胃がんの治療で腫瘍を手術で切るのは、胃から離れた臓器などへの「遠隔転移」がなく、切除が可能な場合とされている。男性の場合、手術前に遠隔転移は確認されなかったが、腫瘍は胃の壁の深くに達し、隣接する脾臓や胆嚢に広がっていた。周囲のリンパ節も大きく腫れていた。このままだと手術は難しい、と言われた。そこでまず、腫瘍を小さくするために抗がん剤治療を受けた。腫瘍は縮小し、2011年1月末に胃と脾臓、胆嚢をすべて摘出する手術を県内の病院で受けた。ところが、術後まもなく、左右の肺に囲まれた縦隔という部位のリンパ節に腫瘍が再発したことが判明した。胃がんは、発症時点で遠隔転移がある場合や再発した場合は、抗がん剤で治療する。ただ、治すのは難しくなる、と言われている。「最初はもっと軽く考えていた」という男性と抗がん剤との長い付き合いが、このときから始まった。(2月17日 朝日新聞 患者を生きる 胃がん より)