●勝手な自己判断を反省 60歳過ぎ、健康診断の便潜血検査で血が混じっているのが見つかりました。しかし、痔のせいだと勝手に判断し、精密検査は受けませんでした。4年後に受けた健康診断でも異常が見つかり、精密検査の結果、大腸がんと診断されました。病院勤務の友人と相談し、インターネットで調べ、腹腔鏡手術がよいと思いました。実施数が多い病院を選び、手術を受けました。「医者でもないのに都合のよい自己判断はしない」と反省しました。フルタイムで働いている人は、休むと仕事に支障が出ると考えるでしょうが、検査で異常が見つかったら、会社と相談して治療に専念してください。病気に向き合い、納得できる病院を選ぶことが大切だと実感しました。病院の情報はネットで検索できます。セカンドオピニオンは定着してきているので、診てもらっている病院に遠慮せず、利用してみるのもよいと思います。(東京都 永田昇 67歳) ●便潜血検査、正しい理解を 30年近く消化器疾患の異常を診療している医師です。大腸がん検診の便潜血検査について、注意してほしいことがあります。一つは、2日分の便の一部を採取する潜血検査の2日法で、「2回のうち1回が陰性なら問題ない」と誤解をしている人が非常に多い点です。2回採取するのは、便の採取法によって潜血反応が出ないことがあるためで、1回でも陽性なら便潜血検査を改めてするのではなく、内視鏡検査などの精密検査を受けることが重要です。二つ目は、痔になったことがあると、便潜血が陽性で
も「痔のせいだ」と決め込み、精密検査を受けない方は非常に多い点です。痔とともに大腸にポリープや腫瘍のある人たちがいます。痔のせいにして放置し、発見された時には進行した大腸がんになっているケースも数多く経験しています。検査の際は、「便の5、6カ所の表面を広くこすって採取する」「暑い時期は提出まで冷暗所に保管する」などの注意点もあります。(兵庫県 宮田健一 55歳)
7月9日 朝日新聞 患者を生きる より)