元お笑いコンビ「ゆーとぴあ」の城後光義さん(65)は2014年1月16日、東京共済病院(東京都目黒区)でがんの手術を受けた。外科系診療部長の後小路世士夫さん(54)ら2人の医師が手術を担当した。まず、胃の中央から下部に至るがんを取り除く手術から始めた。切り取った胃の腫瘍の食道側にがんが残っていないか調べるため、手術と並行して組織の病理検査をした。後小路さんらは「がんが浸潤しているので、もう少し切り足したほうが安全」と判断した。さらに15ミリほど筒状に追加切除することにし、胃全体の半分近く切り取った。この段階で問題が出てきた。胃の切除範囲が大きくなったため、十二指腸と胃との距離が広がり、つなぐのが難しくなった。そこで、ひとまず胃は接合せずにそのままの状態にし、小腸の手術に取りかかった。こびし大の腫瘍は小腸の上部にある空腸にあった。3ミリほど横を動脈が走っているため、慎重にはがしながら切除した。この段階で医師らが話し合い、小腸と胃をつなぐことにした。十二指腸は入口部分を塞ぎ、そのまま体内に残すことにした。後小路さんは「症例の多い胃がんについては、腫瘍の大きさや場所などを基準に当てはめて手術することができた。だが、空腸のがんは珍しいため、そのような基準がなく、開腹してその場でデザインを話し合いながら進めなければならなかった」と振り返る。8時間かかった手術は無事終わった。だが、城後さんは手術後に激しい痛みに襲われた。「地獄の痛みでしたね。医者役のコントでよく、人間、痛みでは死にません、って言っていましたが、いや、死にかけました」。また胃がんの再発を防ぐため、TS-1という抗がん剤を半年間飲み続けた。覚悟はしていたが、胃が口から飛び出すような吐き気に襲われた。「やめたい、って先生に言うと、やめてもいいですけど、再発しますよ、って言われて・・・」。後子路さんは話す。「城後さんは、いい加減に見えて、けっこうまじめ。優等生の患者ですよ」。(5月8日 朝日新聞 患者を生きる 闘病も笑いにより)