がんの中で日本人に多い胃がん。胃がんをテーマにした連載は、手術後の暮らしぶりをつづった便りが寄せられました。 ●主治医の言葉が支えに 36歳の時に黒い便が出て、病院で検査を受けると即日入院となり、数日後に胃がんと診断されました。3人目の子どもを産んですぐ復職したこともあり、忙しさゆえの調子の悪さと思っていました。最終的にはスキルス胃がんとわかり、胃を全摘しました。食事は全がゆからのスタートでした。恐る恐る時間をかけて口にしていました。そのうちに、病院の売店で買ったカステラを一口二口と食べられるようになっていきました。退院の日、夫が「仕事はやめてもらって養生させます」と主治医に伝えたところ、「養生なんてとんでもない。むしろがんばってほしい」と励まされました。胃をなくして12年、今は障害者の自立生活センターでコーディネーターを務めています。体調がすぐれないときもありますが、悲観しないようにしています。主治医の「がんばってほしい」という言葉が支えになっています。(静岡県 女性 48歳) ●看護師として体験生かしたい 私は今、再発の恐怖の中にいます。手術から4年目。胃がんが見つかったのは、待望の子どもが生まれて3カ月になる時でした。早期がんだったので、手術後は経過観察をしています。告知の時は、この子を何歳まで育てられるだろうかと泣き崩れました。看護師としてホスピス病棟で勤務したことがあり、どんなに闘っても、どんなに頑張っても、がんで人生を終えた患者さんを見てきました。「自分は何とかなる」とは到底思えませんでした。今でも前向きに、毎日を楽しく大切にと思う一方で、再発と死が頭をよぎらない日はありません。ただ、がんになって初めて、患者さんの思いを知ることができました。告知、入院、手術、それにがん患者として生きていくことは、看護師として働いていた時の想像をはるかに超えていました。これからも看護師を続けていく中で、がんの体験を少しでも患者さんに還元したいと思っています。秋田県 渡部美郷 41歳 (8月13日 朝日新聞 患者を生きる 読者編より)