白血病は白血球のがんだ。白血球が骨髄でつくられる過程で、がん化して白血病細胞となる。病状の進み方で「急性」と「慢性」があり、がん化した白血球の種類によって「骨髄性」と「リンパ性」とに分けられる。連載で紹介した宮崎県日向市の女性(21)がなった「急性リンパ性白血病」は、発熱や貧血、疲れやすさなどの症状が出る。白血病細胞が増えることで正常な血小板が減ると、あざができたり、出血しやすくなったりする。治療は複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法で、白血病細胞を一定数まで減らす「寛解導入療法」をする。8割ほどの人は「寛解」の状態になるが、再発する確立も高い。このため、寛解後も化学療法を追加したうえで、骨髄や臍帯血などからの造血幹細胞移植が検討される。最初の選択肢となるのが、血縁者からの骨髄移植。八つの白血球の型(HLA)がすべて一致するのが原則で、その確率は最も高いきょうだいでも25%しかいない。女性が再発後に受けた「ハプロ移植」は、HLAが半分だけ合う血縁者から提供を受ける。まだ研究の段階だ。兵庫医大は2005年から500人以上に実施し、国内最多となっている。自治医大血液科の神田善伸教授(48)は、ハプロ移植に利点に、提供できる人が増えることを挙げる。HLAは父母からそれぞれ半分ずつ受け継ぐため、型の半分が一致する確率は親子間なら100%、きょうだい間でも50%ある。また、この移植は型が違う分、移植した細胞の免疫が強く働き、白血病細胞を攻撃する力が増す。東京都立駒込病院血液内科の大橋一輝部長(53)によると、一般的な造血幹細胞移植の後に再発し、「打つ手がない」と言われた患者でも、延命の可能性が期待できるという。一方、正常な組織も攻撃されるので、下痢や黄疸などを起こす「移植片対宿主病(GVH病)」の危険がある。兵庫医大は、移植前の抗がん剤や放射線照射を軽くし、移植後のGVH病に体が耐えられるようにしておく。さらに、移植直後からステロイドで炎症を抑え、GVH病が重症化するのを防いでいるという。(10月10日 朝日新聞 患者を生きる 白血病 情報編より)