●彼の姿、学生にも伝えたい 連載で紹介された広田圭さんが大学生だった時、教えた教員です。記事を読み、13年前のことが鮮明に思い出されました。大きい教室で講義中のことでした。帽子をかぶったままの数人の学生が目に付き、「帽子を脱いでくれ」と大声で叫びました。講義を終えて研究室に帰ると、広田君がドアをノックして入ってきました。がんになったこと、抗がん剤治療の副作用で髪が抜けたこと。帽子を取れないわけを切々と訴えてきたのです。悩んでいる学生がいることを知らずに言ってはならないことを言った、未熟な教員でした。とても悪いことをしたと後悔しました。広田君はその後も研究室を訪ねてくれ、進路の話をしたり、帰省するとお土産を持参してくれたりするようになりました。大学には、就職が決まらず困っている学生もいます。どんな時でも気持ひとつ。希望を持ってがんばってきたからこそ今がある。そんな彼の姿を、講義でも紹介したいと思います。福岡県 山崎勇治 70歳。 ●若い患者の前向きな姿、励み 私は2年前に大腸がんが見つかり、手術を受けました。がんになったことの精神的なショックは大きく、「生活習慣が悪かったから?」などと自問自答し、自分を責めました。周囲と比べて「負け組」という気分にもなりました。がんでも部位や進行度によって状況は異なるのに、がん全体へのイメージが悪いと思います。2人に1人ががんになるという時代でも、心は穏やかではありません。手術後、地域の情報欄などを見て、がん患者の集まりがあるということがわかり、体験者の声を聞きたくて参加しました。もっと大変な思いをしている方の話を聞いたり、紹介してもらった講演を聞きにいったりして、疑問点を質問し、自分で納得していきました。連載で紹介された患者さんは若くしてがんになった後も、社会に役立つ仕事をしようと前向きに生きる仕事をしようと前向きに生きる姿がすばらしいと思いました。同じ患者としてうけしく、励みになりました。千葉県 女性63歳。(4月7日 朝日新聞 患者を生きる 読者編より)