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2023年2月27日 (月)
カテゴリ:鉛色の日々 心境に変化
おなかのがんが大きくなるのを抑えるため、溝口慎也さん(51)は抗がん剤を使い始めた。会社は休職が続いた。病院に行く以外の大半の時間は、自室にこもって寝てばかり。体がまるで変ってしまったことへのいら立ちや喪失感、これからへの焦り。がんの進行を遅らせることだけが頼みの「緩慢に死にゆく人生」になったと感じた。生きていても意味がない。でも家族を残しては逝けない。それが自分が存在している理由だった。こんな鉛色だった世界が変わり始めたきっかけは、古典を読み返すようになったことだ。カフカやシェークスピアの作品に触れ、人間や人生への洞察を思った。先人が表現したことが、自分の気持ちに訴えかけてくる。人生の意味について考えるようになった。ゆっくりとしか歩くことができなくなったことで、道ばたの草木の変化に気づくようになった。食べるものに制限が出たことで、朝の一杯の白湯の味で体調がわかるようになった。うつりゆく毎日に同じ日は二度となく、同じ時間もない。わずかな違いに気づくと、何の変哲もない毎日は、新しい発見にあふれる日々になった。抗がん剤を始めた翌年の2018年の七夕、8歳だった長女は短冊に、「かぞくでしあわせにくらせますように」と書いた。九州大学病院血液・腫瘍・心血管内科の土橋賢司さん(38)は受診するたびに、「悪化はなく、横ばいだと思います。良かったですね」と声をかけてくれた。19年には、思い出づくりのために、家族3人それぞれと2人旅をした。「きれいな海を見たい」という長男とは石垣島へ。長女とはイチゴと牛肉を食べに佐賀市へ。妻とは金沢市に行った。抗がん剤の副作用にも慣れてきた19年春、1年半ぶりに職場に復帰できた。病状を気遣い、職場は勤務面で配慮をしてくれた。ただ、このころ、新たな腫瘍ができていることがわかった。これまでの抗がん剤はもう効かない、と別の薬を試すことになった。今度は2週が1クール。髪が抜け、激しくむかつく吐き気や、もうろうとする倦怠感が出た。2月16日
朝日新聞 患者を生きる いま死ぬわけには⑤より
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