薬は効きそうか、強い副作用の恐れはないか・・・・。患者の遺伝子情報を調べ、個々の状況に応じて治療の仕方を決める「個別化治療」が、抗がん剤の領域で少しずつ広がっている。不必要な薬の副作用に苦しまなくてすむといった期待があるが、実用性には限界もある。「効いているようでほっとしました。このまま続いてほしい」。国立がんセンター東病院(千葉県柏市)に週1度通う男性(68)は笑顔を見せた。大腸からリンパ節に転移したがんが、3月末に始まった抗がん剤治療で「縮小傾向」と判定されたからだ。使っているのは、国内で昨年9月に導入されたセツキシマブ(商品名アービタックス)。がん細胞が増殖する仕組を邪魔する分子標的薬だ。男性は10年前に手術を受けたが、3年前に再発。いろんな抗がん剤を使ったが、どれも行き詰まっていた。セツキシマブが男性に効きそうなことは、ある程度予想できた。事前に遺伝子の検査を受け、効くタイプのがんとわっかていたからだ。(朝日新聞)