「だんだんと雲行きが怪しくなっていくんです。その日は私の夏休みの最終日でした。朝、家を出るときは病院が終わったら子どもたちと何をして遊ぼうかな、と考えていたんですが・・・」。1週間後、詳しい検査結果が出た。呼吸器内科で「リンパ節がはれ、腫瘍マーカーが上昇しているので再検査が必要です」と言われ、翌日入院した。18日、肺がんの告知を受けた。「検査ばかりで不安な毎日だったので、病名がやっとわかって、ほっとした気持があったくらいです。自覚症状もあまりなく、ひとごとのような気持もありました」と女性は振り返る。肺がんとの関連性は不明だが、お酒を飲んだときに胸にしみるような感覚があったり、仰向けに寝ると胸に痛みがあったりしたりした。でも、あまり気にしていなかった。翌年4月には長女(10)が小学校に入る予定だった。告知後、「入学式には出られますよね」と医師に聞いたときのことだ。当然、「出られますよ」と答えが返ってくると思っていた。だが、医師は口ごもって、「治療をしてみないとわかりません」と言った。そのとき初めて、自分が置かれている状況がはっきりわかった。(3月3日 朝日新聞 患者を生きる 肺がん より)