当時、長女は5歳。「ママ、かわいくない」の言葉がいちばんこたえた。「私を見て、子どもも不安でいっぱいだったんだと思います。病気をどう伝えていいのか、ずいぶん悩みました」。心の支えになったのが、そのころ病院でもらった「わたしだって知りたい!」という冊子。子どもにがんを説明する上で重要な三つのポイントが書かれてあった。①親が病気になったのはあなた(子ども)のせいではないこと ②がんという言葉を使うこと ③かぜとは違いあなた(子ども)にはうつらないこと・・・。ただ、女性はがんという病名は伝えられず、胸の病気だと話した。抗がん剤はだんだん効かなくなり、腫瘍が大きくなってきた。医師らと次の段階の治療を相談していた2011年6月、新しい分子標的薬の治験が東京の病院などで行われていると医師から聞かされた。1カ月ほど順番待ちをして検査を受けると、その新しい薬の対象となる「EML4-ALK融合遺伝子」の変異が、女性の場合、陽性だった。(3月4日 朝日新聞 患者を生きる 肺がん より)