お笑いコンビ「ゆーとぴあ」で活躍した「ホープさん」こと城後光義さん(65)に初めてがんが見つかったのは2007年だった。念のため受けた検査で、大腸に8個のポリープが見つかった。内視鏡で切除して調べたところ、このうち3個が悪性腫瘍だった。2回目のがんが見つかったのは、舞台で咳が止まらず血痰が出て検査を受けたのがきっかけだった。2013年6月、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)で、「多形がん」というタイプの肺がんと診断された。当時、医師とコントのようなやりとりがあったという。「今すぐ、たばこをやめてください」。「先生、たばこをやめてまで長生きしたくないんです。いい芸人は長生きしないものですから」。「城後さん、たばこをやめないと手術ができません。手術ができなければ、余命は3カ月です」。「3カ月?すぐやめます」。7月、約8センチの腫瘍を取るため、左肺の上葉を切り取る手術を受けた。リンパ節への転移もなく、手術後の抗がん剤治療や放射線照射もなかった。1カ月ほどで退院し、「さあ、舞台で暴れ回るぞ」と張り切っていた。ところがその矢先に、胃と小腸に新たながんが見つかった。きちんと食事をとっても、どんどんやせていく。2013年の末、異変を感じてかかりつけの医院を受診し、東京共済病院(東京都目黒区)を紹介された。胃の中央から下部にかけてと、小腸のうち十二指腸に近い空腸と呼ばれる部分の2カ所にがんができていた。肺がんの手術の後に受けた検査で転移は見つからなかった。だが、多形がんの場合、急速に大きくなることがあるという。城後さんは思った。「がん君、君もよくがんばるな。俺はもう縁を切りたいんだよ。お前が死ぬか、俺が死なないと、別れられないんだな」。胃のがんは通常の切除出で対応できる。だが、問題は空腸のほうだった。がんの大きさはこぶしほどあり、動脈から3センチのところまで広がっていた。3度目のがんで、常がさんは初めて死を意識した。(5月5日朝日新聞 患者を生きる 闘病も笑いにより)