうな。人生これからだったのに」。自分は残された時間で何をしたいのか。病室で懸命に考えた。答えはすぐ出た。太陽が昇る前に出勤し、お産や手術に立会い、元気な母親や赤ちゃんの顔に接し、夜遅くに帰る。「休みたい」と思っていた日常が何よりの幸せだと気付いた。もう一度、白衣を着て病院に戻りたい。骨髄移植を受ければ、助かる望みがあった。骨髄バンクに登録して1カ月後、提供してくれるドナーが見つかった。静岡県の30代の男性とだけ聞いた。移植手術は2008年8月13日。美知子さんの三回忌の前日だった。「死んだら終わり。生きなさい」と、母に言われたような気がした。放射線治療の副作用にも、術後のリハビリにも耐え、11月に復帰した。(朝日新聞)
新しい命が生まれた。福岡新水巻病院(福岡県水巻町)の周産期センター。産声をあげる赤ちゃんを抱く母親に、産科医の倉員正光さん(31)は言葉をかける。「おめでとうございます」。いつも声が震えてしまう。母を亡くし、自分も命を失いかけた記憶が重なるからかもしれない。母美知子さんは2006年8月14日、肺がんで亡くなった。産婦人科の長女として生まれ、皮膚科医の父と結婚。3年間の闘病の末の51年の生涯だった。一人息子の倉員さんは幼い頃から、医師を目指すよう母に言われた。友人関係にまで口を出されることを、疎ましく思った時期もある。2006年春に医師国家試験に合格し、福岡市の総合病院などで研修医の生活が始まった。「これからがスタートだね」。病床の美知子さんは、そっけなかった。見舞っても「早う病院に帰りなさい」。知人に電話し、「正光も医者になったよ」とうれしそうに話していたと知ったのは、亡くなった後だ。もっと早く母の愛情に気がつけばよかった。母を亡くした日常は色あせ、つまらなかった。「お母さんがあっての、子どもなんだ」。母子の命を助ける、産科医の道を志した。<続く> (朝日新聞)
国立がんセンター東病院臨床開発センター(千葉県)の内冨庸介・精神腫瘍学開発部長に、患者としてどう望めばいいか聞いた。 東病院では、がんの告知後の患者の心のケアに当たっている。外来患者530人に、患者が望む医師とのコミュニケーションを調査した。その中で「自分が質問できるよう(医師の方から)促してほしい」という回答が全体の7割を超えた。治療方針を決める大事な段階で患者の気持ちを聞けていない。このため、患者が話しやすい雰囲気でがん告知するための手法「SHARE」(シェア)を開発した。逆に患者は、告知に望む際に質問を整理しておいた方がいい。病態や治療内容のほかにも、暮らしや仕事への影響も知りたいだろう。乳がん患者は20~50代で、普通のがん患者よりも若い年代がかかるので、そうした心配が強い。各地のがん拠点病院には患者や家族の相談支援センターがあり、ソーシャルワーカーや看護師がいる。そこに立ち寄って心配や不安を語ってほしい。告知後も人の心は揺れ動くし心配事も変わる。その都度、医師や看護師に伝えることが大切だ。(朝日新聞)
NPO法人日本ネイリスト協会が、フェスティバルと連携して主催するチャリティー企画。大地真央さん、ベッキーさんらによるネイルデザインを、トップネイリストが作品化、10月1日~4日、表参道ヒルズで展示。作品は、同1~7日に「Yahoo!チャリティオークション」に出品、収益金は日本対がん協会「乳がんをなくす ほほえみ基金」に全額寄付。問合せ先:NPO法人日本ネイリスト協会事務局(03-3500-1580) *各イベントの詳細は、ピンクリボンフェスティバル公式サイトまで。電話0120-711-951)
《手術から約1カ月後、放射線治療、抗ホルモン剤による治療が始まった》 アグネス:手術は治療のほんの入り口なんですね。次の放射線治療が大変でした。5分程度の放射線治療のために毎日病院に通いました。次の仕事に間に合わせるために、新幹線に走って乗り込んだことも。その次の抗ホルモン剤の治療も大変でした。副作用からか、たまに顔が3倍くらい腫れることがあるんです。一度、コンサート直前にそれが起きて、化粧でごまかして舞台に上がりました。でもいつもと違う顔だから、最初は客席も引きました。でも歌い出したら顔のことは忘れてしまったみたい。自分が気にするほど周りは気にしないということに気付きました。 矢形:こういう話を聞くたびに、皆さん、知らないところでかなり苦労していると感じます。僕らが外来で患者さんと会うと、それまでの数カ月間の出来事について「いかがでしたか」「どうでしたか」という聞き方になりがち。薬の副作用が出た、という出来事までは聞けるけど、心の中のことまで聞くには、30分はかかってしまう。<続く> (朝日新聞)
《アグネスさんが胸の小さなしこりに気付いたのは、2007年9月だった》 アグネス:かかりつけの産婦人科医にかかったら聖路加国際病院を紹介されました。そのとき初めて矢形先生とお会いしたんです。 矢形:その日1日だけで、乳房X線撮影(マンモグラフィー)や組織の一部を取り出して検査する針生検のマンモトームなど、必要な検査は全部やりました。 《検査から約1週間後、早期の乳がんと分かった》 矢形:がんだと伝えるときは、いきなり「乳がんでした」とは言わない。本人や家族が心の準備ができるよう「思わしくない結果でした」と、必ずワンクッション置いて話をするようにしています。それでも固まって動けなくなる人もいるし、泣き出す人もいる。話す間に涙が止まらなくなる人もいる。 アグネス:私の場合、結果は夫が電話で聞いてくれました。それから病院に向かう途中、悔しいのか何なのかわからないけれど泣きましたね。何で私が乳がんなんだろうって。子どもも生んだし、乳がんにかかった家族もいないのに。そしたら夫に「先生の話も聞いていないのに何泣いているんだ。寿命がくれば人は死ぬ。来なければ死なないんです」と怒られました。泣きながら噴出しました。かえって納得したんです。泣いても意味がない、と。(朝日新聞)
◆がんと共に歩く「たんぽぽの会」 9月12日午後2時 福岡市城南区七隈の福岡大学文系センター15階。がんになった人や家族が病気や治療の疑問を医師に尋ねたり悩みを話しあったりする。抗がん剤についての講義も。100円。村上華林堂病院の柴田隆夫さん。092-811-3331 ◆リンパ浮腫ケア講習会 9月13日午前11時~午後4時 北九州市八幡西区黒埼3丁目の北九州市立子どもの館。2000円。申込みは住所、氏名、連絡先、浮腫の部位を明記して九州・山口リンパ浮腫医療従事者の会の生田志保さん 090-9589-3698 ◆長崎県がん診療拠点病院公開講座「がんについてよく考えよう」 9月26日午後1時半、長崎市茂里町のncc&スタジオ。講演=大腸がんの診断と治療(長崎大学病院光学医療診療部講師・磯本一氏、同腫瘍外科准教授・澤井照光氏)、特別講演=がんと向き合って(ジャーナリスト・鳥越俊太郎氏)。無料(抽選で500人) 申込みは往復はがきに住所、氏名、年齢、電話、参加人数(2人まで)、がんについての質問を書き、9日必着で。〒852-8501(住所不要)長崎大学病院がん診療センター 電話095-819-7779 (西日本新聞)
夏が過ぎていく・・・。夏の終わりはいつも物悲しい思いになる。夕立に濡れたアスファルトのにおい、朝顔、風鈴、蝉時雨・・・。幼い頃の思い出が懐かしくよみがえってくる。今年の夏は夏らしい日が少なく、加えて新型インフルエンザ、総選挙とともに慌しく過ぎてしまった。それにしても、マニフェスト(政権公約)でがん対策を前面に打ち出す政党は見当たらず、暗い気持ちになった。私と同じく乳がんを患った横浜の友人が、夏休みに家族でカナダに行ったとメールをくれた。「お世話になったのが乳がんの経験のある方で、カナダではがんの治療費は全額かからないんだって!」 あらためて、この国と他国とのがんに対する認識と、闘うための医療・福祉政策の違いを考えさせられる思いだった。ドラッグラグも患者にとっては大きな問題だ。海外で新薬が発売されてから日本で発売されるまでの時間差は平均4年ほどと言われている。効くかも知れない薬が使えない。がん患者には時間がないのに・・・。高額な医療費に加え、使いたい薬は使えない。これでは八方ふさがりだ。私が処方されているハーセプチンも、今では再発抑制のための術後化学療法として使えるが、以前は再発してからの治療薬だった。再発を抑制するのに高い効果があるといわれていたにもかかわらず・・・。(略) どんな治療が効くかは誰にもわからない。あきらめてはいけない。完治しなくてもいい。少しでもQOL(生命・生活の質)が向上し、要は普通に生活できる状態が続いてくれればいいのだ。がんを暴れさせることなく、共存する。そうできれば、と思う。(西富貴子・西日本新聞"生きてる"より)
乳がんで両胸を全摘してから2年半になります。今は3カ月おきの胸部エックス線と採血による血液分析、それに6カ月おきの甲状腺がんのエコー検査を続けています。同病の友と「この病気は退院してからが本番ね!10年無事だったら完治と言えるのかな」と話します。術後、勧められて、あるところにお参りに行き始めました。お参りしていれば、一抹の不安から、再発から逃れられるかもしれないとの安易な思いからでした。本来信仰心が薄いせいか、徐々に気持ちが不自由になり、窮屈な思いにとらわれていきました。いろいろあり、悩んだ末にお参りにいくことをやめました。この経験も自分にためには良かったと思います。以来、日々つながっている命と周りでささえてくださる人々に恵まれ、感謝して、仕事もしながら楽しく暮らせています。この喜びが体の免疫力を高めてくれると信じて、気持ちを病まないように、心の置き場は楽に楽に、と思っています。(福岡県 大城由紀子さん 61歳) 西日本新聞
私たち人間がウイルスに感染した際に、自ら作り出すたんぱく質の一つがインターフェロンです。免疫力を高めたり、腫瘍が大きくなるのを抑えたりする作用を持っています。インターフェロンは1954年に日本人が発見した物質です。この素晴らしい作用を人類の幸福に役立てるために多くの試みがなされ、現在では肝炎の一般的な治療薬として使われるようになりました。2008年4月からは医療費が助成されるようになり、患者の負担する費用がかなり軽くなりました。しかし、インターフェロン治療で肝炎が治る確率が高いことを理解していても、この治療を断る方がいます。その理由を私たちがある地域で調査したところ、一番多かったのは「副作用がこわい」という答えでした。副作用のあらわれ方は個人差がありますが、まず悪寒、発熱、倦怠感など風邪に似た症状があらわれます。しばらくすると、皮膚のかゆみや粘膜のただれ、不眠やうつ症状があらわれる方もいます。2~3カ月目に抜け毛が増えてきます。ただし、抗がん剤と違って、髪の毛がすべて抜けてしまことはありません。(朝日新聞)
「胃がんは感染症です。除菌と検診で大幅に減らすことができます」 毎年、約5万人が胃がんで死ぬ。でもにこやかにこう断言されると、がん征圧の希望が見えてくる。胃の粘膜にすみついて胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍をおこす細菌、ヘリコバクター・ピロリの研究で日本を代表する1人だ。北海道大病院長として新型インフルエンザ対策など多忙な中、研究の第一線に立つ。この細菌にとりつかれたのは1987年。シカゴの学会で米国の友人がこの細菌の最新検査法を発表。講演が絶賛されるのを目の当たりにし、「日本でも調べよう」と、感染状況や病気との関連を調査した。中高年層では約8割もの人が感染していることなど、実態を明らかにした。それでも、胃がんや潰瘍との関係に疑問を持つ医師は多かった。潰瘍の原因はストレスと言われていた。そんな逆風の当時、忘れられない男性患者がいる。7年前、十二指腸潰瘍の再発を繰り返して苦しんでいた。遠くの村から2時間かけて治療に通っていた。ピロリ菌を薬で除菌したらぴたりと治った。では除菌をすれば胃がんを防げるもカ。全国の仲間に呼びかけて研究の検討を始めたのが2000年。胃がんの内視鏡治療を受けた患者が除菌した場合と除菌しない場合を比べ、除菌をすれば胃がんの発生が3分の1になると、昨年発表した。「続けてきてよかった。ピロリ菌でこんなに成果が出るとは思っていませんでした」 (朝日新聞)
日常生活や看病で感染しますか?⇒基本的には日常生活や看病では感染しませんが、かみそりや歯ブラシは共用しないようにしてください。 母子感染はありますか?⇒ありますが、比較的まれです。子どもでは感染しても自然に治る例もあります。厚労省の研究班報告によると母子感染は約10%ですが、最終的に子どもがキャリアになる可能性は5~6%です。 医療行為での感染か?⇒血液を扱う行為での感染で可能性はゼロではありませんが、ほとんどないと思ってください。現在の新規感染者の大半は、覚せい剤の回し打ちや不潔な器具を用いた行為、例えば、入れ墨、はり治療、ピアスなどによるものです。現在では新たなC型肝炎ウイルス感染はまれとなり、年間10万人当たり2~3人と推定されています。(西日本新聞)
インテーフェロン治療を過去2回受け、治療中は陰性になりますが、終えるとすぐ陽性になります。肝機能は正常ですが、再治療が必要でしょうか?⇒再治療でウイルスを排除できるかの予測には、過去の治療内容と経過の把握が重要になります。また、一見、肝機能は正常でも実は病変が進行している場合もあります。これらの点を総合的に検討する必要があります。 インターフェロン治療でウイルスは消えましたが、肝硬変に近い状態で発がんが心配です。⇒私どもの病院では肝硬変でインターフェロンで完治した例から10年後約25%が発がんしています。完治しても定期的な検査は欠かさず受けてください。 肝機能は正常ですが、今治療を受けた方がいいのでしょうか?⇒若いうちに治療したほうが良い治療成績が期待できますので、今、治療するのも一案です。また、数年後に発売される予定の新薬は副作用が強いものの治療期間は短くなる可能性がありますので、それを待つという選択もあります。(西日本新聞)
過去2回、インターフェロン単独治療を受けており、再治療を勧められています。効果予測はできましか?⇒併用療法の著効の確率は年齢や過去のインターフェロンの治療反応性などによって予測できますが、患者さんにとっては治るか治らないかですから、正確に予測することは難しいです。治療を始めれば1、2カ月でウイルスの減り方が分かりますから、それからならば著効の確率がある程度予測がつきます。悩まれているのであれば、まずは治療してみることをお勧めします。 インターフェロン治療を受けて陰性となった後、数年後に再陽性となることはあるのでしょうか?⇒まれです。さらに最近2年くらいの治療であればウイルス検査の感度も向上していますので、治療後6カ月以降に再陽性になることはないと思います。(西日本新聞)
肝炎検査は一生に1回でいいのはどうしてですか?⇒C型肝炎は大きな手術を受けたりした場合の輸血や血液製剤による感染がほとんどですから、一度検査を受けてキャリアでなければこれから新たに感染する可能性は低いのです。 陰性になったら進行しないと考えていいのでしょうか?⇒ウイルスがいなくなれば進行はしません。ただ、肝炎がある程度進んだ状態でウイルスを排除した場合、肝臓自体の線維化は進んでいますから、発がんリスクはあると考えたほうがいいでしょう。C型肝炎が治っても、アルコールや肥満、糖尿病が原因で肝硬変や肝臓がんになることはあります。十分注意してください。(西日本新聞)
C型肝炎ウイルスはインターフェロン治療によって体内から排除が可能なウイルスです。ただし年齢などによる個人差があり、特に高齢になるとウイルスを排除できる確率は低くなります。だからといって、インターフェロン治療をあきらめてはいけません。たとえ肝硬変に進んでおり、ウイルスの完全な排除ができないケースでも、治療によってALTの値を正常に保つことができれば、発がん率を下げられるのです。肝硬変例でもインターフェロン治療によって約6割の例でALTを正常に保つことに成功しています。また発がんリスクのマーカーであるAFPも低下します。つまりインターフェロン治療は、ウイルスの排除だけではなく、肝硬変への進行を送らせたり、肝臓がんの発生を予防したりする二次的な効果もあるのです。特に肝炎の進行防止と発がん及び肝臓がん治療後の再発防止を目的として、インターフェロンを少量投与する維持療法は、副作用が少なく、高齢者にも優しい治療です。(西日本新聞)
肝機能の検査値の中で知っておいてほしいのは次の四つです。①ALT(GPT)=肝機能の破壊 ②血小板数=慢性肝炎の進行度 ③アルビミン値=肝硬変の重症度 ④AFP(αフェトタンパク)=肝臓がんのマーカー、発がんリスクのマーカー。新日鉄八幡記念病院で治療をしている肝臓がん患者の原因を見ると、C型肝炎が7割超、B型肝炎が1割超、つまり8割以上で肝炎が原因となっています。年齢的にはC型肝炎が原因の肝臓がんの平均年齢は70歳と高齢化が進み、さらに肝炎対策が発展していることを考えると数十年先には大幅に減少すると考えられます。現在、C型肝炎ウイルスに感染しているキャリアから将来、肝臓がんになる可能性は約3割といわれています。その予防のために、インターフェロンを中心とした適切な治療を受けることが重要です。(西日本新聞)
現在、国内の肝炎感染者数はB型が110万~140万人、C型が200万~240万人と推定されています。しかしそのうち治療を受けているのはそれぞれ約10万人、約50万人しかいません。こうした現状を改善するために、国は2008年度から新しい肝炎総合対策を実施し、肝炎治療の環境が一気に前進しました。予算面では2007年度までは年間60億円前後でしたが、2008年度からは200億円に急増しています。これを受けて北九州市でも①肝炎ウイルス検査(B・C型) ②インターフェロン治療費助成制度の受付窓口設置 ③広報・啓発 などに力を入れています。ウイルス検査は、市内564の医療施設と保健所で、無料で受けることができます。肝炎検査を受けていただきたいのは、①40歳以上 ②過去に肝機能の異常を指摘されてことがある ③大きな手術や出産などで大量に出血したことがある などの方々です。(西日本新聞)
知らないうちに感染して、自覚症状がないまま何十年も後に肝硬変や肝臓がんを引き起こす・・・。日本人で200万人を超す感染者がいるといわれるC型肝炎。新薬の開発も進んでいますが、有力視されている新薬はインターフェロンとの併用が必要です。インターフェロンを使わずにC型肝炎を治療できるのはかなり先の話になりそうです。C型肝炎は怖い病気ですが、治療法も進歩しており、治らない病気ではなくなっています。それでも年齢やウイルスのタイプなどによって、治療の効果に個人差があります。副作用も同様です。従って、個人の状況に合わせていかに副作用を克服して、必要な期間、治療を継続するかが重要です。(西日本新聞)
C型肝炎のインターフェロン治療成績は近年、向上しています。2002年頃までは日本人に多いインターフェロン難治例(1群高ウイルス量症例)でのSVR率は5%程度でした。しかし、ペグインターフェロンの登場や経口抗ウイルス薬との併用によって、現在では難治例でも50%、難治例以外なら80%のSVRを達成できるようになりました。さらに、最近では治療開始後のウイルス陰性化時期により投与期間を延長させる試みがなされ、さらなるSVRの向上が期待されています。インターフェロン治療には副作用があります。治療初期には発熱などのインフルエンザに似た症状が出ます。これは次第に収まってきますが、症例により倦怠感、食欲不振、うつ、脱毛などが出現します。血小板や白血球の減少や貧血のために、薬剤を減少する症例もあります。インターフェロン治療は、長期にわたる治療ですから、専門医とよく相談し、副作用をうまく乗り切って行く必要があります。(西日本新聞)
がん検診技術は年々高度化しており、早期がんの発見率は飛躍的に伸びている。同時に、手術療法や放射線療法、化学療法の発達に伴い、がんによる死亡率も低下している。特に胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がんの5種は特定の検診で早期発見して直ちに治療を行えば、死亡率が低下することが科学的に証明されている。ところが我が国のがん検診受診率は20%にとどまっているのが実情だ。ちなみにアメリカの場合、受診率は80%近くに達しており、がん死者数も1990年代前半から減少に転じているという。日本でがん死者数の増加に歯止めがかからないのは、受診率の低さも原因の一つと言えるだろう。現在我が国で実施されているがん検診は、住民検診や職域検診などの「対策型検診」と人間ドックをはじめとする「任意型検診」の2種類。このうち前者を日本対がん協会も実施しており、本部及び全国の支部が企業や自治体の委託を受けて実施した検診の受診者数は、累計1億8千万人を超えた。今後も最新技術の導入による検診の充実や受診者数増加を図りながら「がん征圧運動」を推進する構えだ。(朝日新聞)
急速な高齢化や生活様式の変化によって、我が国におけるがんの状況も徐々に変化している。例えば、日本人に最も多い胃がん。現在も患者数の多さは1位だが、死因としては男性2位、女性3位に下降。変わって肺がんが、男女とも死亡者数第一位となっている。また前立腺がん、大腸がん、乳がんなど、かつて日本では少数派だったがんが顕著に増えているのも、ここ10年間ほどの特徴だ。胃がんは、食塩の過剰摂取を始めとする食生活との関連が以前から指摘されており、肺がんも、喫煙習慣と深く関わっていることが分かっている。前立腺がん、大腸がんなどに関しても、食生活の欧米化が増加原因の一つとする見方が主流だ。このように、がんと密接に関わっている生活習慣を改善し、がんの一次予防をはかるため、国立がんセンターは2005年「禁煙」「栄養バランスのとれた食事」「節度ある飲酒」「適度なスポーツ」などからなる「がんを防ぐための12カ条」を発表。(財)日本対がん協会も、がんに関する知識の普及をはかりながら、同12カ条に基づく生活習慣の改善や定期的ながん検診の重要性を訴え続けている。(朝日新聞)
がんの死亡率を下げるためには、早期発見・早期治療が重要なキーワードとなります。そのため、定期的にがん検診をお受けいただきたいのですが、日本における各がん検診の受診率は、20%前後に過ぎません。現在、がん検診受診率50%以上を目標に掲げ、国を挙げた様々な取り組みが進められています。その一環として今年度、「女性特有のがん検診推進事業」が実施されます。特定の年齢の女性の方に、市町村から、子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンが配布されます。医師会も各検診機関と協力して、この事業を後押しすることになりました。この機会に、対象者の方はぜひ検診をお受けください。今後も、福岡県すこやか健康事業団、日本対がん協会等関係団体と連携し、がん検診のより一層の普及を進めていきます。県民の皆様には、規則正しい生活習慣と疾病予防により、健康に生活をお送りいただきたいと願っております。定期的にがん検診を受けて、ご自身の健康を管理しましょう。(朝日新聞)
久留米大で治療を受けた口腔がんの方について、C型肝炎ウイルスの感染状況を調べてみると、4人に1人が感染していました。この感染率は食道がん、胃がん、大腸がんの方と比べても高く、全国調査でも証明されました。また、口の中にがんができる方の中には、例えば舌がんと胃がんのように、異なる臓器に同時にがんができる場合があります。これを多重複がんといいます。C型肝炎ウイルスに感染していると、多重複がんを発症する倍率が高いことも分かっています。肝炎の方は、肝硬変に病気が進んでしまうかも知れない、肝臓がんになったらどうしよう、と考えがちですが、ぜひ他のがんにも目を向けて、がん検診を受けましょう。口の中にあらわれる肝外病変の一つに、扁平苔癬(へんぺいたいせん)があります。この病気は治りにくく、長年にわたって炎症が続いた後、悪化してがんになることもあります。C型肝炎ウイルスに感染している型は、感染していない方よりも、扁平苔癬ががんになりやすいことも分かっています。扁平苔癬と診断されたら、口の中を清潔に保ち、薬物療法で悪化を防ぐこと、そして1年に3~4回は定期検査を受けることが大切です。(朝日新聞)
口の中にも、がんができることがあります。もっとも多く見られる部位は舌がんですが、歯をささえている歯茎や、ほおの内側の部分、そして口の底の部分にもみられることがあります。口の中にがんができる頻度は、胃がんや肝臓がんに比べ、はるかに低い割合です。ただ、口という器官は、食べたり飲み込んだりする機能のほかに、しゃべったり、味わったりといった様々な機能を持ち合わせているため、がんになってその機能が大きく損なわれると、生きていく上で大きな障害となります。口の中のがんは、早く見つけて早く治療をすることが鉄則です。口の中にがんができる原因として、たばこの吸い過ぎやアルコールの飲み過ぎなどのほかに、肝臓病が関係する場合もあることが分かっています。肝炎ウイルスは肝臓病以外の病気も引き起こし、これらを総称して肝外病変といいますが、口腔がんもその一つだと考えられています。(朝日新聞)
昨年乳がんの全摘手術を受けました。治療中は必死でしたが、終わってからは乳房をなくしたことや再発の不安などで落ち込んでしまいます。(山田邦子さん)私の場合は2年前、左右の乳房に三つのがんが見つかり手術となりました。最初はやはり落ち込みました。命にかかわる病気ですし、治療の大変さは目に見えている。しかも再発の可能性もあるわけです。幸い手術は成功して、温存手術により乳房も守られました。ただ薬により治療は今も続いていますし、成功したとはいえ左右のトップが微妙にずれてしまった乳房を見ると、ちょっと残念だと思う気持ちがないわけではありません。でも様々なイベントで「私もなの」という方にお会いすると、皆さんが生き生き輝いているのに驚きます。それは何かを受け止め、背負う覚悟を決めたことで溌剌とされたからだと思うのです。私も皆さんと同様、いま咲いている花の美しさを楽しむような、日々の楽しみを見つけるのが上手になりました。(朝日新聞)
乳がんの手術を受け、手術後は抗がん剤治療を予定していますが、副作用で髪の毛が抜けるのが嫌でたまりません。髪の抜けない抗がん剤はありませんか。浸潤がんの場合は、その種が全身に飛んでいる可能性があります。その種が再発してしまってからでは完全に叩くことは難しいので、できる限り早く撲滅するために行うのが、手術後の抗がん剤治療です。抗がん剤治療にはいくつかあり、ご質問の場合はACという治療で、全12週、3週間に1回の点滴を4回行います。ただご指摘の通り、最初に点滴してから15日目頃に髪の毛が抜けます。再び生えそろうまでの間は、つらい思いをされるかも知れません。髪の毛の抜けない抗がん剤としてはテガフール・フラシルという薬があり、こちらは2年間毎日飲み続けることで治療を行います。どちらの方法がよいか主治医と相談してみてください。(朝日新聞)
乳がんの疑いで細胞診という検査を受けたところ良性とのことでした。でも本当に良性なのか心配です。また良性の腫瘍が、悪性に変わってしまうことはあるのでしょうか。細胞診というのはがんが疑われる部位に小さな細い針を刺して、細胞をとって調べる検査のことです。かなり狭い範囲の組織をとるので、針先がその場所に当たっていなければ正確な診断を下すことはできませんし、ごく小さな検体なので良悪性の判断も難しいものです。つまりがんが出なかったからがんではない、とは言い切れないのです。不安な場合はセカンドオピニオンをおすすめしますが、細胞診より組織を大きくとって調べる針生検やマンモトームなどの検査をうけることのできる病院を探してみてください。良性の腫瘍が途中から悪性に変わることはありません。セカンドオピニオンの結果、良性が悪性に、逆に悪性が良性に変わることがあれば、最初の診断が不確定なものだった可能性があります。また良性の腫瘍がある人の場合、悪性の腫瘍もできやすいのではないかとご心配かもしれませんが、そういうことありません。ご安心を。(朝日新聞)
注入するウイルスは、口の周りなどに水泡をつくるヘルペスウイルスの三つの遺伝子を組み換えた。ウイルスが細胞に感染した際、がん細胞だけ増殖し、正常な細胞では増えることができないように工夫。がんを攻撃する免疫細胞を強める働きももたせた。これまで、ウイルスを運搬役にして、がん細胞増殖を抑える遺伝子を運ぶなどの方法はあったが、今回の治療法はウイルスそのもが増殖して次々にがん細胞を破壊する。欧米では同様の臨床試験が始まっているが、今回はさらに安全性や効果を高めたウイルスを使う。藤堂さんは「ウイルス療法は脳腫瘍だけでなく、前立腺がんや乳がんにも使える可能性がある。慎重に研究を重ね、放射線や抗がん剤などと並ぶ、新しい治療法の一つとして確立したい」と話している。(朝日新聞)
がん細胞を破壊するよう遺伝子を組み換えたウイルスを使って、がんを治療する臨床試験を今月中にも始めると東京大医学部付属病院が10日、発表した。再発した悪性脳腫瘍の患者を対象に、がん細胞だけを狙い撃ちするウイルスを注入し、安全性と効果を検証、新しい治療法の確立えお目指す。臨床試験を計画しているのは、東大病院の藤堂具紀特任教授(脳神経外科)らのチーム。2007年に学内の審査委員会で承認され、2009年5月、厚生労働省の承認を受けた。こうしたウイルス療法の臨床試験は国内初。臨床試験の対象とするのは悪性脳腫瘍の一種の膠芽腫(こうがしゅ)。手術後に放射線や抗がん剤治療を行っても、平均余命は診断から1年ほどで、2年生存率は30%以下とされる。国内では年間約10万人に1人が発症するという。頭部に小さな穴を開け、開発したウイルスを腫瘍部分に注入する。腫瘍が再発し、治療の手立てがない症例が対象で、2年をめどに21人に行う。脳の炎症やまひなどが起こらないかや、腫瘍の大きさの変化などを調べる。(朝日新聞)
乳房温存療法で小さく部分切除しても、変形に悩んでいる人は少なくないと聞きます。ある程度の変形は仕方のないことなのでしょうか。乳房温存手術にも様々なケースがあり、がんが広範に広がっていることで切除範囲が広くなる場合や、がんのできた部分によっては左右のバランスが崩れるなど、変形が避けられない場合もあります。多少変形しても温存療法で乳房を残す方がいいのか、最初から再建手術をすると決めて、より美しい形をつくっていく方がいいのかは、症状ともよく考え合わせて、主治医の先生と相談していただきたいと思います。今後は再建手術もより普及して、周囲の組織などを使ってうまく形をつくる技術もどんどん修練されてくると思います。(朝日新聞)
たとえばあなたが検診の結果を聞きにいって「乳がんです」と言われたらどうしますか。大切なのは、「本当にがんなの?」と調べることだと私は考えます。アメリカでは必ずこれをやるけれど、日本の女性はほとんどやらない。私にはそれが不思議でたまりませんでした。画像診断の段階ではまだがんが確定したとは言えません。疑われる部位の組織をとって病理診断でがんとされたときに初めてがんと確定します。しかしここで悪性か良性かを見極めるのは非常に難しく、間違えると患者の天地は引っくり返ってしまいます。難しい理由は様々ですが、一つには乳がんの症例をたくさん見てきた経験がなければ正しい診断は下しにくいこと。一般的には「形の良いものは良性、形が悪いのは悪性」と考えられてきたのですが、乳がんにおいては形が崩れていても悪性ではなく、小さくまとまったほうが悪いという逆のケースも珍しくないからです。いずれにせよ、良悪性の判断に少しでも疑問を感じたら、セカンドオピニオンを依頼することが最良の方法でなないでしょうか。その結果、がんと分かった時には、腰を据え、心を据えて治療を開始してほしいのです。
一口にがんといっても様々な顔があって、性格の良いがん、悪いがんが存在します。細胞の増殖が早く転移を起こしやすい全身型のがんもあれば、時間が経っても転移を起こさない局所型で、小さいままのがんもある。つまりがんの治療では、最初にこうした性格を見極め、それに応じた治療をすることが可能になってきたのです。昔はがん細胞はおしなべて無秩序無限の増殖をしてどんなものでも取り込んで大きくなる貪欲なイメージで捉えられていました。だから抗がん剤を使ってとにかくがん細胞をやっつけなければと、正常な細胞まで傷つけてしまうとこも不可避となっていました。とことが近年はがんの性格と同時に、その好物まで分かってきました。女性ホルモンを好物として取り込むがんには、ホルモンを取り込む口をブロックする薬を使う。またHER2タンパクというものが多数存在するがんには、このタンパクに縄をかけて働きを抑えるトラスツズマブなどを投与する。こんな風に一例ごとのがんの性格に応じた薬を使うことで、治療の方法もより患者さんの負担を軽減させる方向へ変化してきたと言えます。
乳がんの治療はここ20年で著しい変化を遂げています。現在ではまず画像診断でがんの大きさを測定し、がんの部分の組織をとって浸潤の有無を調べます。そしてそのがんは女性ホルモンの刺激に反応するのか、活発に大きくなる性質なのかなどを見極めます。その結果、たとえば抗がん剤が効くタイプのがんなら、先に抗がん剤治療を行ってがんを小さくしてから小さく切除するという、乳房をより美しく残す手術が可能となりました。今はこの乳房温存療法が一般的になり、私たちの病院における温存率も7割を超えています。ただ乳房全体に広がるがんの場合は大きく取らざるを得ませんし、極力小さくとっても左右のバランスが崩れることもあります。昨今は形成外科との協力により形成技術も進歩してきましたし、収束超音波を当ててがんを焼き切る方法など、切らずに治す方法論も研究段階に入っています。今後そうした様々な治療法を選択していく上でも、まず自分のがんの状態を把握することが大切です。主治医に任せるのではなく、本当に自分で納得した裁量の治療法を選択していただいきたいと私は考えています。(朝日新聞)
乳がんの早期発見において大切なことの一つは、検診による画像診断です。しこりや皮膚の引きつれなど、自分の目で見て変だとわかる症状もありますが、表には出ないがん、小さながんなどの場合は検査しなければ早期に発見することはできません。またしこりに気付いても、それが良性か悪性かはきちんと調べなければ判定することができないのです。画像診断にはマンモグラフィ、超音波検査やMRI、CTなど様々なものがあります。それぞれ長所も短所もありますので、がんの症状を踏まえて裁量の検査方法を選択していくことになりますが、通常の検診ではマンモグラフィによる画像診断が多くなってきています。透明な板で乳房を挟み、できるだけ平らに広げて撮影をすることで乳管と呼ばれる乳腺の実質を見ていくものですが、このときがんが疑われる場合は周囲と異なる塊状のしこりや、乳管に沈着したカルシウムが砂をまいたように見える「石灰化」した状態が見られたりします。ただこうした症状があっても、すべて悪性とは限りません。専門医はしこりや石灰化した部分の形、広がり方など様々な角度から検証してさらに詳しい検査が必要かどうかを見極めます。ですからまずは検診を受け、自分の今の乳房の状態をきちんと確認していただければと思います。(朝日新聞)
私は通院のときに、とにかくしゃべるようにしています。薬の副作用とか、体調とか。着替え中も話しています。短い診察時間にどれくらい話ができるかが勝負ですから。診察が終わって、喜びでいっぱいだったり、がっかりしたり。ちゃんと聞けたかなって、帰る途中になって考えることがありますよね。それを考える時間を診察室でつくるのが医療者側の役目の一つだと思います。短い時間の中で工夫が必要ですが。それに時々こう尋ねます。この前話したこと、説明してくださいって。本当に理解していないと説明できませんから。もう一つ、僕は何かあったら尋ねてくださいと言って患者さんにメールのsドレスを伝えています。あまりメールはありませんけど。いつでも主治医の先生に連絡がつく、というのは私たち患者にとってとても大きな安心になります。窓を開けておく、ということですね。声を出せば聞こえるよ、1人で恐れたり悩んだりしないで、って。(朝日新聞)
がんのような病気になると、どの病院がいいのか、みんな必死で探します。でも目の前の医療者と良いコミュニケーションがとれていればけっこう良い医療を受けられる。そのことを知っておいて欲しい。セカンドオピニオンを受けると、そのほうがよく思えることがありませんか。その前に考えてください。目の前の医師とコミュニケーションがとれているか、と。良い情報が提供されても自分のものにしないと意味がない。一番はじめに教えられたのは座って患者さんの目をみて話しなさい、ということです。それと患者さんが、話やすい形で切り出すこと。それで1分位自由に話してもらうようにした。そうすると、患者さんはよかったと思う気持ちになれる。患者さんにお願いしたいのは、自分が本当に思っていることを正直に医師に伝えることです。ちょっとでも引っ掛かっていることがあれば必ず言う。診療の前にまとめておくといいでしょう。医療者は、患者さんが言ったことは簡単にあしらってはいけません。患者さんが本当のことを話せなくなってしまう。
がん治療では、食べられなくなることがよくある。手術の影響、化学療法や放射線療法の副作用のほか、がんの症状や心の問題もからむ。たとえば、「食欲がない」 「においが不快」 「味がしない、おかしい」など。口内炎や吐き気、便秘、下痢などで悩む場合もある。そんなとき相談に乗ってくれるのが管理栄養士だ。静岡県立静岡がんセンター栄養室長の稲野利美さん(46)は5病棟150人ほどの入院患者を担当する。出勤後すぐ、治療の進行に沿って1日約60人のカルテを確かめ、気になることがあると病室を訪問。食べたいものや、食べられそうな形状、素材から、食事の考えた方まで、患者の話を詳しく聞く。病棟の食事は、かつて集団の栄養管理や効率性が優先されたが、近年は「人間栄養学」として個別事情に応じた対応に目が向けられている。「食事は治療を受けるための体づくりであり、楽しみであり、生きることにつながる」同県御殿場市在住で入院中の東るみ子さん(57)には流動食の指示が出たので、食事にはポタージュや重湯などが選ばれていた。だが、食欲がわかず、ほとんど手をつけない日が続いた。(朝日新聞)
未来の女性の命を救う乳がん検診の比較試験に、参加していただけませんか。乳がん検診はマンモグラフィー(乳房X線撮影)検査が基本とされ、50歳以上に有効という科学的根拠もあります。ただ発症のピークの40歳代は乳腺濃度が高く、検診精度は低いといわれます。そこで国のプロジェクトとして「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)」が始まり、今年で3期目を迎えました。対がん協会は研究支援組織として参加を呼びかけ、4万人の協力が得られていますが、この3倍が必要です。超音波検査は通常の診療では欠かせませんが、無症状の方が対象の検診では有効性が確立されておらず、方法の標準化もなされておりません。試験ではマンモグラフィーと超音波を併用する群と、マンモグラフィー単独の群に分け検診を実施し、その結果とそれぞれの利益、不利益を比較して、超音波検査の検診精度と有効性を調べます。詳しくは日本対がん協会、またはJ-STARTのホームページをご覧ください。(朝日新聞)
KRAS検査が普及すれば、いまは治療対象外の人が検査の結果、「効果が期待できない」として対象外になることも考えられる。「たとえ1%でも可能性があるなら使いたい」と考える患者は少なくないが、抗がん剤治療は高額化していて、すべてを受け入れるのに限界がある。さらに検査は治療の結果を保証するわけでもない。埼玉医科大の佐々木教授(腫瘍内科)は「日本でも科学的に質の高い試験をして、検査の有用性を検証するべきだ」と指摘する。薬の一般名:セツキシマブ(商品名:アービタックス)は、大腸がんで、検査対象はKRAS遺伝子、効果が見込めない人を探すのが目的。逆に、効果が見込める人を探す目的の場合は、検査対象は、EGFRたんぱく質になる。(朝日新聞)
肺や大腸、婦人科のがんなどで幅広く使われている抗がん剤に「イリノテカン」がある。効果が評価される一方、白血球の減少や下痢といった副作用も出やすく、副作用が疑われる死亡例が臨床試験中だけで50人あまり出た。イリノテカンで強い副作用が出やすいかどうかは、生まれつきの遺伝子の特徴で、ある程度決まっていることがわかっている。その体質を調べる検査薬が昨秋に保険適用を受け、今春から全国で利用できるようになった。お酒に強かったり、弱かったりするのがお酒を分解する酵素の遺伝子の違いで決まっているように、UGT1A1という主に肝臓で働く酵素の遺伝子タイプによって、副作用の出方が大きく違う。検査薬は患者の血液を使い、この遺伝子タイプを調べる。(朝日新聞)
検査には以前に手術で取り出したがん組織を使った。細胞中にある「KRAS」(ケイラス)という細胞増殖にかかわる遺伝子が、変異を起こしていないかどうかをみる。男性に変異はなかった。海外の臨床試験で、KRAS遺伝子に変異があると、セツキシマブを使っても治療効果がほとんど見込めないことがわかっている。「変異があると、治療中の生存期間が変異がない場合の半分以下」とする報告もある。病院は国の認定を受け、「先進医療」として5月にこの検査を始めた。検査費8万円は自費で払ってもらうが、それ以外の治療費は保険が使える。大腸がん患者でKRAS遺伝子に変異があるのは全体の3割~4割。変異があれば、この薬は使わない方針だ。海外では欧州連合諸国や韓国など多くの国で、KRAS遺伝子に変異がないことが大腸がんの治療で使う条件になっている。米国も臨床腫瘍学会などが、KRAS遺伝子検査を推奨している。日本は、まだ条件になっていない。がんセンター東病院消化器内科の吉野医師は「効果がなければ、副作用に苦しむだけで、治療費も無駄になってしまう。国内でも早く、保険で検査を受けられるようになってほしい」と話す。
現在は肝炎治療の医療費助成制度がありすから、それを利用すれば自己負担は月額1万円から最高でも5万円ですみます。金額は患者さんを含む世帯の所得に合わせて決まるので、決して無理な負担にはならないと思います。申請の手続きは、地域の保健所に問い合わせれば必要な書類を教えてくれますし、明らかにこの治療を受ける必要がない人などを除けば、原則的に誰でも助成を受けられます。時間的な負担については、専門医と地域の医療機関がしっかり連携していれば、1人の患者さんが最初の治療方針決定時には専門医を受診し、その後の注射は近所のかかりつけ医で受けるといったこともできます。忙しい方でも治療は十分可能だと思います。肝炎・肝臓がん治療の方法や成績は、最近10年で劇的に変わっています。おそらく肝臓病に知識や関心がある人ほど、現在の状況を知ると驚くと思います。いい治療薬もどんどん生まれていますから、まず検査を受けて、ウイルス陽性の場合は怖がらずすぐに専門医に相談してください。(朝日新聞)
肝炎は治療が苦しい、怖いというイメージがあるようです。それはおそらく、昔のインターフェロン治療のイメージでしょう。日本でのC型肝炎のウイルス治療が保険適用になったのは1992年ですが、そのころのインターフェロンは、副作用が強いうえに週3回の注射が必要でしたから、たしかに患者さんの負担は小さくなかったと思います。しかし現在の治療は当時とは全く違います。ペグインターフェロンという新しいインターフェロンと経口抗ウイルス薬を併用する治療法では、副作用は以前よりコントロールしやすく、通院も週1回ですむようになりました。昔はC型肝炎といえば治療法のない病気でしたが、今はこの併用療法によって難治性の場合であっても約5割、それ以外の比較的治りやすいタイプなら8~9割が根治できるようになっています。また副作用が起きた場合でも、患者さんの負担をなるべく軽くする方法を熟知した肝臓専門医の数が増えていますので、その点でも怖がる必要はありません。(朝日新聞)
肝臓の病気というとアルコールが原因だと思う方が多いようで「お酒の飲みすぎで肝臓がんになりますか」という質問をたくさんいただきます。依存症になるほど多量に飲み続ければもちろん肝臓にもよくないですが、日本で1年間に肝臓がんで亡くなる約35000人のうち、アルコール性の肝炎が原因の人は1割ほど。残りの8~9割はB型またはC型のウイルス性肝炎を発症した後、長い時間をかけて肝硬変になり、やがてがんに移行したケースです。よく「自分はそんなに飲まないのに肝炎になるなんて」と驚く患者さんがあられますが、大半はウイルス性なのですから何も不思議なことではありません。肝炎は肝臓に炎症が起き、肝細胞が破壊される病気です。ただし「肝臓は沈黙の臓器」という言葉があるように、自覚症状はほとんどないので、異常に気付いてから治療を始めたのでは遅すぎます。早期に発見して治療を始めることが重要です。(朝日新聞)
放射線照射により、毛球細胞がダメージを受けて脱毛が起こりますが、脱毛が起こるのは放射線が照射された範囲のみです。頭部への照射の場合は、照射開始後約2週間で脱毛が始まります。脱毛の程度は照射方法により異なるので、かつらや帽子などが不要な場合もあります。脱毛し始める前に頭髪を刈ると、脱毛の際に短い毛が抜けてちくちくと刺激になる場合もあるので、短くし過ぎるのもよくありません。髪は、治療後3~6カ月程度で生えてきます。口腔や頭頚部の放射線治療の場合、口腔粘膜や唾液腺がダメージを受け、口の中が荒れたり、乾燥したりする場合があります。口腔内が照射範囲に含まれる場合は、適度な柔らかさで、ヘッドのブラシ部分が小さな歯ブラシを使用し、粘膜を刺激しないように注意しながら磨きます。口腔内が荒れてきたら歯磨きを中止し、うがいに切り替えて、口腔内の清潔を保つように心がけます。禁酒・禁煙し、食事は激辛などの刺激物や熱過ぎるもの、冷た過ぎるのえお避け、よくかんで食べるようにします。(国立がんセンカー・がん情報サービス)
国立がんセンター東病院では、サイクロトロンを用いた陽子線治療システムが1998年末より稼動し、主に頭蓋底、頭頸部、肺、肝臓、前立腺等のがん例に使用されています。病院に附属した陽子線治療装置としては国内では初めての装置で、2001年7月に高度先進医療(医療の名称:悪性腫瘍に対する粒子線治療)の認可を受けて治療を行っています。治療の費用288万3千円は自己負担です。国立がんセンター東病院以外に、わが国での陽子線治療は、筑波大学陽子線医学利用研究センター、兵庫県立粒子線医療センター、若狭湾エネルギー研究センター、静岡県立静岡がんセンターの4カ所で行われています。また、独立行政法人放射線医学総合研究所では、炭素を使った重粒子(重イオン)線治療が行われていて、2003年10月に高度先進医療として認可されました。これら粒子線治療は、国内でも今後さらに数箇所での建設が計画されています。(国立がんセンター・がん情報サービス)
粒子線治療は、サイクロトロンやシンクロトロン等の加速器から得られる陽子線や重粒子(重イオン)線を、がんという標的に狙いを絞って照射する治療法です。粒子線のうち電荷を持つもの(荷電重粒子線)の特徴は、一定の深さ以上には進まないということと、ある深さにおいて最も強く作用するといyことです。これらの特徴から、陽子線や重粒子(重イオン)線では、光子線に比べてがん病巣にその効果を集中させることが容易になります。したがって、がん病巣周囲の組織に強い副作用を引き起こすことなく、十分な線量を照射することができます。これらはがんに限局して照射できることから、進行していない限局したがん病巣の治療に適していると考えられています。がんのまわりに放射線に弱い組織がある場合の治療に、特に有効性が発揮できると思われます。今までの実績から、眼球内の悪性黒色腫、一部の頭頸部がん、Ⅰ期非小細胞肺がん、肝細胞がん、前立腺がん等に対する有効性が明らかになっています。(国立がんセンター・がん情報サービス)
粒子線(荷電重粒子線)治療とは、陽子や重粒子(重イオン)等の粒子放射線のビームを病巣に照射することによって、主にがんを治す放射線治療の総称です。利用する粒子の種類によって、陽子線治療、重粒子線(重イオン)治療、パイ中間子治療等に分けられ、世界の各地で臨床応用や研究が行われています。例えば陽子線治療では、水素原子の原子核であり、正の電荷を持つ陽子を加速して高速にしたものを体内に照射します。これらはX線やγ線(ガンマ線)を用いた外照射放射線治療の臨床経験を基礎として開発されているものですが、がんの治療に適した特徴を持つ治療法として期待されています。X線やγ線(これらは光子線とも呼びます)により外部放射線治療は、コバルト照射装置やリニアップ等の高エネルギー深部治療装置が普及した現在、がんの放射線治療法の主役を担っています。一方、粒子線治療については、1946年にWilsonというアメリカの物理学者が提唱し、1954年に応用が開始されました。以来、世界各地で重粒子によるがん治療の研究が行われてきました。なお、現在治療に用いられている粒子は、陽子と炭素の二つです。(国立ガンセンター・がん情報サービス)
国立がんセンター名誉総長の垣添忠生さん自身も過去に大腸がんと腎臓がんを経験している。「大腸がんは、10年ほど前に職員検診で便に潜血反応が出たのですが、忙しくてその年は精密検査を見送ってしまいました。翌年もまた潜血反応が陽性になったので内視鏡を入れたら、三つポリープがあって、そのうちの一つにがんが見つかったのです」。開腹せず内視鏡による切除で済んだのも検診のおかげだという。腎臓がんの手術は2005年。前年に国立がんセンター内に開設された「がん予防・検診研究センター」で、どんなサービスが提供されているのか自身で確かめようと思い、検診料を払って検査を受けたところ、がんが発見された。幸い、初期のがんだったので小さく部分切除し、2週間後にはもう海外出張に出掛けられるまでに回復した。「がんが見つかるのが怖いから検診を受けないという人も少なくないようですが、早く見つければ治療費も少なく済み、あっという間に元気になる、いいことずくめなのです」。
早朝、台所の窓を開けると、小鳥のさえずりとともに、さあっと入ってくる澄んだ空気をふうっと吸い込んだ時・・・。「あ何だか今、確実に私の免疫力が上がった」と思える瞬間がある。病気は薬だけで治すのではない。薬と「癒す力」という自分の気持ちがピタリと重なり、治る道がつくられていくのではないかという気がする。病院というところが、医師や看護師の方々と会話をすることによって、そのように患者のモチベーションが高まるような、病気と闘えるパワーを養えるような場であることを強く願っている。がん患者は、患者としてではなく人として見てほしいのだ。患者にただ寄り添うのではなく、自分自身もはかない命を持つ同じ人間として、その思いを感じてほしい。そして、患者とともに希望を捨てないでいただきたい。どんな状況であっても。(西日本新聞 『生きてる・・・』より 西冨貴子)
森院長は、施設を訪れていた家族に「がんの処置をする際には鎮静剤で眠ってもらうということで(長崎病院ニ)入院してもらうことはできる。でも、いまのように自由に生活することはできなくなると思います」と正直に説明した。家族は「もう少し近くの病院を探したい」との意向で、受け入れてくれる病院が見つかるまでグループホームに入所を続けることになった。帰り道の車内で小林さんは「認知症の人にはいろんなイメージを持っていたけど、話していると楽しかった。あのおばあさん、これからどうなるんでしょうか」と心配そうな顔をした。車を走らせながら森院長が「引き取ってくれる病院がみつかるかどうか。認知症でがんを患っている場合、自宅で看取ることができなければ行き場がなくなってしまうことが多いんだよ」と説明すると、しばらく学生たちは言葉少なだった。(西日本新聞)
33歳の女子学生は、がんを患う女性(78)が喫煙所に向かうのに付き添った。車いすを押す夫が「毎日見舞いにきて一服させてやるとさ」と笑顔を見せる。女性の自宅は石段を数十段上った高台にあり、通院などの移動が困難なため在宅医療を断念したという。喫煙所のベンチに腰掛けると、夫は「ビールも飲めるようになってこの人は幸せよ」と話し、うとうとと眠る女性を見やった。病院のスタッフは、女性が好物のビールをのどに詰まらせずに飲めるようにと、泡の食感も楽しめる"ビールゼリー"を考案して食べせてくれるという。午後になると、学生たちは、森院長が運転する車に1時間ほど揺られて同県西海市にある認知症のお年寄りのためのグループホーム「わらび苑」に向かった。施設のスタッフは、大腸がんの転移で治癒が見込めなくなった女性(90)のことを森院長に相談した。女性は認知症の症状が進行するにつれ、風呂に入らせる際などに体に触れると暴れるようになり、職員にかみついたり殴ったりする。入院できる病院を探しているが、「認知症の患者は引き取れません」と断られてしまう。普段は陽気な性格なのである。この日も、医学部3年の小林典子さん(27)に「お前、名前は何ていうとな」と話かけた。小林さんが「のりこです」と答えると、「おお、よか名前たい。おまえが大将」と言って周囲を笑わせた。小林さんが「何か歌いましょうか」と誘うと、「あかさか べっちゃか」と1人で歌い始めた。「何の歌ですか」と聞かれた女性は「知らん。おまえ、名前何ていうとな」と再び同じ質問を小林さんに向けた。(西日本新聞)
がん患者の体と心の痛みを和らげるホスピス医療(緩和ケア)を広げていくには、患者の気持ちを理解できる医療者の育成が欠かせない。緩和ケアを提供する国立病院機構長崎病院(長崎市)は、医学部の学生を病院に招いて現場の課題を学んでもらっている。学生たちは、自宅での医療を望みながらかなわない患者がいることや、がんを患った認知症の患者が行き場を失っている現状などに、戸惑いながらも向き合おうとしていた。6月の土曜日の朝。坂のまち長崎の山の中腹に立つ長崎病院の院長室に、長崎大医学部に学ぶ学生6人が集まった。森俊介院長(61)が「患者さんと仲良くなったら、温泉にも連れていってあげてください」というと、学生たちは「一緒に入るんですか」と少し困惑気味である。森院長は「患者さんたちは、若い皆さんと会うのを楽しみにしているんですよ」と笑い、病棟へ案内した。長崎病院には、重度の障害者やがん患者など、家庭の事情で在宅での暮らしが難しい人が多く入院している。森院長は「在宅で暮らせるのは恵まれた人たち。でも、入院していてもできる限り家庭と同じような安心した生活を送ってほしい」と話した。(西日本新聞)
厚生労働省が指定するがん診療連携拠点病院には必ず設置しなければならない。昨年、要件が厳しくなった。①専任(業務の50%以上をチームの活動にあてる)の患者の身体症状に対応する医師 ②専従(業務の80%以上をチームに当てる)の専門知識・技能がある看護師 ③精神的な症状に対応する医師をそれぞれ1人以上配置。拠点病院のほかに、独自のチームを持つ病院もある。 厚労省は、チームの詳しい活動指針は出していない。チームづくりの進め方は手探りで、支援が求められている。国立がんセンター(東京都)は2007年から、緩和ケアチームの研修会を開催。2年間で128チームが参加、今年は64チームが参加の予定だ。NPO千葉・在宅ケア市民ネットワークピュアの藤田さんは、家族をみとった経験から、がん患者や家族の相談に乗っている。「いまは入院期間が短くなり、外来の化学療法も盛ん。院内のチームだけでなく、緩和ケア外来も充実させ、多くの患者がチーム医療の恩恵をうけられるようにしてほしい」。 (朝日新聞)
2007年のがん対策推進基本計画により、都道府県と地域のがん診療連携拠点病院(375)にチームを置かなければならないが、院内で緩和ケアへの理解を得られず悩むチームは少なくない。主治医が「痛みのコントロールは必要ない」と拒む場合もある。緩和ケアを広めるため、厚生労働省は基本計画で「がん医療にかかわる医師はすべて研修等により、緩和ケアの基本的な知識を習得する」と掲げている。研修は2日間。研究班や学会が作成したプログラムを参考に、拠点病院や都道府県が開く。患者への悪い知らせの伝え方や、がん患者が療養する場の選択、地域連携などについて学ぶ。厚労省は、都道府県への助成として今年度は2億6千万円の予算を付けた。計画から5年で、がん医療にかかわる医師10万人(目安)に受けてもらう。だが実際に受けたのは、昨年度から約1年で、3730人だった。専門かも不足している。厚労省が2008年、拠点病院に調査した結果、「チームに緩和ケアの知識・技能のある常勤の専従看護師がいる」と応えたのは約58%にとどまった。(朝日新聞)
けれども、人はそう強いばかりではない。車を運転しているとき、掃除をしているとき、食事の支度をしているとき・・・涙があふれてくる。そんな時は泣きたいだけ泣く。そして新しい自分に気持ちをリセットする。落ち込んでもいい。泣いてもいい。弱い自分でもいい。その繰り返しの中で、がんであるということにだんだん「慣れ」ていき、少しずつ自分の限りある命を受け入れていく。病むということは、それまであたりまえにできていたことが一つずつできなくなったり、あきらめたりしなくてはならなくなる。風が気持ちいいこと。おいしくご飯が食べられること。子どもたちと笑っていられること。本が読め、音楽が聴けること。何げない日々・・・・。あたりまえの日常・・・。いや、そもそもこの世に「あたりまえ」のことなどない。死を間近に感じる病や出来事に遭遇してはじゅめて、命というものがどれほどはかなく、かけがいのないものであるかに気付かされる。(西日本新聞・『生きてる・・・』より・西富貴子)
乳がんの骨転移とみなして治療を受けながらも慌しい毎日は続いた。嘆き悲しむ暇などはない。涙は家族の前ではなるべく見せないようにしている。なぜなら家族も私と同様、私が病んだことによって深い悲しみの中にあると思うから。私が泣くと娘が泣く。みんなが暗闇のふちを歩かねばならない。それを見ると私も落ち込む。ただでさえ家族や周りに対して「病気になってごめんね」という思いでいっぱいなのに、暗い雰囲気が漂うと、これは自分がもたらしたのだと責められているようにも感じ、さらに落ち込む。悲観的な自分でいるのは悪循環なのだ。それだけは避けなければと思う。ジャーナリストの鳥越俊太郎さんも講演で「生きるという支えは家族。それはもちろんだけれども、最終的な支えは自分自身」と言われた。がんと闘うには、自分がもう駄目だと思ったらそこで終わると。本当にその通りだと思った。検査のたび死の宣告を待たされているような気持ちになり、結果を聞き、突き落とされ、それでも「生きたい」 「生きなければ」とはい上がる。がん患者はいつもその極限の選択、極限の思い、そして極限の「生」を突きつけられる。このぎりぎりの「生」の中で、命、生きるということの尊さを心底感じさせられる。(西日本新聞・『生きてる』より・西冨貴子)
患者同士が思いを打ち明けあうことによって、不安が和らぐこともある。福岡市・天神のビルの一室で月2回活動している「元気が出るがん患者のつどい」には、テーブルを囲んで13人の患者が集まっていた。「今日は表情が明るいですね」。講師の波多江伸子さんが声をかけると、乳がんを患う十河紀子さん(40)が「アルバイトの仕事を始めたんです。気分が落ち込み『人生終わった』と思っていた頃に比べると、ずっと前向きになれました」と笑顔を見せた。十河さんは2年前にがんを告知された。治療によって症状はおさまったものの、再発や転移の恐怖にさいなまれうつ病になった。自分の死後に長男(4)が少しずつ成長していく姿を思い浮かべ、さまざまなサイズの子ども服を買い揃えたこともあるという。「以前は夜寝るのが怖くて・・・。みなさんが、がんを受け入れながら前向きに生きる姿を見せてくれたおかげです」。十河さんが言うと、別の参加者が「よかったね」 「自身を持つことが大事」と思いやった。(西日本新聞)
黒崎さん夫妻がボランティアを始めたのは、身近な死がきっかけだった。13年前、長男の妻が白血病で亡くなった。長崎県佐世保市から福岡市に移り住み残された子の育児を手伝っていたが、9年前には34歳だった三女が脳血栓で亡くなった。ホスピスボランティアをする「福岡ホスピスの会」の活動を知り、「患者さんと向き合うことで、自分の悲しみも癒されるのでは」と考えて2004年に入会した。病棟を訪れても、患者の状態によっては誰とも会うことがない日もある。「また会いにきて」と言ってくれた患者が、次に訪ねたときには亡くなっていてつらい思いをすることもある。「これでも、亡くなる前に一つでも多く楽しい思い出をつくってあげられたら、と思うんです」。黒崎さん夫妻は、健康な間は2人でボランティアを続けたいと考えている。福岡ホスピスの会には、40人のボランティアが登録し、福岡市内七つの病院で活動している。(西日本新聞)
がんを患った人には、体の痛みとともに、再発への不安や死と向き合うことの恐れといった苦痛ものしかかる。患者に寄り添うボランティアと、支え合うことで心のケアに取り組む患者会を取材した。生の松原を見晴らす西福岡病院(福岡市西区)の緩和ケア病棟(15床)の談話室を訪れると、エプロン姿で出迎えてくれたのは黒崎広治さん(84)と妻の靖子さん(75)だった。2人は患者ではない。病棟を月2回訪れるホスピスボランティアだ。病室に差し入れをするために、コーヒーを沸かしているところだった。そこに手押し車で体を支えながら、入院する池田澄子さん(88)がやってきた。「コーヒーにはお砂糖を入れますか?」。池田さんがテーブルに座ると、広治さんが声をかけ、靖子さんは隣に腰掛けて手を握った。池田さんは高齢の体には負担が重い積極的な治療を選ばず、昨年10月からこの病棟に入院している。そのことを知ってはいても、黒崎さん夫妻は、相手が口にしない限り病気のことには触れず、慰めの言葉をかけることもしない。(西日本新聞)
厚労省は高度医療評価制度の目的を「高度な医療技術を安全かつ低い負担で受けたいという患者のニーズに対応するため」という。ただ、同省の文章では、臨床試験と位置づけられている。「被験者」という言葉が使われ、試験期間や症例数も定めることになっている。施設も、大学病院や、緊急時の対応が可能な医療機関に限られる。重篤な有害事象が起こった場合の公表・厚労省への副作用の報告・被験者の同意取得の方法や実施機関の責任者の責務などを定めた同省の「臨床研究の倫理指針」の順守、などが求められる。しかし試験終了後に使用された未承認薬・機器がただちに薬事承認を得られるわけではない。法令で実施基準が厳格に定められている治験ではないからだ。既承認のもので、承認されていない別の効能・効果について試した場合、国内外の論文などのデータがあれば、国内で新たに治験をしなくても薬や機器の適応が拡大される制度がある。臨床試験の結果を医師が論文にまとめ、それが適応拡大のための承認用データとして活用されるケースがありえるという。(朝日新聞)
従来の内視鏡手術は遠近感がつかみにくい2次元映像を見ながら行うが、出血を起こしやすい前立腺摘出手術は難易度が高く別の病院で医療事故も起きた。東京医大病院ではいまは実施していない。ロボッタは「ダビンチ」と呼ばれ、米ベンチャー企業インテュイティブサージカル社が2000年に米国で承認を取った。同社のウエブサイトによると、米国を中心に約40カ国で1171台を販売、2008年だけで約13万6千件の手術が行われた。その8割は前立腺と子宮の摘出手術だった。日本でも2001年から治験が行われたが、代理店となった日本企業が撤退、承認申請されずじまいだった。現在5病院が米国から直接個人輸入の形で購入し、使っている。東京医大病院は2005年に約2億5千万円で購入。手術には研究費を使い、患者には負担を求めてこなかった。厚生労働省は2008年4月、先進医療制度の一つとして新たに「高度医療評価制度」をつくり、未承認の薬や医療機器を用いた場合でも保険診療の併用を認めた。同病院は前立腺摘出手術の実績(50例)を添えて申請し、今年1月から保険併用が認められた。患者の払う医療費はロボット手術にかかる保険外負担が72万円。高額だが、これまでに18人が手術を受けた。5月末に手術を受けた都内の男性(60)は、「開腹手術に比べ傷が小さく、早く回復できると聞いていた通りで、ロボット手術を選んでよかった」と話した。(朝日新聞)
新しい治療方法が保険診療となるまで、入院や検査費用が健康保険でカバーされる先進医療制度。混合診療解禁論議の末に導入されたが、そのルールが昨春変わり、未承認の薬や医療機器を使う場合も認められるようになった。臨床研究(試験)の一種だが、企業が製造販売承認を得るための「治験」のような厳しい規制はない。あいまいさが残る制度は患者にとってどんな意味を持つのだろう。6月初め、東京医科大学病院(東京都新宿区)で男性患者からがんに侵された前立腺を摘出する手術が行われた。おなかに開けた穴から手術器具を入れる、ロボットを使った内視鏡手術だ。ロボットの4本の腕の先端には手術器具やカメラが取り付けられている。執刀医は手術台から3mほど離れた場所に座り、モニターテレビに映し出される映像を見ながら、左右の手の親指と人差し指で2本のコントローラーを操作する。執刀医の指の動きに合わせて患者の体内に挿入されたロボットの腕の先端部分についている手術器具が動く。「自分の小さな指が体に入り込んでいる感じですね」泌尿器科の橘主任教授が言った。
国立がんセンター名誉総長の垣添忠生さん(68歳)は、病院長、総長等を歴任し、病院運営の指揮をとったが、それ以前には外科医として泌尿器がん、特に前立腺がんや膀胱がんで傑出した技術を発揮した。毎年、新たにがんに罹る人は約60万人、年間のがんによる死亡者は約34万人にものぼる。「国立がんセンターでは年間約400人が亡くなりますが、その方々の病歴を調べさせていただくと、7割の方が発見したときすでに進行がんになっている。さらにその人たちの大半が、一度も検診を受けていないのです」 垣添氏は、その悔しさを「がん対策基本法」の中で存分に生かそうと全力を傾けている。同法の施行は2007年4月。法律を実効あるものにするため、厚生労働省内に「がん対策推進協議会」が置かれ、国の「がん対策推進基本計画」策定に携わるよう定められている。協議会のメンバーには専門医や医療従事者に混じって患者や患者団体の代表も加わっている点が画期的であり、垣添氏はその会長を務めている。「がんの原因は約30%がたばこ、約35%が食生活、約10%が細菌やウイルスによる感染症です」 特に1本に約60種類の発がん物質が含まれるたばこに関しては「がんに罹る人を減らすためには、禁煙が一番の講堂目標。1箱500円程度に値上げできれば必ず効果が上がるはずなのですが・・・」と垣添氏は強調する。(アフラックスコープ28より)
内視鏡を用いたがん手術も、成果を上げている。斗南病院(札幌市)の奥芝副院長が解説した。内視鏡手術は、手術する部分も周りに複数の穴を開け、そこから内視鏡などを差込み、映しだされる画像をモニターで見ながら、病変を特殊な電気メスなどで切除する。手術による傷は小さく、回復も早い。消化器がんを中心に手術数は急増。日本内視鏡外科学会の調査によると、胃がん手術の場合、2007年に4,765例が実施され、胃がん手術全体の24%まで増えた。奥芝副院長によると、体に穴を開けずに、胃や腸などを通し、内視鏡や手術器具を体内に入れて患部を摘出する「経管腔的内視鏡手術」で、胆嚢を摘出したり、虫垂を切り取ったりする手術や機器も開発されている。奥芝副院長は「さらに進歩すれば、がん手術にも適用される可能性がある」と話した。全国どこでも一定水準以上のがん治療を受けられるようにする「治療の標準化」が重要になっている。治療成績など科学的な根拠や医師の合意に基づいた診断指針(ガイドライン)の作成、一定の実績やキャリアを持つ専門医をきちんと育成するシステム、各地のがん拠点病院などの医療施設の整備。これらが標準治療の充実に必要だ。と、平田札幌医科大学教授の講演「がんの標準化を考える」から。(朝日新聞)
リハビリ中は、患者が体で覚えられるよう、うまくできたときに何度もほめ言葉をかけていた。脳腫瘍になったり、がんが脳に転移した場合は、高次脳機能障害が起こることもある。症状は記憶障害、注意障害、遂行機能障害(物事の段取りが悪くなる、計画が立てられない)、失語症(思っていることを言葉に出せない、話を理解できない)などだ。それらのリハビリは言語聴覚士が中心になる。病院によっては作業療法士も担当する。リハビリは「毎日、少しずつでも続けることが大事」。特に、高次脳機能障害は、発症後5~6年たってから変化が出ることもあるそうだ。安藤さんは大学で美術史を専攻後、会社勤めを2年経験後して言語聴覚士の資格を取得した。「笑顔で退院される患者さんを見送るときは、たとえほんの数時間でも、その方の人生と密なかかわりができてよかったと思います」。(朝日新聞)
東京都新宿区の慶応大病院リハビリテーション科には言語聴覚士が3人いる。主にがんの進行とその治療、脳卒中の後遺症、神経系の病気によって、「食べる」「話す」「聞く」「読む」「書く」機能に生じた障害を改善するリハビリテーションを担当している。安藤牧子さん(37)は多くのがん患者のリハビリを経験してきた。例えば、舌がんで舌を切除したり、舌がんやのどのがんの治療で放射線を照射したりした場合や、食道がんの手術後などには、食べ物を飲み込む力が弱くなることがある。本人は飲み込んだと思っていても、のどに食べ物が残ったり、気管に入って誤嚥性肺炎を起こしたりする。特に水分は気管に入りやすい。舌や軟口蓋、声帯を切除した後や、食道がんの治療後には、うまく発音できなくなることがある。安藤さんは食べ物を飲み込みやすくしたり、聞き取りやすい発音を身につけたりするための工夫を指導する。「ヒハビリで機能を完全に回復させることはできませんが、日常生活の不便さを軽くしたり、生活を楽しめるようになったりします」。(朝日新聞)
がんがどれくらい進行しているかを判断するための三大要素がある。最初にできたがんの大きさや広がり具合(T)、リンパ節への転移の様子(N)、がんが離れた場所に転移していないかどうか(M)、だ。病期は基本的に、この三つを組み合わせて決まる。腎臓がんでみると、大きさが8cmで腎臓にとどまっているだけならⅡ期、小さくても別の臓器に転移していればⅣ期になる。組み合わせはがんの種類によっていろいろだが、考え方は似ている。Tを決めるときに大切な要素は、がんの種類によっても違う。乳がんでは基本的にがんの大きさが、食道がんではがんが組織のどれくらいの深さまで達しているかが重視される。周囲のリンパ節や離れた臓器に転移していれば、病期は高くなっていく。予測される生存期間も病期ごとに公表されるのが原則だ。ただし、光冨さんは「仮に、ある病期の代表的な生存期間が1年だったとしても、人によっては1週間で亡くなったり、3年以上生存されたりする。病期をもとにした情報には幅があることを注意してほしい」と話す。(朝日新聞)
製薬会社の研究開発が始まってから、患者や健康な人に薬を投与し、安全性と有効性を確認する治験は、平均6.1年かかります。独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」の治験のデータ審査には、平均1.8年かかります。最終的に審査の結果、問題がなければ厚生労働省により承認されます。製薬会社が一つの抗がん剤開発にかける経費は数百億円といわれます。新薬にはこれらの開発コストが反映されるため、治療費も高額になります。また一度に複数の薬を使う「多剤併用」が行われることも多く、患者側の負担はさらに大きくなっています。東北大学の濃沼教授(医療管理学)らが行ったがん患者を対象とするアンケート調査によると、薬物療法を受けた患者(1150人)の自己負担(入院・外来費用に交通費や健康食品費などを加えた総額)は年間平均133.1万円。一定額以上の自己負担が払い戻される「高額療養費精度」などの割戻し分を差し引いた実質負担は57.9万円と報告されており、負担の重い医療費や、療養中の生活費などについては、国や自治体による融資制度の充実など、支援策が求められています。前述の高額療養費制度や税金の医療費控除などを活用するとともに、民間のがん保険などでしっかりと経済的な備えをしておくことが大切です。(アフラックスコープ28)
がんの薬物療法を専門に行う医師は「腫瘍内科医」と呼ばれます。2007年に施行された「がん対策基本法」に基づき、全国各地に設けられた「がん診療連携拠点病院」では、手術・放射線・薬物療法の専門医が協力する「集学的治療」の実施が指定条件となっているほか、腫瘍内科医の配置も義務付けられています。日本臨床腫瘍学会が認定する「がん薬物療法専門医」は全国でわずか200人あまり。「これまで日本のがん治療は、外科医を中心に臓器ごとの縦割りでおこなわれてきたため、薬物療法の専門医がとても少ないのです」と渡辺さん。がん患者・家族には「海外でかなり前に承認されている新薬が日本では使えない」との不満もあるようです。承認までのこうした時間差を「ドラッグ(薬)・ラグ(遅れ)」といいます。新薬が承認されるまでには、臨床試験で安全性と有効性を確かめる「治験」や専門機関の「審査」を経なければなりません。医療産業政策研究所が2007年、製薬会社を対象に実施したアンケートによると、様々な種類の薬剤について、日本では治験着手までの遅れを含め、承認まで欧米より約4年程度の遅れが認められています。
「副作用を恐れるあまり、抗がん剤治療に不安を抱く患者さんもいますが、今は吐き気を抑える『制吐剤』や、白血球の成分である好中球を増やして免疫力の低下を防ぐ『顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)』など、よい薬もあります。複数の抗がん剤を併用する場合は、副作用が重ならないよう配慮します。また、専門医が副作用が出る時期についてしっかりと計画を立て、患者さんにも分かりやすく説明して心構えをしておいてもらえば心配ありません」 前出の渡辺さんは、副作用に対する誤解をこう指摘します。近頃はがん細胞の増殖パターンの研究が進み、乳がんや胃がんなどの固形がん(塊を形成するがん)には薬剤を一気に大量投与せず、週1回など、小刻みに投与する方法が広まっています。そのため、入院せず、外来で薬物療法を受けるケースが増えています。「私のクリニックでは95%が外来の患者さんで、仕事を続けながら通う男性や、子供が学校に行っている間に点滴治療を受けているお母さんもいます。これからは患者さん1人ひとりのがんの性質を見極め、日常生活の継続を重視して最適な治療法を組み立てる"テーラーメイド治療"の時代です」と渡辺さん。
薬物療法は、がんの部位や細胞の性質、進行度や症状などに合わせて行われます。最大の目的は、「がんの治癒」と「延命」です。がんの増殖を遅らせたり、痛みなどの症状を和らげたり、生活の質(QOL)を改善するために使われる場合もあります。進行がんなどの痛みのコントロール(疼痛管理)も、薬物療法の一つです。現状では、薬物療法のみで治癒(完治)が期待できるのは、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、精巣(睾丸)がんなどに限られます。抗がん剤の投与方法には、注射(点滴)と内服(飲み薬)などがあります。注射の場合は静脈への点滴注射が一般的ですが、がんの種類、状態によっては動脈や腹腔内への投与も行われます。抗がん剤は1種類のみの場合と複数を併用して効果を高める場合(多剤併用)もあります。抗がん剤の主な副作用は、①吐き気・嘔吐 ②脱毛 ③白血球減少 ④内臓障害 ⑤貧血 ⑥不妊症などです。これら以外に、検査して初めて分かる自覚症状のない副作用もあります。
「がんは発生部位や細胞の性質によって局所にとどまりやすいタイプと、転移しやすいタイプがあります。前者は手術や放射線による『局所治療』で完治が望めますが、後者はがんが見つかった時点ですでに他の場所に微小転移(検査では見つけられない小さな転移病巣)が起こっている可能性があり、抗がん剤による『全身治療』も同時に行う必要があります」。 こう話すのは、圭友会浜松オンコロジーセンター長で「NPO法人がん情報局」の理事長を勤める腫瘍内科医の渡辺亨さんです。日本でがん治療に使われる薬剤は現在、約150種類。効果の仕組によって次のように分類されます。<従来の抗がん剤>従来から使われている抗がん剤は、細胞のDNAの複製を妨げ、活発に分裂するがん細胞の増殖を抑えます。正常細胞も攻撃してしまうため、副作用が表れやすい傾向があります。<分子標的薬>1980年代以降、分子生物学の進歩で生まれたのが分子標的薬と呼ばれる抗がん剤です。がん細胞特有の分子を標的にして、がん細胞の増殖や転移を抑制するため、正常細胞への影響は少ない薬です。<ホルモン剤>ホルモンの働きを阻害してがんの増殖を抑えます。前立腺がんや乳がんなどホルモンの影響を受けやすいがんに使われます。従来の抗がん剤に比べて副作用の比較的少ない薬です。(アフラックスコープ28より)
西富貴子さんのエッセー「生きてる・・・③」(西日本新聞1日付)を読み、私の気持ちを代弁していただいているように思いました。私も乳がん患者です。4月に抗がん剤治療が終わり、ホルモン剤を飲んでいます。主治医の説明によると5~10年は続けることになりそうです。化学療法のつらい副作用から開放された喜びもつかの間、押し寄せてくる不安感で涙が止まらず仕方ありませんでした。特に子供たちのことを思うと、切なくて切なくてたまりませんでした。治療代もそうです。まだ働くこともできず家計は苦しいです。お金がないと、ある意味、命もつながらないのだと思いました。私だけがこんな気持ちになるのかと思っていたので、西富さんも同じ思いなのか、きっとまだ同じ思いの人がたくさんいらっしゃるのかと思うと、不謹慎ですがホっとしました。今は前向きに考えることもできるようになり、毎日楽しく過ごしています。落ち込んだりするときも、もちろんありますが・・・。頑張り過ぎないように頑張るしかないのです。(福岡県飯塚市、40代女性) 西日本新聞
長崎大学の原爆後遺障害医療研究施設(原研)は、がんなどの手術で被爆者から摘出した組織を冷凍保存し、被爆情報とともにデータベース化する「被爆者腫瘍組織バンク」の設立を決めた。2012年をめどに、インターネットで世界の研究者に公開する方針。集めたサンプルをもとに研究が進み、がんが発生しやすいメカニズムが解明できれば、被爆者だけでなく、がんの予防や早期発見につながる可能性があるという。実務を担当する中島准教授(44)によると、被爆者から腫瘍と正常な組織の提供を受け、液体窒素で急速冷凍し、原研の冷凍庫でマイナス80度で保存する。従来のホルマリン漬けと違い、DNAが細かく千切れたり、たんぱく質が変性したりすることがなく、より詳しい解析が可能になるという。放射線が遺伝子を傷つけてがんを誘発することは分かっているが、被爆者にがんが多発するメカニズムが明らかでないという。(朝日新聞)
現在、先進医療の対象は107種類で実施機関はのべ1025施設。高度先進医療時代の2004年と比べると、のべ医療機関数は約4倍となった。財政の論理で「先進医療」から「保険診療」への移行が進まないのでは、と心配されたが、いまのところ移行が制限されているとはいえない。2006年は心臓移植手術など8種類、2008年は、病巣の周りの正常組織への放射線照射を少なくできる強度変調放射線治療(IMRT)など20種類が保険診療となった。ただ、保険診療適用後の患者増に対応し切れない場合もある。その一つがIMRT。先進医療となって2年弱で、前立腺がん、頭頚部がん、脳腫瘍が保険診療となった。東大病院では、前立腺がん(38回照射)で約130万円を負担してもらっていたが、保険診療になった昨年4月以降は同じ治療が3割負担の人で約37万円で済むようになり、患者は激増。リスクの低い患者は半年ほど待ってもらうこともある。東大病院は「現在の態勢ではIMRTを受けられる人を50人から70人程度に増やすのがやっと。高度な機器に対応できる専門家や精度管理の専門家が足りない」という。(朝日新聞)
民間開放推進会議(現在の規制改革会議の前身)が2004年8月に混合診療の解禁を求めた。混合診療は保険診療と保険外診療を併用することだ。厚生労働省は高度先進医療や差額ベッドなどに限って併用を例外的に認め、それ以外は禁止していた。そのため未承認の薬や医療機器などが用いられれば、本来は保険診療の対象となる検査や診察、入院費なども保険請求できない。同会議はこの規制を撤廃するよう主張した。2004年12月に厚労相と規制改革担当相が保険診療と保険外診療を併用する範囲を広げることで合意。その際、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」ことが確認された。先進医療を保険診療にするかどうかは、技術の有効性や安全性だけでなく、普及の度合いや、技術的な成熟度なども考慮しながら決定される。(朝日新聞)
タキソテールに替わってからは吐き気は落ち着いたものの、体中の痛み、味覚は麻痺し、爪が黒く変色した。手足はしびれ、皮膚が薄くなったようにヒリヒリして熱いカップなど全く持てなかった。治療を開始して2週間ほどで脱毛が始まり、一日で正確に言うと一時間ぐらいでばさっと抜けてしまった。分かってはいたが、ショックは想像以上のものだった。髪がない、まゆ毛も、まつげもない。枯れ枝のようになっていく自分・・・。自分が自分でなくなっていくようで、鏡を見るのも嫌だった。そんなとき、長男が「ママ、大丈夫だよ。治療が終わればまたすぐ生えてくるって」と優しい言葉をかけてくれた。夫も「外見が変わったからって、オマエが変わったのか?オマエはオマエだろ」と・・・。言葉や態度でいたわってくれる人ではないが、この一言で、そのときの私は救われ、その後も頑張ることができた気がする。私はウイッグ(かつら)をつけ、帽子をかぶり、髪が抜けようが、化学療法で気分が優れなくても、次男の送迎のため毎日学校へ通った。(西日本新聞)
乳がんの告知を受けた私が「ああ、わたしってほんとうにがんなんだ」と実感したのは、手術後の化学療法が始まってからだった。手術より何より、化学療法を受けることがショックで、怖かった。体に毒を入れる感覚、体がどうにかなってしまうのではないかという気がした。2005年の6月に受けた診断は湿潤性乳管がん。リンパ節への転移も認められたため、化学療法は、3種類の抗がん剤を組み合わせたCEFを4クール(1クールとは1週間目に点滴し、次の2週間は治療を休むこと)、その後、別の抗がん剤タキソテールを4クールという計8クールだった。かなり強力な薬で、CEFの赤い蛍光灯の点滴を見ただけで吐き気がした。吐き気を抑える薬もあるが、それでも一日中、乗り物酔いのような、つわりのような、何ともいえない気分だった。抗がん剤はがん細胞を攻撃するのと同時に正常な細胞も破壊する。怖いのは白血球の減少だ。白血球が減ると免疫力が落ち、感染症を引き起こすことがある。白血球を増やす注射をして、抗がん剤投与を延期したこともあった。(西日本新聞)
がん患者の痛みや不安を和らげるためのホスピス医療を行う緩和ケア病棟。人生の最期を穏やかに迎えてもらおうと広がってきたが、闘病で傷ついた心身を癒し、再び前向きに生きる力を与えるために必要な施設でもある。福岡市南区の那珂川病院の4階にある緩和ケア病棟には20の個室がある。その一室に入院する女性(53)が、これまでの闘病生活について話してくれた。ズボンのすそをめくって見せたふくらはぎには、抗がん剤の副作用でできたあざがいくつも残っている。「あきらめたり希望を持ったりの繰り返しだけど、6月1日を退院の目標日に決めて頑張っています」 女性は2005年春にせきが止まらなくなり、訪れた病院で肺がんと診断された。リンパ節や頭部、骨にも転移していて手術は不可能だった。抗がん剤や放射線の治療を続けたが、昨年末、医師から「これ以上治療はできない。緩和ケア病棟を探してください」と告げられた。「緩和ケア病棟はがん患者が生涯を終える場所でしょう」。そう思っていた女性は医師に迫った。「ほかに薬はないんですか。治療を続けてください」けれど今年1月から緩和ケア病院に入院し、痛み止めの投与などを受けながら静養した結果、体力は回復していった。入院当初はほとんど歩けなかったが、最近は300メートル離れたスーパーまで散歩にでかけることもある。(西日本新聞)
医療機関を受診している人の数は、B型肝炎とそれによる肝硬変、肝臓がんを合わせて約10万人、C型が約50万人です。ただしウイルスキャリア(持続感染者)そのものは、B型は100万~130万人、C型が150万~190万人と推定されています。キャリアに比べ治療を受けている人が少ないのは、検査を受けていないため自分がキャリアであることを知らない方も多いでしょうが、インターフェロン治療にお金がかかることも大きな原因だと思います。そこで国では、将来の肝硬変、肝臓がんを防ぐことを目的としてインターフェロン治療の医療費助成を行っています。患者さんの所得によって、月々の自己負担額を1万円、3万円、5万円のいずれかに定め、残りは全額公費で負担する制度です。適用となる期間は標準で48週ですが、難治性のタイプであり、かつ治療を継続すれば効果が見込める場合は、72週まで延長することが今年度から可能になりました。(朝日新聞)
ウイルスが陽性であることがわかった場合の治療法は、かつては肝機能改善薬による治療が一般的でしたが、これは症状の進行を遅らせることしかできませんでした。しかし現在はインターフェロン注射を一定期間投与することで、体からのウイルスを取り除く、つまり肝炎を根治することが可能になりました。日本では1992年に最初のインターフェロン治療が認可され、さらに2004年からペグインターフェロンとリバビリンを併用した新しい治療法が始まりました。2剤併用することにより、治療効果も上がりました。またペグインターフェロンは週1回の注射でよいので、患者さんの肉体的および精神的な負担も軽くなり、「インターフェロン治療はつらい」というイメージはずいぶん変わりました。またインターフェロン治療に経験を積んだ国内の肝臓専門医の数も増え、副作用に早めに対処し患者さんがどうしてもつらい場合はインターフェロンの種類を変更するといった手法も確立されましたので、全然怖がる必要はありません。(朝日新聞)
ウイルス感染の主な経路は、以前であれば輸血や注射などの医療行為のほか、B型の場合は出産時の母子感染などによる感染ンもありました。ただし感染から重症化するまでには長い時間がかかる上、自覚症状が乏しいので検査を受けない限り感染の事実を知りようがなく、ようやく発見されたときにはそもそも何が原因だったのか本人にも分からないケースがほとんどです。適切な処置をせず肝炎を放置しておくと、やがて肝硬変、肝臓がんへ移行することがあるため、なるべく早く検査を受け治療を始めることが大切です。対処が早いほど完治の可能性が高くなるのですから。肝炎の検査は、市町村の検診や、地域の保健所、医療機関で受けられます。内容は血液検査だけですので気軽に受けることができますし、都道府県の検査であれば費用も無料のところも多いです。
B型とC型を合わせた肝炎ウイルス感染者数は300万人以上と推定され、「国内最大の感染症」ともいわれるウイルス性肝炎。治療が遅れると肝硬変や肝臓がんに至ることもある難しい病気ですが、今年度からは公費助成によるインターフェロン治療がさらに利用しやすくなり、治療成績の向上と将来の肝臓がん予防に大いに役立つものと期待されています。そもそも肝臓とは、大まかに、人間が生きていく上で必要な物質の代謝・合成、体内外の毒物の解毒、エネルギーの合成・貯蔵の三つが肝臓の主な働きです。このように人間が生きていく上で大変重要な臓器ですが、病気になってもなかなか自覚症状が現れないことが大きな特徴で、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。肝炎とは、肝臓に炎症が起き、肝細胞が破壊される病気です。原因別にウイルス性、アルコール性、薬物性、そのたの四つに大別されますが、このうち最も多いのがウイルス性肝炎で、日本では全体の約8割を占めています。このウイルス性肝炎はウイルスの種類によってAからEの五つの型がありますが、このうち慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進展するのは、日本ではB型とC型がほとんどです。
手術を受けたくない、受けられない人へのアドバイスは、早期がんなら、治療せずに定期検査で経過を見る待機療法で済む場合もあります。しかし進行してさまざまな症状が出てきたら、その人の体の状態をよく知る泌尿器科専門医などに相談して、ホルモン療法や放射線治療を始めてください。手術後の再発の診断基準は?手術後のPSA値は低い値で変動することもあり、注意が必要ですが、一般的にはPSA値0.1以下が5年間保たれれば完治と判断します。逆に、0.4を超えてくると、がん細胞の取り残しや転移があるとみて追加療法を考えます。ホルモン療法の合併症と限界については?ホルモン療法は男性ホルモンの働きを抑えるため、副作用も特異です。4~5分程度のほてりや、食欲増進、胸のふくらみ、肝機能障害のほか、髪の毛が増えることもあります。副作用が強い場合は薬剤を変更します。薬剤の効果が落ちてきたら?一般的には継続します。男性ホルモンを栄養に増殖するがん細胞を抑え続けるためで、一方でがん細胞そのものを攻撃する抗がん剤などを併用したりします。(西日本新聞)
再燃前立腺がんは85%の確率で骨への転移が見られることから、骨を守る治療も重要です。がん自体に対するホルモン療法に併せて、痛みやしびれ、骨折などの負担を軽くするために骨転移進行を遅らせたり、症状を改善する治療をします。骨転移の進行を遅らせるのに効果的なのが、ビスホスホネート剤です。骨転移を進める破骨細胞の働きを抑えて骨を守り、病巣の進行を抑制します。3~4週間に一度、15~30分の点滴で投与するため外来での治療が可能です。ただし発熱やあごの骨に副作用が出ることもあります。痛みなどの症状を抑えるには、放射線照射や鎮痛剤、痛む部位を取り除く手術をします。痛みを抑えないと前立腺がんと戦う力も失われますから、強い痛みがある場合にはモルヒネなどの麻薬も積極的に使います。医療用麻薬は適正に使えば依存症に陥ることはありません。大切なのは、自分の症状と治療の内容を理解して、がんとうまく付き合うつもりで治療に臨むことです。(西日本新聞)
ホルモン療法の効果が落ちた状態を再燃前立腺がんといいます。残ったがん細胞が再び増殖に転じてPSA値が上昇し、前立腺の肥大化による排尿障害や、がん細胞の骨転移による痛みが出ます。今のところ特効薬はないのですが、年齢や社会生活、身体機能に合わせていろいろな治療を組み合わせ、症状を和らげることは可能です。主な治療法は三つ。ホルモン療法の変更と、抗がん剤の投与、骨転移に対する治療です。ホルモン剤の変更から始めて、効果が出なくなった場合は抗がん剤を使った化学療法に切り替えます。日本でも2008年からドセタキセルという抗がん剤が保険適用されています。3~4週間に1回の点滴治療を通院だけで続けることができますが、食欲不振や体のだるさなどの副作用があります。(西日本新聞)
もう一つは、またの間から前立腺に放射線を放出する長さ4.5ミリの針を80~100本埋め込み、体の内側から照射する組織内照射法です。針を埋め込むのは2時間程度ですが、3日から1週間の入院が必要になります。いずれの放射線治療も手術に比べて副作用は軽いのですが、放射線治療後は手術療法を選択できなくなります。服薬か注射のみのホルモン療法は、体への負担が少なく、進行がんには年齢を問わず第一の選択となります。精巣(睾丸)を取り除く手術や、皮下注射、女性ホルモンの内服薬などで男性ホルモンの作用を抑える薬を内服する方法があります。リスクとして、性機能障害や太りやすくなるなどがあり、長期間の治療で効果が弱くなることもあります。(西日本新聞)
診断ではまず、病気の有無を調べるスクリーニングを実施。肛門から直腸に指を入れて前立腺の大きさや硬さなどを調べる直腸診や、棒状の超音波探子を直腸に挿入してがんや結石の有無を調べる超音波検査など、方法はいくつかあります。中でも有効なのは、前立腺でつくられるタンパク質PSAの血中濃度を調べる検査。がん化すると大量のPSAが分泌されるため、80%の確率で病気の有無がわかるのです。ただし前立腺肥大症や前立腺炎でも、血中のPSA値が高くなる場合があります。その場合は、前立腺の組織の一部を切り取ってがん細胞の有無を調べる組織検査「針生検」をして確定させます。一般的に採取は六カ所程度ですが、鹿児島大学病院では取りこぼしを防ぐため12カ所を採取します。前立腺がんと診断されたら、CTやMRI、放射性物質を使って骨の状態を調べる骨シンチグラフィーなどで、病気がどの段階にあるのか調べます。(西日本新聞)
高齢化社会を背景に、前立腺がんが急増している。進行は比較的緩やかなため早期発見できれば治癒しやすいが、進行すれば骨に転移して痛みや骨折を伴うケースも多いという。前立腺がんの危険因子は人種や年齢、家族歴などで、かつては欧米人に多い疾患だったのが、最近では日本でも食事の欧米化で動物性脂肪摂取量が増えたために急増しています。2020年には日本人男性の患者数が、肺がんに次いで二番目に多くなるという予測もあるほどです。しかし前立腺がんの進行はゆっくりで、初期には自覚症状がなかったり、尿が細くなったり、頻尿になる程度。またの間が痛んだり、足がむくんでくると、骨への転移まで進行している場合があるのでやっかいです。ただし、進行がゆっくりな分、早期発見して根気よく治療すれば、がん細胞の増殖を抑えて完治も可能です。症状を感じたら、すぐ専門医に診てもらってください。(西日本新聞)
がんを告知されて平静でいられる人は少ないだろう。悲観、楽観を繰り返し、やがて正面から向き合えるようになる。しかし病気を受け入れられず抑うつ状態になる人も約3割にのぼる。患者の心のケアにどう取り組むか。医療現場での取り組みは始まったばかりだ。大分市にある乳がん専門施設「うえお乳腺外科」は今年3月から、グループ療法(集団心理療法)による患者の心のケアに取り組んでいる。同時期に手術した5~7人がひとつのグループになり、毎週土曜日の午前、1時間のミーティングを行う。入院中に1回、退院してから4回、計5回のプログラムだ。午前9時半、再発予防のための術後の抗がん剤治療を始めたばかりのメンバーが集まった。司会役の久保田陽子医師が「この1週間、どう過ごされましたか」と切り出す。話題は副作用による脱毛。「髪を洗うたびにポロポロ抜けて。分かっていたけどつらい」「ヘアピースを着けたら暑くて。夏場が不安」「抜けたところがヒリヒリして、触ると痛いよね」 久保田さんは近況報告が一段落したところで医学情報を伝えることにしている。(朝日新聞)
乳がんとの闘病記「おっぱいの詩」(講談社)の著者、大原まゆさんが、札幌市内の病院で9日に亡くなっていたことがわかった。26歳だった。12日に近親者で密葬を行った。大原さんは札幌市教育委に勤務していた2003年9月、21歳で乳がんの宣告を受けた。翌年、闘病生活をつづったブログを開設。2005年、抗がん剤治療のつらさや気持ちの浮き沈み、家族や友人の支えなどをまとめた手記を出版した。2007年にはこの手記を原作にした映画「Mayu-ココロの星ー」(松浦雅子監督)が公開された。各地で乳がん検診の重要性を訴える講演を行うなど、乳がん撲滅を訴えるピンクリボン運動にも積極的に参加。2006年6月に乳がんが再発、今年4月に病状が悪化し、入院していた。(朝日新聞)
長崎県で今春、白血病(小児がんの急性リンパ性白血病)を患う女子中学生(15)が私立高校から受験を断られるという出来事があった。治療中だったことから風邪などの感染を防ぐため、個室での受験を求めたが、高校側の答えは「対応できない」だった。女子生徒はその後、別の私立や公立では受験を認められている。どこに違いがあったのか。どんな場合に受験を拒否できるか定めた法令はない。文部科学省によると、規定を作れば、スポーツ推薦など多様な入試を妨げてしまうからだ。ただし、「安易に拒否していけないのは当然」という。関係者の考え方も分かれる。中学教諭を長く務めた法政大の尾木教授は「学ぶ権利は誰にでもある。私立も都道府県から助成金をもらっており、公的責任がある。校長室や応接室を使うなど方法はあった」と話す。一方、富士見丘中・高校の校長で日本私立中学高等学校連合会の吉田会長は「私立は公立と違い、学校で判断できる裁量が大きい。助成金も全額もらっているわけでない。できる配慮はすべきだが、一人のために対応が難しい場合もある」と話す。女子生徒は「受験できなくてショックだったが、気持ちを切り替えた。高校に入学できて夢への一歩を踏み出せたので、前向きに頑張りたい」と話している。(朝日新聞)
「母の日」にちなみ、福岡県宗像市の市民グループ「むなかたMAMMA(マンマ)」は10日、乳がんを早期発見する乳房専用のエックス線撮影装置「マンモグラフィー」検診を呼びかける啓発運動を同市内で行った。同グループは2007年7月、同市のマンモグラフィー検診向上を目指して発足。メンバーは主婦13人で、うち松永代表を含む6人が、検診で乳がんを発見し治療を受けている。この経験から、年に6回のペースで市内の大型店舗前やイベント会場で、女性に検診の大切さを訴えるキャンペーンを続けている。この日は午後1時30分から、同市のゆめタウン宗像前で、女性に「乳がんのマンモグラフィー検診はお済ですか」と語りかけ、啓発のチラシとエコバッグを配った。(西日本新聞)
新生物とは、「新たに形成される物」という意味で、一般に腫瘍と呼ばれています。私たちの体は、約60兆個の細胞からできており、これらの細胞はそれぞれの役割を果たし、ある一定の調和を保っています。「新生物」とは、このような正常な細胞が変化して生まれるもので、体全体の調和からはずれた、過剰な増殖を示すものをいいます。
上皮内新生物は腫瘍細胞がそのまま上皮内(大腸は「粘膜内」)にとどまっている、すなわち基底膜(大腸は粘膜筋板)を超えて浸潤をしていないことが悪性新生物(がん)との大きな違いです。上皮内には血管・リンパ管は通っていないため、上皮内新生物の場合は、消退するものもあります。悪性新生物の特徴(浸潤・転移)を満たしていないため、悪性新生物=「がん」とは区別されています。「浸潤」していないため、「転移」の可能性はありません。病変を完全に切り取ってしまえば、100%治癒するといってもよく、再発の可能性はない。この点は良性新生物と同じ。大腸の粘膜内がん(上皮内新生物)であれば、通常内視鏡を用いて病変を切り取ることで完治する。
正常な細胞は必要なときだけ分裂し、必要な分だけ増えると分裂をやめ、寿命がくると死滅します。従って細胞の数が増え続けることはありません。一方「がん細胞」は例外で、増殖が止まりません。もともと正常だった細胞が何らかの原因で変異を起こし、増殖止まらなくなってしまいます。さらに、同じ場所で増殖するだけでなく、すぐ近くの臓器に侵食したり(浸潤)、血液やリンパ管を通じて離れた場所にある臓器に転移してそこで増殖したりする結果、体がむしばまれていくのです。「がん」が他の病気と大きく異なり「悪性」と言われるのは、この「浸潤」「転移」という性質を持っているからです。そしてこの性質によって「がん」は再発し、また人を死に至らしめる可能性があるのです。
がん検診受診者が大幅に減っていることが対がん協会支部への調査で分かりました。昨年4月~12月に市町村から受託した受診者数を調べました。啓発活動が盛んな乳がん検診は前年と比較し25000人増えましたが、胃98000人、肺264000人、大腸72000人、子宮25000人、、それぞれ減りました。なぜでしょうか。市町村の多くは受診の利便性を考え、健康診断とがん診断をセットで実施しています。昨年度から特定検診・保健指導(いわゆるメタボ検診)が導入され、自治体は国民健康保険加入者にたいしてだけ検診を義務付けられました。サラリーマンの妻などは企業の義務となり原則として市町村では受けられず、それが影響して減少したとみられます。今年度のがん検診事業支援として総務省は、地方交付税を前年度の倍の1300億円に大幅に増やしました。使い道は市町村が自由に決められるので、間違いなくがん検診に使われるよう、住民の皆さんが注視してください。(朝日新聞)
胃X線検査では、炭酸ガスを出す発泡剤と高濃度造影剤のバリウムを受診者に飲んでもらう。ガスで胃を膨らませ、胃壁にバリウムを付着させ、炭酸ガスは黒く、バリウムは白く写るようにコントラストをつける。受診者がバリウムを飲み終えて胃のぜん動運動が起こるまでの数分間に、様々な角度から写真を8枚撮らなければならない。胃がんは胃壁の粘膜にできる。早期だと、ひだとひだの間の模様の乱れが写真に写る。検査時にげっぷをしたり、食物が胃に残っていたり、検査前のたばこやガムで胃液の分泌が促進されたりすると、胃壁の凸凹がみえにくくなり、検査の効果が半減しかねない。受診者の自覚が求められる。胃内視鏡検査で見えにくい部分が、胃X線検査でわかることもある。(朝日新聞)
長崎に原爆が投下された直後、最初の救援列車に機関士として乗務し、入市被爆した光武富士男さん(83)が、がんに体をむしばまれ、痛みに苦しんでいる。原爆症の認定基準が昨年春に緩和される際に申請したが、国の結論が出ないまま1年以上が経過。「国は苦しんでいる実態を知ってほしい」と訴える。2004年と2008年に直腸がんの手術をし、人工肛門を付けた。2006年には、がんのため右肺の3分の1を切除した。直腸付近のがんは進行し、抗がん剤も思ったほど効果が上がらない。腹と肛門、尿道をえぐるような痛みが時折襲う。元国鉄職員。1945年8月9日、午前11時2分、長与駅(長崎県長与町)で機関室に乗り込もうとしたとき、背中を貫かれるような光を浴びた。約1時間半後、救援のため長崎市内に向けて出発した。(朝日新聞)
公明党福岡県本部は27日、がん対策の強化充実を求める署名を麻生福岡県知事に提出した。3月20日からの1カ月間で集めた署名は135万7499人にのぼった。がんを早期に発見し、治療するために、がん検診への公費助成の拡大や乳がん検診の拡充などを求めている。同本部の森下幹事長が「県民の4人に1人が署名してくれた。がん対策の充実への関心が高いことがわかった。しっかりとした対策をぜひ」と要望すると、麻生知事も「久留米大学でがんワクチンの開発が進んでいる。県としてもしっかり対策を取っていきたい」と応じた。(朝日新聞)
厚生労働省は、公的医療保険(健康保険)の対象となる治療と対象外の治療を同時に行う「混合診療」を原則禁じている。効き目などの確認されていない治療に多くの患者が引き込まれ、保険財政が不当に費やされているのを防ぐためだ。だが東京高裁は、このルールを骨抜きにしかねない判決を出した。裁判は、神奈川県立がんセンターで治療を受けていた横浜市の女性患者の遺族が、神奈川県や医師を相手に提訴。保険診療の自己負担分を含め、支払った費用約190万円の返還を求めている。女性は2002年春、肝内胆管がんと診断され、2003年4月から同センターで治療を受けた。付き添っていた次女(50)によると、抗がん剤治療のほかに、血液中のリンパ球を培養して体内に戻す「活性化自己リンパ球移入療法(LAK療法)」を勧められた。主治医からLAK療法の治療効果の説明はなく、費用についてもあいまいだった。「保険がきかず、40万円くらいかかる。そのうち請求書がくるらしい」と言われた。(朝日新聞) ・・・・次回へ続く・・・・
患者はデータをどう活用すればいいのだろう。群馬県立がんセンターの猿木さんは「全がん協のデータを、主治医と治療方法などを話し合う材料に」と提案する。病期の割合が、自分の受診する病院と似ているデータを示し、「これに比べてここはどうですか」などと質問してみるのもいいという。千葉大の滝口さんも「生存率などの数字は、患者が直接利用するというより病院のレベルを上げるために使うためのものだろう」。患者が重視するべきなのは①その病院に自分のがんの専門家がいるか ②標準的な治療をしているか、ということだという。がん患者を支援するNPO「キャンサーネットジャパン」の柳沢事務局長は「数字に振り回される必要はない」。抗がん剤治療の内容や緩和ケアが受けられるかなど、どんな治療を受けられるかを知るのが重要だという。(朝日新聞)
全がん協の試みは、がんの治療情報の把握・集計を目指す国の取り組みを先取りしたものだ。がん対策基本法に基づき、全国の「地域がん診療連携拠点病院」は2007年度の症例から、がんの種類や進行度、治療内容などを記録する「院内がん登録」が義務付けられた。それを集約する最初のステップとして、先月末までに約300病院から2007年度分の情報が国立がんセンターがん対策情報センターに寄せられた。2011年12月をめどに3年生存率のデータを集計する見通しだ。同センターの西本・院内がん登録室長は「専門病院中心の全がん協でさえ精度を保つのが難しいのだから、総合病院も多く含まれる拠点病院にとってはさらに大変ではないか。仕組の整備には10年ほどかかるだろう」とみる。中でも人材の確保が重要な課題となる。米国では専門知識を持った「腫瘍登録士」がデータを扱う。日本では医師自身が診療の合間を縫って行ったり、がんの知識が不十分な派遣職員が携わったりしている場合もある。がんの情報をきちんと取り扱える専門家を育てる必要がある。(朝日新聞)
「数字だけで病院を選ばないで」。昨秋、がん専門病院などで作る全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が病院ごとの「5年生存率」を公表した記者会見。データを解析した猿木群馬県立がんセンター副院長は何度も念を押した。公表されたのは「一部加盟施設での胃がん、乳がんなど5つの部位ごとの患者の生存率。全がん協は、生存率の算定基準が統一されておらず、精度管理もされていないため、患者が混乱する恐れがあるとして、公表モデルを示すために研究した。同じ生存率でも単純に比べられない。例えば、進行度を示す「病期」が早期の1期の患者が多い施設は、進行した4期の患者が多い施設より生存率は高くなる。「1期/4期比」も見る必要がある。病院が独自に公表する場合、手術した症例だけで計算することも多いが、進行して手術が難しいがんも含めた全症例で計算すれば、生存率は下がることもある。調査の精度も影響を与える。症例数が少ない、病期の診断が間違っている、生存を確認する予後調査が不十分で追跡率が低い、などの場合はデータが不正確になる。(朝日新聞)
都城工業高等専門学校(宮崎市都城市)で研修留学中だったモンゴル人女性に乳がんが見つかり、母国の夫や娘と離れて同市で闘病生活を送っている。都城モンゴル友好協会が、医療技術の進んだ日本で治療を続けさせたいと募金を始めた。この女性は、モンゴル国立科学技術大学助手のバトツエツグさん(28)。県の招請事業で昨年7月に来日し、9月から同高専で水質の研究に従事した。留学期間は今年3月で終えたが、直前の1月に乳がんが見つかったため、同協会が身元を引き受けて滞在延長を可能にした。宮崎市に通院し、抗がん剤治療などに1年はかかる見込み。同協会は「家族の仕送りだけでは治療費や生活費をまかなえない」と、市民の支援を求めた。募金などの問い合わせは、同協会事務局0986-47-1190へ。(朝日新聞)
「治療法が進歩してがんが"不治の病"ではなくなるにつれ、治療後の生活の質を高めることも重要になり、リハビリも重視されるようになってきたのです」と慶応大病院リハビリ科講師の辻さんは語る。同病院リハビリ科の患者のうち、がん患者が占める比率は2000年には22%だったのだが、2009年は30%まで増える見通し。「それだけがん患者に対するリハビリのニーズが伸びています」 埼玉県立がんセンターの整形外科にあるリハビリ室には理学療法士が2人だったが、昨年から、作業療法士と言語聴覚士が加わった。リハビリを受ける人の9割以上は整形外科以外のがん患者ら。2年ほど前から、術前の呼吸リハビリも実施している。(朝日新聞)
がんの手術を受けると、呼吸機能が下がる、手足が腫れるなど、様々な後遺症がでることがある。手術後にリハビリテーション(リハビリ)をして後遺症を改善するだけでなく、手術前から「リハビリ」を始めて後遺症を予防、軽減しようという試みが始まっている。静岡県の女性(73)は4月上旬、県立静岡がんセンターで乳がん手術を受ける前日、乳腺外科の主治医のほかに、リハビリ科部長でリハビリ専門医の田沼医師に会った。右の乳房を切除する手術について、主治医から説明。その後、田沼医師と作業療法士から、手術後に予想される体の状態や、術後に取り組むリハビリ内容の説明を受けた。乳がん手術の場合、術後何もしないでいると肩関節が動きにくくなる。わきの下のリンパ節を切除した場合には、リンパ液の流れが滞って腕が腫れる「リンパ浮腫」も起こることがある。リハビリは体操などでこうした後遺症を予防したり、軽減したりするもの。リンパ浮腫予防では、リンパ液を流れやすくするマッサージ法を教えてもらい、自分で自宅でもできるようにする。がん患者へのリハビリはこれまで、足の手術で松葉づえが必要になった場合などに行われてきた。だが最近、手術前から予防的に行うリハビリが注目されている。(朝日新聞)
危険が大きい出産に対応するため、文部科学省は、国公私立の計24の大学病院に「新生児集中治療室」(NICU)など計220床を追加設置することを決めた。政府が調整中の補正予算案に盛り込む。ハイリスクの出産をめぐり、東京都内で昨年10月、妊婦が複数の病院に受け入れを断られて亡くなっている。この問題をきっかけに、NICUの増床など周産期医療設備の充実が指摘されていた。文科省によると、NICUがない大学病院は現在、国立が全42校中9校、私立が全29校中2校。またNICUなどの周産期医療設備が20床以上あるのは国立が8校なのに対し、私立は21校。公立は3校。整備は私立が進み、国立が遅れているのが現状だ。(朝日新聞)
皮膚の慢性疾患「乾癬」の患者団体らが、間接リウマチの薬として承認されている「アダリムマブ」と「インフリキシマブ」の2割について、乾癬の薬としても早期承認するよう厚生労働省に要望書を提出した。患者ら3万3千筆の署名も添えた。乾癬は、皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に銀色のふけ状のものが出来て、はがれ落ちる病気。発症すると完治は難しく、激しい痛みや発熱、間接の変形で身動きがとれなくなることもある。国内の推定患者数は10万~30万人とされる。他人に感染しないが、外見から社会的な偏見を持たれることや、患者本人が引きこもりになるなど、精神的な苦痛を抱える例も少なくない。承認を求める2剤は、欧米では乾癬治療薬として標準的に使用され、症状の改善に効果が上がっているという。
アヘンから取れるモルヒネは、いまでも「医療用麻薬」として、がん患者の痛みをとる「疼痛治療」に世界中で利用されている。モルヒネは脳に痛みを伝える経路にある神経細胞の活動を抑えたり、痛みを伝える物質が放出されるのを抑制したりする。その鎮痛作用は極めて強力だ。がん患者の約8割には、耐え難い痛みが現れると報告されている。長崎大医歯薬学総合研究科の植田教授は、痛みを克服する研究教育拠点づくりに取り組んでいる。「生きる意欲を持ち続けるために、痛みを抑えることは重要だ。強い痛みをそのままにしておくと、それが記憶、増幅され、慢性痛になって取りづらくなる」。植田さんは治療の大切さを、こう指摘する。世界保健機関(WHO)は1986年、モルヒネなどの医療用麻薬を治療薬の基本とする「WHO方式がん疼痛治療法」を発表した。痛みの強さと性質に応じて適切な薬を選び、正しく投与すれば、ほとんどのがん患者の痛みを取り除けるという。(朝日新聞)
「がん」と診断された方のために、医師による無料相談を行っています。日本対がん協会の医師によるがん相談事前予約窓口です。厚生労働省の委託事業として「がん電話相談」を平日行っています。担当の医師は近江和夫、大倉久直医師ら国立がんセンターに長く在籍し、現在も現場にいる医師。埼玉県立がんセンター長の石井勝医師らベテラン医師7人が専門的、総合的に応じます。予約制で、一人20分です。予約受付専用番号03-5218-7070月曜~金曜10時~17時 4月13日から下記の番号に変更になります。 03-3562-8015
昨年夏、都内でひとり暮らしをしていた女性ががんで亡くなった。66歳。通院の付き添いや見舞いなど、家族のように支えたのは、近くに住む同世代の2人のシングル女性だった。結び付けたのは、シングル女性の仲間づくりを支援するNPO「SSSネットワーク」(東京都)。未婚のほか、離婚や死別でひとりになった人、いまは家族がいてもいずれ来る「ひとりの老後」に備えたいという人が集まる。中心は首都圏の50~60代の女性だ。3人は食事をともにするなど交流を深め、「大人になってからも友達ってできるのね」「老後は助け合おう」と約束していたという。ネットワーク代表で作家の松原さんは「ひとり暮らしでは家族に代わる友達が必要。3人は日頃から深い交流があったため、急に中間が倒れたときも温かく手を差し伸べられたと思います」と言う。(朝日新聞)
B型肝炎の集団予防接種訴訟で国の責任を問い、最高裁で勝訴が確定した元原告らに、舛添厚生労働相が面会する意向を示したことを受け、元原告らが3日、厚労省内で記者会見し、「すべての肝炎患者の救済の第一歩にしたい」と訴えた。元原告代表で闘病を続けている札幌市の木村伸一さん(44)は「なぜ判決から3年も放っておいたのか。大臣には謝罪と真摯な対応をしてほしい」と訴えた。元原告5人のうち2人は亡くなっている。全国B型肝炎訴訟原告団の高橋代表は「いつ発症するか分からない不安を抱え、発症したら治療で仕事もままならない。早急に解決してもらいたい」と語った。北海道在住の5人が起こした訴訟で、最高裁は予防接種での注射器使い回しが感染原因と認定。同様に被害を訴えるB型肝炎患者ら285人が9地裁で裁判を続けている。
視力回復のためのレーシック手術を安心して受けて欲しいと、慶応大学病院など全国の4大学病院と11のクリニックが「安心LASIKネットワーク」をつくった。互いに信頼できる医療機関が、インターネットなどを通じて正しい情報を発信する狙いという。レーシックをめぐっては、東京・銀座のクリニックで集団感染が起き、不安の声がある。だが、代表世話人の坪田一男・慶応大教授によると、国内で年間40万~45万件の手術が施術されており、基本的には安全で確立した医療。一方、手術前後の検査などは角膜感染など合併症を防ぐ意味でも重要だが、低価格化が進む中でおろそかになっているケースがあるという。
妊娠や出産、育児休業の取得などを理由に、退職の強要や配置転換といった不当な扱いを受けたという相談が増えている。(雇用均等室サイト)雇用情勢が悪化するなか、「育児切り」とも呼ばれる。不況の波が、子育てと仕事の両立を目指す女性たちを直撃している。育休明けに納得いかない処遇を受けた時は、会社の就業規則や規定を確認。都道府県の労働局雇用均等室に相談する。法律に沿ってアドバイスを受け、再度、会社と話し合う。休業中も会社側となるべく連絡を取り合うなど、良好な関係を保つ努力も大事だという。
がんや生活習慣病などの検診や予防についての啓発事業などを展開している福岡県対がん協会が、4月1日から九州産業衛生協会と合併し、新しい財団法人「福岡県すこやか健康事業団」が発足する。県対がん協会では、がん検診の受診者の減少による収益悪化などを受けて、一昨年ほど前から再建に向けた検討を重ねていたという。地域での保健事業を展開してきた県対がん協会に対して、九州産業衛生協会は産業保健の分野で健康事業を進めている。両協会の合併で経営基盤を強化し、質の高いサービスを提供できるとしている。(朝日新聞)
長崎県諌早市の私立長崎日本大学高校が今年の入試で、がんを患う中学3年生の女子生徒(15)の受験を断っていたことがわかった。生徒は治療で抵抗力が弱っており、感染症を防ぐため他の受験生とは別の部屋での受験を求めたところ、同校は「特別な対応はできない」と説明したという。生徒は同校の受験をあきらめた。生徒は結局、別の私立と公立の2校を受験し、いずれも合格した。両校とも試験の際は生徒の要望を受けて別室を用意した。このうち私立校は「病気は本人の責任ではない。最大限できることはやろうと思い、対応した」としている。(朝日新聞)
英語による国際コミュニケーション能力を評価するテストです。5月31日に全国77都市で行います。申込は、主要書店、大学生協、朝日カルチャーセンターで申込書を入手するか、TOEIC運営委員会に請求。ホームページでも申込可。(朝日新聞)
4月2日は国連の世界自閉症啓発デー。当事者や親たちでつくる日本発達障害ネットワークは、2日から「発達障害啓発週間」を設け、イベントを全国で開く。事務局は「周囲の理解と支援があれば、社会で力を発揮することができる。広く知ってもらう機会にしたい」という。催しは発達障害サイトから。(朝日新聞)
都市部では育児、地方では介護が、女性の就業率向上を妨げる主な要因になっていることが、日本総合研究所の調査で分かった。育児のサポートが少ない都市部ほど女性の就業率が低い反面、地方では親の介護に直面する40代後半以降、就業率が急落する。国勢調査などをもとに分析したところ、25~59歳の既婚女性の就業率(2005年)トップは山形県の74%で、東北、北陸、山陰地方で就業率が高い。最下位は奈良県の49%。次いで大阪府、神奈川県、東京都の順に低く、就業機会が多いはずの都市部の低くさが目立つ。(朝日新聞)
米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の高額ボーナス問題で、ニューヨーク州のクオモ司法長官は23日、今月支給された計1億6500万ドル(約160億円)のうち3分の1近い約5千万ドル(約48億円)分が返金される見通しになったと発表した。クオモ司法長官によると、一人当たりの最高支給額640万ドル(約6億2千万円)をもらった幹部を始め、支給額で上位10人のうち9人が返金に合意した。
体の不自由な人のための衣服リフォームが広がっている。着脱のしやすさを優先して気に入らない服を着るよりも、体形や動作に合わせて「お直し」して好きな服を、との思いだ。障害者のおしゃれ研究会もできた。「リフォームスタジオ」(東京都)は、体の不自由な人向けにリフォーム事業を始めた。2006年3月から、技術とともに病気の特徴について知る研修会を始めた。注文しやすいように例を載せた冊子も作った。例えば、ポロシャツを、車椅子にすわった姿勢に合わせて着丈を詰め、布を足すリフォームは4450円から。パジャマをマグネットボタンにするのは1個590円だ。対応できる店はサイトに一覧表がある。(朝日新聞)
耐震強度偽装事件をきっかけに作られた住宅瑕疵担保履行法が10月1日に完全施行される。新築住宅に欠陥が見つかった場合に備え、補修や建て替えにあてる資金をあらかじめ確保しておくよう販売業者や建設業者に義務付ける。あとを絶たない欠陥住宅問題に対し、消費者保護の特効薬となるのか。(朝日新聞)
「子宮がん」には、子宮の入り口にある子宮頚部のがんと、胎児が育つ子宮内膜にできる子宮体がんがある。体がん患者数の増え方は著しく、頸がんを抜きそうな勢いだ。頸がんはウイルス感染が原因なのに対し、体がんは女性ホルモンとの関係が深い。なかでもエストロゲンが多くて、プロゲステロンが少ない状態が続くと、体がんが起きやすいという。肥満⇒閉経時期が遅い⇒出産経験がないーーなどは、発症リスクを高める。月経が不規則な人も要注意だ。日本人女性で若い世代はやせ過ぎが問題だが、中年期以降は肥満が増える。牛や豚などの肉食はリスクを高める。運動や低用量ピルの服用はリスクを下げるという。
「がん」は遺伝子に傷がつき、細胞に突然変異が起きることを意味します。その原因は多種多様ですが、なかでもニ大要因といわれるのが「たばこ」と「食事」です。国立がんセンターがん対策情報センターの調査によると、がんの原因(推計)として、食生活35%、喫煙30%、感染(ウイルスなど)10%、その他25%となっています。
医師や患者代表たちでつくる厚生労働省のがん対策推進協議会(会長・垣添忠生・日本対がん協会長)は国のがん対策への提案書をまとめた。都道府県の担当者らに実施したアンケートなどをもとに、予算の大幅増や政策決定の手法改善などを求めている。提案書では、がん対策基本法に基づき各都道府県に設置されている協議会の委員や自治体担当者ら約185人に実施したアンケート結果を公表。9割近くが予算額を「不十分」とし、「予算不足にため、適切な対策が取れない」「予算案づくりの段階で、国と都道府県のコミュニケーションが不足している」などの意見が寄せられた。また国と都道府県が半分づつ予算を負担する補助事業の利用状況などを点検した結果、「がん検診モデル事業」は国が措置した予算のうち1%しか消化されていないなど、自治体ニーズとの隔たりも見られた。これらを受けて同協議会の委員10人でつくる「がん施策・予算提言ワーキンググループ(WG)」は、自治体財政は悪化しており、基本法の理念達成のためには政府予算を大幅に底上げする必要があるーーなどと指摘。
福岡県は9日、厚生労働省の全国調査に合わせ、県内のホームレス数などを発表した。今年の1月時点で1237人。1年前に比べ155人増え、都道府県別の増加数は2番目の神奈川(84人増)や3番目の愛知(78人増)を引き離し、全国最多だった。政令指定都市別では、福岡市が969人で187人増と最多。2番目の大阪(77人増)の倍以上、3番目の川﨑(56人増)の3倍以上に達し、福岡市の増加が県全体を押し上げる形となった。同市保護課は「以前は少なかった30~40代の層も目立つ。景気の悪化で、他都市からの流入も多いのではないか」と話している。福岡県によると今回、県内66市町村のうち18市町村でホームレスを確認した。男女別は男性1093人、女性69人、不明75人。都市公園(481人)や河川(154人)に住むケースが多かった。福岡市が増加した一方、北九州市(149人、13人減)、久留米市(57人、5人減)、春日市(21人、1人減)、飯塚市(1人、3人減)などでは減少した。(朝日新聞)
抗うつ薬「パキシル」など4種類のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)を服用した患者が、他人への攻撃性を増したり、激高したりするなど副作用が疑われる症例が2008年秋までの4年半に計42件、医薬品医療機器総合機構に報告されたことが分かり、厚生労働省が調査を始めた。製品の添付文書の改訂を指示することも検討する。厚生労働省によると、パキシルのほか、ルボックス、デプロメール、ジェイゾロフトについて、攻撃性、敵意や焦燥感を膨らませるといった報告が寄せられた。同省はメーカー側に報告への見解を尋ね、専門家らの意見も聞いて検討する。(3月7日朝日新聞)
九州大(福岡市東区)は5日、アルツハイマーや認知症を早期発見する「アルツハイマードック」を九大病院に開設すると発表した。今月中旬から受付を始める。各地の医療機関でアルツハイマーや認知症などを診る「もの忘れ外来」が設けられているが、専門の人間ドックは全国でも珍しいという。九大によると、ドックでは脳のMRI検査や血液検査、簡単な計算や記憶力のテスト、専門家による診察などが受けられる。所要時間は2時間半ほどで、料金は4万4千円。(3月6日朝日新聞)