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患者にウケるコントを
2014年1月、約8時間の手術で胃と小腸のがんを取り除いた元お笑いコンビ「ゆーとぴあ」の城後光義さん(65)は、いまでも手術の日のことをよく思い出す。病室から手術室への移動にはストレッチャーは使わず、自分で歩いて向かった。エレベーターの扉が開くと、ガラス張りの手術室が並び、動き回る医師や看護師の姿が見えた。城後さんがいちばん奥の手術室に入ると、医師らがあいさつをしてきた。「麻酔担当の○○です」「外科医の○○です」。「芸人の私には、まるでコントのセットのように見えました。もう少しで、じゃあ本番行こうか、と言いそうになったよ」。いま、城後さんは今年初めから新しい相棒となった中村有志さん(58)と「がんコント」という新たな分野に挑戦している。「ゆーとぴあの時代から医師と患者のコントはやっていたけど、よく『病気を笑いにするな』としかられた。でも、四つのがんと闘ったんだから、文句は言わせない。ネタはいっぱい仕入れたから、僕にしかできない『がんコント』ができると思うんです。たとえば、銭湯で背中に大きな手術痕がある男性に出会ったシーンでの、こんなやりとり。城後さんが気をかける。「肺がんでしょ。医者はいい仕事してますね。どこの病院?」「あなた、なんなんですか」「この部分が惜しい。ちょっと縫い目が乱れていますね」「けんか売っているんですか」。くるりと向き直って背中の手術痕を見せ、「きっちり、縫い目がそろっていないと、ね」。城後さんは話す。「むかしは離婚したと言うことが恥ずかしかったけど、いまの若い人は明るく『離婚しちゃった』って言うでしょ。がんも同じです。『がんになって胃が半分になりました』と笑いながら言えるようになる」。がんの手術から約1年3カ月。胃が小さくなったので、食事を何度も小分けにして食べなければいけないが、経過は順調だ。「がんはやっぱり、とんでもなく怖い。だからこそ、がん患者が明るく笑える『がんコント』。やりますからね」。(5月9日 朝日新聞 患者を生きる 闘病も笑いにより)
May 10, 2015 08:01
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