思いあまって、ハローワークの職員に相談した。「病気(がん)のことを隠してもいいでしょうか」。職員は「後でわかったときに大変だから、伝えるように」と言う。人材派遣会社にも登録したが、秋になっても仕事は見つからなかった。受けた会社は、20社を超えた。10月、再び左肺の下にがんの転移が見つかった。3度目の手術を受け、18日間入院した。失業給付の支給は10月で終わり、11月からは無収入になった。切りつめても、月々の生活費と治療費で30万円はかかる。それでも、できるだけ家族と一緒に過ごそうと、各地を旅行し、職探しも続けた。再び春を迎えた3月29日、呼吸困難が激しくなり、再び入院することになった。「今回は日にちがかかりそうだな」。そう思い、病室にパソコンを持ち込んで、復帰に備え病気の経過を詳しく記録していた。だが容体が急変し、4月19日、54年の生涯を閉じた。妻は言う。「最期まで、働きたいという気持ちを持ち続けていました」。(朝日新聞・患者を生きる・がんと就労・働きたい より)