この治験の目的の一つは、新しい薬で患者を治療することだ。同時に、薬が効くか、どんな副作用があるかの科学的データを集める目的もある。このため、参加するには細かな病状の条件にあわなければならない。募集期間や定員など厳しく決められている。がん研有明病院呼吸器内科の西尾誠人部長は「治験では条件にマッチした患者でも、期間や人数が厳格に決まっていて、一日違いで受けられる人もいるし、受けられない人もいます」と話す。そしてこう付け加える。「治験を受けるということは、副作用などのリスクを受け入れることでもあります。また、すべての薬剤が劇的な効果があるわけではないので、治験を受けられたことが運がいい、受けられなかったら運がよくないとは言い切れません」。治験が始まった。最初は2週間入院し、その後は自宅療養で朝晩、白い錠剤を三つずつ飲んだ。左右の肺に囲まれた縦隔と呼ばれる部分にあった腫瘍は、小さくなっていった。(3月5日 朝日新聞 患者を生きる 肺がん より)