子宮の入口、頚部にできる子宮頸がんは、国内で年間約1万人が新たに診断される。特に30代を中心とした世代で増えている。年間約2700人が亡くなる。主に性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が原因だ。HPVはごくありふれたウイルスで、性交渉の経験のある人の多くが感染するとみられている。HPVに感染した人のごく一部に、細胞が異常な状態になる前がん病変の「異形性」が起きる。通常は自然に治るが、さらにごく一部で時間をかけてがん化する。子宮頸がんは検診を定期的に受けることで、前がん病変の段階で見つけることができる。20歳以上の女性は2年に一度、検診を受けることが推奨されている。自治体が費用を助成している。慶応大の青木大輔教授(産婦人科)は「定期的に検診を受けると、子宮頸がんで死亡するリスクを最大8割下げられるという研究がある」と話す。検診は、子宮頸部の細胞をブラシでこすり取るなどの方法で調べる。前がん病変も軽度なら、定期的に経過を観察し様子を見るのが一般的だ。進行すると、子宮頸部の一部を切除する円錐切除術という手術などが必要だ。ほとんどの場合は治るが、早産などのリスクが高まるとの指摘もある。HPVの感染自体を減らすためにできたのが、HPVラクチンだ。2010年度から公費助成され、2013年に定期接種となった。だが、長期的な痛みなどに襲われる人が出たため、国は現在積極的な勧奨はせず、追跡して調べている。初期の子宮頸がんの治療は、円錐切除術か子宮全摘出術といった手術が一般的。妊娠を希望するかも考慮して治療法を決める。進行すると、手術のほか、放射線だけ、また放射線と抗がん剤を併用して治療する。子宮頸部の奥にある体部にできるのが子宮体がんだ。発生原因やがんができる仕組みは子宮頸がんと異なる。治療は子宮ろ卵巣・卵管などを摘出する手術が中心だ。多くの場合、月経時以外に出血などの症状がある。青木さんは「異変があったらすぐに相談できるかかりつけの産婦人科を持つことが大事だ」と話す。(5月2日 朝日新聞 患者を生きる 原千晶の願い・情報編より)