朝の情報番組「めざましテレビ(フジテレビ系)のキャスター、大塚範一さん(66)はそのとき、ゴルフ場にいた。2011年10月27日の木曜日。ラウンド中に何げなく手で首筋をなでると、そこに小さなしこりがいくつかある。反対の首筋をなでると、そこにもしこりがあった。当時63歳。自覚症状は何ひとつなっかたが、さすがに心配になった。金曜日の番組終了後、自宅近くの通い慣れた個人クリニックを訪ね、血液検査をしてもらった。事態は31日の月曜日に動き出す。「検査の結果が出たので、できるだけ早く病院に来てもらえませんか」。クリニックに駆けつけると、「血液検査で異常が見つかった」と、医師はすぐさま精密検査を受けることを勧めた。翌11月1日、東京都内の大学病院を受診した。ブラストと呼ばれる健康な人の血液には存在しないがん細胞である可能性が高い血液細胞が見つかった。その日のうちに、急性リンパ性白血病と診断された。翌日に入院した。華やかなテレビの世界から、病室の天井を見つめてt時間を過ごす生活になった。入院後に医師とこんな会話があったという。「先生、はっきり言ってください。生存率はどれくらいなんでしょうか」「3~4割です」「5割もないんですか?」。ただ、医師はこう付け加えたという。「骨髄移植が有効ですが、63歳という年齢を考えると、感染症や合併症のリスクが高まります。抗がん剤か骨髄移植か、最終的にどっちを選ぶかは大塚さんの人生観なんです」。抗がん剤治療か、骨髄移植か、まだ決めていなかった。年齢のリスクも考え、自然と抗がん剤治療で白血病と闘う方向になっていった。(4月7日 朝日新聞 患者を生きる 大塚範一の闘い より)