歌手の森昌子さん(56)は、2006年3月、20年振りに芸能界に復帰した。背中を押してくれたのは、3人の息子だった。歌番組にコンサート、ドラマ。かつてのように忙しい毎日が再び始まった。40代後半で、離婚に続き、芸能界への復帰と、取り巻く環境が大きく変った。そんな中、森さんは更年期障害に悩まされるようになった。脱力、疲労感や不眠、めまいの症状に見舞われながら、仕事を続けた。そのうち、うつ症状にも苦しむようになった。華やかな歌手活動。その裏で、心身の不調に苦しむ日々が続いた。2009年に入ると、突然、顔や体のあちこちのブツブツとした感じの湿疹ができた。以前から下腹部の圧迫感も感じていた。エコーで子宮の状態を調べたところ、大小30~50個の子宮筋腫ができていることがわかった。「おなかの違和感はこれが原因だったのか」と納得した。筋腫を取るため、「筋腫核出術」と呼ばれる、レーザーで筋腫だけを切り出す手術をした。だが、その後の検査で、予想外の病気がさらに見つかった。「子宮頸がん」だった。がんはごく初期のもで、粘膜の表面にとどまっていた。2009年春、子宮筋腫の手術に続き、「レーザー蒸散術」という子宮頸がんの手術を受けた。ただ、子宮頸がんが見つかった当初から、森さんは主治医から「子宮を摘出したほうがいい」と勧められていた。がんが再発する危険性を抑えるためには、摘出したほうが良いのかな・・・・。森さんはそう思う一方、この時は首を縦に降ることができなかった。「子宮を取ってしまったら、女性でなくなってしまうような気がして、どうしても承諾できませんでした」。(4月21日 朝日新聞 患者を生きる より)