がん研有明病院(東京都江東区)の呼吸器内科の西尾誠人部長は「がん細胞は、ほんとうにしぶといんです。よく効く薬が出てくると、耐性を作ってなんとか生き延びようとする。最近ではその追いかけっこが1,2年のサイクルで続いています」と話す。女性は「ガンマナイフ」と呼ばれる放射線治療を受け、脳内のがんを治療した。転移後もクリジチニブを飲み続けた場合の副作用がよくわからないため、転移がわかった段階で服薬は中止された。ただ、女性が幸運だったのは、次の新しい薬「LDK378」の治験が始まっていたことだ。クリゾチニブで治療していた患者のうち、がんが進行した場合に使われる分子標的薬で、米国ではすでに承認されている。日本を含む約430カ国の300を超える施設で治験が行われている。女性は、偽薬(プラセボ)を使わない方式の治験に参加することができた。2013年3月4日、LDK378を使った治療を始めた。と言っても、白いカプセルを夜に三つ飲むだけである。(3月6日 朝日新聞 患者を生きる 肺がん より)