筋肉犠牲にせぬ手術選択
「再建したいんです」と恐る恐る、切り出した。説明書も持っていった。飯塚さんは、穿通枝皮弁法をしならかった。自分が接した再建患者から、どちたかと言えば人工乳房はトラブルが多いという印象を受けており、筋皮弁法を勧めてきた。ただ、おなかに力が入らなかったり、重い荷物が持てなくなったり、人によっては出来ない動きも多かった。穿通枝皮弁法は、腹筋を犠牲にしないのが利点だった。「本当に実現できるのなら、素晴らしい」と思った。手術から1年、治療終了から6カ月。再発の兆しはなく、全摘後の傷口などが落ち着いてくるころだ。状態は悪くない。もう少し経過を見てもいいと思ったが、本人の意思が固いのなら、尊重すべきだと思った。「前向きでいいことです。この方法を僕は知りませんでしたが、一緒に勉強していきましょう」。誠実な飯塚さんに「この再建は、やめたほうがいい」と言われたら、手術を諦めるつもりだった。背中を押された気持ちになった。(朝日新聞・患者を生きる・女性と病気・乳房再建 より)
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