この手法(ホウ素中性子補足療法)の開発に取り組む小野公二・京都大名誉教授(放射線科)は「一つの臓器に複数あったり、正常な神経の近くにあったりして手術や従来の放射線治療が難しいがんの治療にも効果が期待できる」と話す。京都大原子炉実験所(大阪府)と大阪医大が2002~07年、再発した脳腫瘍の一種、膠芽腫の患者19人で行った臨床研究では、再発から半数が亡くなるまでの期間が約19カ月と、他の治療より半年以上延びた。実用化はこれからだ。装置が医療機器として承認を受けるための臨床試験(治験)が、昨年10月に京大原子炉実験所で始まったばかりだ。脳腫瘍の一種、悪性神経膠腫の患者が対象だ。政府の後押しもあり、開発は盛んだ。来年2月には国立がん研究センター(東京)で試験稼動が始まる。伊丹純・同センター放射線治療科長は「来年中には皮膚がん患者で治験を始める。日本から海外に技術提供できるよう実用化させたい」と話す。(7月18日 朝日新聞)