東病院では特に1相試験が多く行われている。胃がん患者が参加できる1相だけでも、常時複数実施されていた。男性は主治医に紹介状を書いてもらった。男性と妻(66)は東病院で、新たに主治医となった設楽さんから治験の説明を受けた。特に1相は副作用のリスクが高く、厳重な管理下で行われる。入院して血液や尿を1日何度も採るなど負担もある。2~3相と違い、すべての参加患者に新薬を使い、偽薬を使うことはない。「参加します」。男性は即答したが、設楽さんは「持ち帰ってよく考えてください」と促した。しかし、気持は変らなかった。手術を受ける段階は過ぎ、使える薬はなくなった。「治験しか方法がない。先生が合う治験を見つけてくれるだろう」。副作用は、出てしまったらそのときだ。それぐらいの覚悟だった。(3月19日 朝日新聞 患者を生きる 胃がん より)