前立腺がんが見つかった千葉県流山市の荒井治明さん(73)は2014年10月下旬、前立腺を摘出する「ロボット手術」を受けることになった。手術ロボット「ダビンチ」を使った前立腺の手術は、その2年前に保険適用になっていた。腹部に小さな穴をあけ、そこからかん子やカメラを入れて行う。開腹手術に比べてt出血量が少なくて済むのが特徴だ。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の酒井康之医長(46)は手術法の説明のあと、「状況によっては途中で開腹手術に切り替えることもあります」と付け加えた。手術室には、酒井さんや麻酔科の医師、看護師ら6人が入った。手術代の脇にある操縦席に座った酒井さんが、立体画像を見ながら遠隔操作で切除や縫合を行った。前立腺と周辺のリンパ節を切除し、手術は約4時間で無事に終わった。手術から1週間後には、尿を体外に出すため尿道に入れていた管を抜くことができた。順調に回復し、11月上旬に退院することができた。ただ、手術の影響で、荒井さんはその後、尿漏れに悩まされた。「椅子から立ち上がろうとしただけでチョロっと出る。介護用の紙パンツをはいてしのぎました」。退院から2週間後、改めて手術結果の説明を受けた。がんは前立腺内にとどなっており、周辺のリンパ節への転移はなかった。尿漏れの症状は続いたが、この頃には紙パンツではなく、尿漏れパッドで済むようになっていた。尿漏れについて酒井さんは「日がたつにつれて、だんだん良くなりますよ」と励ました。荒井さんはいま、柏市内の会社で週3日ほどパート勤務を続けながら、毎日家庭菜園に通い、野菜作りを楽しんでいる。これからの季節は、サツマイモや長ネギ、大根などの収穫が楽しみだ。「もしまた何かの病気になっても、くよくよせずに早めに治療を受けたい。これからも体力が続く限り、野菜作りを続けますよ」。(9月11日 朝日新聞 患者を生きる 前立腺の手術より)