そんな時、50歳代のベビーシッターが肺がんになり、3カ月ほどで亡くなった。「どうして彼女は亡くなり、自分は生きているんだろう」。生き残ったからには時間を無駄にしてはいけない。その思いが、起業への夢を後押しした。2008年7月、約2年間勤めた会社を辞めた。会社をつくるという夢の実現のため、知人4人に相談したが、理解してもらえない。もうやめようと思った直後、お金を貸してくれる人が見つかった。登記などの手続きにはインターネットで手探り。住んでいた都内の住所に会社登記をすると、「イメージが大事」と周囲に言われ、六本木のレンタルオフィスの住所に登記をやり直した。2008年10月、イベント会社の「社長」になった。生バンドのカラオケや、ツーリングツアーなどを企画する。年商は約350万円。社員は自分1人で、時々はアルバイトもする。「会社を続ける」ことが目標だ。3月11日の東日本大震災を機に、もっと直接的に人助けをしたいと思うようになった。がんの経験を語る講演活動に力を入れ、業務の幅を広げたい。手始めに、子ども向けカウンセラーの資格を取るための勉強を通信講座で始めた。(朝日新聞・患者を生きる・がんと就労・働きたい より)