2009年春、子宮頸がんと子宮筋腫の手術を受けた歌手の森昌子さん(56)は、医師から子宮を摘出する手術を勧められたものの、迷っていた。その間にも、いったん除去した子宮筋腫の再発が見つかるなど、体調に不安を抱えていた。森さんは知り合いの産婦人科医の女性に久しぶりに連絡を取った。子宮を取ったほうがよいかどうか、セカンドオピニオンを求めて相談した。すると「私も子宮を取ったほがいいと思う。でも判断するのは昌子さん。早急に決めることはないですよ」と、意見を言ってくれた。治療の相談だけでなく、子育ての悩みなど、ふだんの生活に関する話にも耳を傾けてくれた。森さんは「子宮の摘出に向けて、時間をかけて、自分の気持を整理する助けになった」と振り返る。森さんは当時、ホルモン剤を服用していた。エストロゲンという女性ホルモンの分泌を抑える薬で、筋腫が大きくならないようにするのが目的だった。当時は精神的に不安定で不眠が続き、貧血状態だったこともあり、鉄剤や睡眠導入剤なども飲んだ。ホルモン剤も含め、多いときで10種類の薬を持ち歩いていた。薬の副作用なのか、ひどい湿疹が全身に出るようになった。顔が真っ赤になり、化粧でも隠しきれなくなった。テレビ番組で森さんを見た人から「どうしたんですか」と案じる電話もかかってきた。このままの体調では、ファンや周りに心配をかける。もう迷うのはやめよう。森さんはかねて主治医に勧められていた子宮摘出手術を、ついに受ける決心をした。「先生、お願いいたします」。そう告げると主治医は「いい決断だと思います」と答えた。治療方針が決まり、森さんの迷いは消えた。(4月22日 朝日新聞 患者を生きる 森昌子の復帰より)