国が子宮頸がんワクチンの推奨をやめてから、来月で丸2年になる。「健康異常」を訴える声が相次ぐなか、自治体が独自に医療費を支給したり、大規模な健康調査に乗り出したりする動きが広がっている。痛みやしびれ、脱力、記憶障害・・・。接種後に始まった多様な症状で日常生活を送れなくなった女子生徒らを対象に、愛知県の碧南、刈谷、知立の3市は21日、医療費の自己負担分と医療手当てについて、診断書が出た時期にさかのぼって、7月1日から支給を始めると発表した。3市ともそれぞれ数人の患者がいるという。こうした支給制度を全国に先駆けて立ち上げたのは横浜市だ。昨年6月から始まり、今年3月末までに24人に1274万円の支給を決めた。体調を崩し、市に相談した患者は、約70人を数える。推奨の中止ガ出た2013年6月当初は半年ほどで国の見解が出ると見られたため、市も国の出方を見守っていた。だが2014年に入っても国の動きはなく、市への相談は増えた。当時ざっと20人。各地の病院を転々としてきた人が多かった。「市単独で医療費支給ができないか」。健康福祉局で検討が始まったのは2月ごろからだ。「国に副反応と認定されたわけではない。因果関係も証明されていない」。「被害救済は本来は国の仕事だ」。そんな慎重論も出た。それでも3月に支援の方針が決まったのは「接種した人が症状を訴える以上、寄り添うのが市の役目」(岩田真美・健康安全医務監)との理由だ。市議会が全会一致で国に治療法の確立などを求める意見書を出したことも追い風となった。中3の時に接種した次女(18)に症状が出た横浜市泉区の山田真美子さん(50)は1月に横浜市に申請し4月に約130万円を支給された。静岡県の国立病院などに9回入院し、髄液検査やステロイドの集中投与治療を受けるなどした治療費の自己負担分だ。薬剤などの副作用の被害者救済制度を担う「医薬品医療機器総合機構」には、2013年10月に請求を受理されたが結論は出ていない。山田さんだけでなく、4月末までに86件の請求が寄せられたが支給が決まったのは18件だけ。9件は不支給で、大半はまだ審査中だ。1年以上結論を待っている人も少なくない。山田さんは言う。「全国には娘と同じような症状に苦しんでいる女生徒が何十人もいるのに、いまだ医療費さえ支給されていない。それに比べると、横浜市の制度はありがたい」。
(5月22日 朝日新聞より転載)