しかし、9月にまとめられた中間報告は当初の目標から後退。「体系的・一元的な危険有害性情報の収集」「サプライチェーン全般にわたる化学物質の危険有害性情報などの伝達・提供」を検討課題とすることにとどまった。その後、検討会は開かれていない。今回の問題は、医療体制にも課題を残した。「改めて過去のカルテを見返すと、該当する胆管がん患者がいた」。問題を受けて専門外来を設置した大阪市立大病院の久保正二医師は、診断時に気づけなかったことを悔やむ。カルテは問診で得た簡単な職歴は記入されるが、どんな環境で働いていたかまでは把握する仕組みがない。職場が原因だと疑うのは難しかったのが実情だ。発症していなくても、将来のリスクを抱える人の健康診断をどうするのかといった点も未解決だ。圓藤吟二・大阪市立大教授は「がんを早期に見つけて治療につなげる体制づくりも急ぐ必要がある」と話す。(3月15日 朝日新聞)