日本生命保険と第一生命保険が、2009年3月期決算で、資産の運用利回りが契約者に約束した利回り(予定利率)を下回る「逆ざや」に転落する見通しになった。世界的な経済危機で運用環境が急速に悪化したため。両社は2008年3月期に逆ざやを解消したばかりだが、1年で逆戻りした。大手生保9社では、大同生命保険が2007年3月期に逆ざやを解消、日生と第一がそれに続いたが、2009年3月期には全社が逆ざやになる見込み。生保各社はここ数年、超低金利が続いた国内での運用を減らす一方、高金利の外国債券などの運用を増やして収益を上げてきた。だが、昨秋の金融危機以降、他の主要国の金利も急に下がり、利回りの確保が難しくなった。さらに国内外の企業業績の悪化で、株式配当が減ったのも響いた。逆ざやは、バブル期前後に約6%もの高い予定利率の保険商品を大量に販売したことで生じ、長年、生保経営の足かせになっていた。90年代後半から2000年代初頭にかけ、日産生命保険や東邦生命保険など中堅生保の経営破綻が相次ぐ原因にもなった。業界上位2社の日生と第一も、毎年2千億~3千億円の逆ざやが出ていたが、保険金支払いに備えた責任順位金を多めに積みまして運用の不足分を穴埋めし、2008年3月期に日生が300億円、第一が11億円の「順ざや」に戻った。2009年3月期も、上半期までは運用成績はおおむね好調で、日生や第一以外の大手生保も数年以内に「順ざや」になると見込まれていた。しかし、リーマンショックのあった昨秋からの急激な環境の変化が、生保経営を再び直撃。2009年3月期は逆ざやに加え、保有株式などの損失処理もかさむ見通しだ。日生、第一の有価証券の減損処理は1兆円を大幅に上回ると見込まれる。三井生命保険と朝日生命保険は、それぞれ1千億円規模の純損失に陥る見通しだ。運用環境が良かったここ数年、大手生保の一部は、契約者に対する配当金を増やしてきた。しかし、2009年3月期は、各社とも増配は不可能な状況だ。朝日は無配にする見通しで、減配を余儀なくされる生保も相次ぎそうだ。(朝日新聞)