新たにがんと診断された患者で、放射線治療を経験したのは2005年で25%、2015年には40%と予想されています。「がんを切らずに治す」という放射線治療への期待もあるのではないかと思っています。放射線治療は高度化しています。正常な細胞に極力影響を与えずに、がん細胞だけを効率的に殺すことができるようになってきました。一つが、早期の肺がんを対象とした「定位放射線治療」です。たくさんの方角から細いビームを集める原理で、正常組織を避けながら腫瘍に高い線量の放射線を集めます。いわゆるピンポイント照射です。高齢などで手術が難しい患者さんは、治療の第一選択肢と考えていいと思います。次は、「強度変調放射線治療」(IMRT)です。これは一つひとつのビームの強度をそれぞれ操作して、腫瘍だけにたくさんの放射線を当てるという方法です。前立腺がん、頭頚部がん、脳腫瘍について保険が適用されていますが、欧米では子宮がんや乳がんなどでも使われています。治療が難しい悪性中皮腫は、IMRTでないと放射線に弱い臓器を避けながら照射することはできないのではないかと考えています。(朝日新聞)